―― 容量を増やすと、トラフィックが上がると思いますが、それに見合う帯域は確保しているのでしょうか。
福田氏 相当増やしてますよ。オリコンの調査でも、ナンバーワンをいただけました。MVNOとして料金ナンバーワンは分かりますが、通信速度や設定のしやすさ、継続意向でも1位を取っています。料金として、一番スタンダードでベーシックな値段を打ち出しながら、通信品質も同時に追いかけています。これはMVNO初期のころからの話だと思いますが、いまだに安かろう悪かろうの感覚が強い。これを払拭(ふっしょく)したい。そのためには、使ってみて悪くないという声が増えなければならないのですが、実際に評価をいただくこともできました。
―― 初期設定のしやすさというのは、どういうことでしょうか。
福田氏 コールセンターも社員が対応しています。ここで圧倒的に多いのが、設定サポートです。社員が対応しているので、お客さまがどこで引っ掛かるのかを把握でき、それらは全てWebにフィードバックしています。そのループを回し続けている。こういったところにも違いが出ていると思っています。
―― 接続料が下がっていますが、これも容量を増やせた要因でしょうか。
福田氏 いえ。接続料自体は値上がりしていると思っています。どういうことかと言うと、平均速度がどんどん上がっているからです。5年ごとに定点観測すると、その上昇率に値段の下がり方が追い付いていない。10Mbps単位の値段は、むしろじわじわ上がっています。確かに同じ速度であれば下がっていると言えますが、実際にはそうではありません。そういったこともあり、総務省には、抜本的な算定方法の見直しをどこかでやるべきと言い続けています。
ですから、その辺の価格は考慮していません。ただし、専業でやっているので分かりやすいと思いますが、収益は成り立っている状態です。通信品質に一番効くのは、先ほどお話しした顧客のバランスだからです。問題になるのはピーク時だけなので、ピークじゃないところで使うところにどれだけ売れているかが問題になります。そのために重要なのが法人利用で、バランスよく成長することが重要です。例えば中央官庁のテレワーク用のSIMを結構な数出していますが、そうすると昼や夜遅くは使われません。
―― 確かに、テレワークだときれいにコンシューマーのピークとズレそうな気がします。
福田氏 その時間(お昼休みなどのピーク時)は、その人たちもコンシューマーになりますからね(笑)。これが、コンシューマーだけピュッと伸びたりすると、大変なことになります。ビジネス的には面倒で、どこかのセグメントに集中した方がやりやすいのですが、これは事業モデルの宿命です。法人に力を入れているのも、それが理由です。
―― 容量を上げたことで、収益に影響はないのでしょうか。
福田氏 問題ないと見ています。法人関係がストップして全然入ってこないとなってしまうと崩れてしまいますが、今の財務諸表を見ていただければ分かるように、維持するだけの収益性はあります。今の帯域コストでゼロスタートができるかと言えばそれはできませんが、あくまでバランスの上に成り立っています。当面のところ、十分維持できると思うからできることです。他のMVNOからは、同じ仕入れコストなのによく出せるなと言われますが、そこだけを取り出したら確かに無理ですね。
―― 合理的30GBプランの発表では、35GB超のユーザーにキャリアを勧めていたことも話題になりました。その真意を教えてください。
福田氏 総務省にも「こうなったのは総務省が悪い」と言いましたが、帯域料金の算定をきちんとやらないと、MVNOは上の容量で勝負できません。それならドコモなり、ソフトバンクなりの代理店営業をやった方がいいと議論しているぐらいです。
ただ、それは裏側の話で、表に対しての話だと、最悪なのがフィットしないお客さまが買ってしまうことです。50GB、60GB使っている方に日本通信に選ぶものがないと言われる前に、最初から「ごめんなさい」した形です。そこから上は限られた人口ですし、うちのような小さい会社が全てを追いかける必要もない。であれば明確なメッセージにした方がいい。厳密に言えば40数GBまではうちの方が安いのですが、あえて他社より十分安くなる35GBで線を引くことにしました。
MVNOは、6月末の数字で1816社あります。キャリアもキャリアでいろいろなプランを出していて、訳が分からない。訳が分からないときには、シンプルにするのが一番です。ソフトバンクが参入したときのホワイトプランは非常にシンプルでしたが、そういったものが今市場で必要だと思い、ああいったラインアップにしています。
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