日本通信が「ネオキャリア」で実現するサービスとは? 福田社長が語る“音声接続”で広がる可能性MVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2024年05月27日 11時37分 公開
[石野純也ITmedia]
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ネオキャリア化までにかかる2年は、「予想していたよりも早かった」

―― ちなみに、ネオキャリア化に2年かかるのは、主にドコモ側の網改造に時間がかかるからでしょうか。

福田氏 そこには縛られます。ただし、正直なことを言えば、僕らが予想していたよりも早かった。もっと時間がかかると思っていました。もう日程は出てしまったので、逆にこちら側が大変になってしまいます(笑)。とはいえ、合意に達するかどうかは分からないことなので、達してからでないとスタートしようがありません。下調べはずいぶんやってきましたが、ベンダーを選んで機器を購入してというところまで終わっているわけではありません。

 ドコモ側もそれなりの網改造は必要になるはずですが、それを2年でやるとういのは異様に速いペースだと思います。接続を申し入れて、大臣裁定なしで合意に達したのも初めてでした(笑)。

―― (笑)。いつもバチバチやってましたからね。まだ選定は終わっていないとのお話でしたが、設備は仮想化されたものになるのでしょうか。

福田氏 基本はそうでしょうね。実は、仮想化はミャンマーでもやろうとしていました。当時、丸紅がOrangeと組んで候補になっていましたが、うちは丸紅と合弁で丸紅無線通信という会社を持っていたので、そこで仮想化をという話にはなっていました(最終的にはノルウェーのテレノールと、カタールテレコムが落札、KDDIと住友商事は敗者復活でMPTと共同事業を行っている)。

 専用ハードウェアが絶対に嫌だというわけではありませんが、コストも仮想化でかなり安くなっているので、初期投資は抑えられますし、ソフトウェアをサブスクリプションの形で導入することも可能になります。また、専用ハードだと、東京と大阪それぞれを冗長化すると、同じ機械を4つ買わなければなりません。仮想化した際には、ここにもコストメリットが効いてくるので、選択肢にしつつ、技術サイドと詰めています。

KDDIやソフトバンクと接続する可能性も? データ通信だけなら「あり」

―― 発表会では、ローカル4G/5Gとパブリックな4G/5Gを1枚のSIMで使えるようになるというお話もありました。

福田氏 今、それをやろうとするとできるのはキャリアですが、そもそもキャリアはローカル4G/5Gをあまりやろうとはしていません。そこに関しては、うちであれば両面でやることができます。いまだに病院などの構内PHSからの置き換えニーズは強いですからね。

―― やはり、院内だけで完結していると不便なのでしょうか。

福田氏 電話をかける方がからすると、どちらの電話番号にかければいいのか分からないので大変になりますからね。あるいは、内線としても使えるようになるので、利便性は上がります。

―― 音声接続をするのはドコモですが、同じようにKDDIやソフトバンクとも接続すれば、1枚のSIMカードで2回線を使い分けるといったことも可能になりそうです。エリア的には“最強”になりそうですが、そういったサービスはお考えですか。

福田氏 接続をしていないので、まずはそれが必要になりますが、データ通信だけの冗長化はしたいですね。音声網まで含めて全てをもう1社と接続しようとすると先方も大変ですが、データ通信だけは2キャリアでできるというのはアリだと思っています。(ドコモとの接続が終われば)IMSなどの基盤は持っている状態になるので、それもできます。完全にダブルにしてしまうとコスト的に大変なので、その必要はない。また、自分たちの電話番号を持てるので、卸でローミング契約するといったこともできると思います。自治体の方からは、必ずそれをやってくださいと言われています。

日本通信 SIMを自社で発行することで、技術的には1枚のSIMで2回線を持つことも可能になる

―― 音声通話をやるとなると、緊急通報も整備していく必要があると思います。こちらについては、いかがでしょうか。

福田氏 緊急通報網もやらなければいけないと思っています。また、今の緊急通報には、高さ情報が届いていないという問題もあり、それはどうにかしたいと考えています。それとは別に、調べていくと緊急通報は本人しかつないではいけないというルールがありますが、消防署の場合、OKが出ればそうでないケースにも対応ができます。例えば、群馬県の前橋市では、「めぶくID」でどこの誰かや生年月日も分かっているので、倒れてしまって動かないときに自動でつながるといったこともできます。こうした例が出てくれば、広がるのではないかと思います。

取材を終えて:キャリアが実現できないようなサービスの登場に期待

 ドコモとの音声接続に合意できたのは、日本通信にとっても予想外だったようだ。音声通話の卸料金値下げでは、総務大臣裁定まで求め、その後もドコモ側の料金提示が遅れるなど、ひともんちゃくあっただけに、外野である筆者から見てもスムーズな決着には意外感があった。日本通信もこれを受け、急ピッチでサービス提供の準備を進めているようだ。

 福田氏が述べていたように、国際ローミングや1つのSIMで2キャリアの回線に接続できるサービスが出れば、MVNOならではの存在感を示すことができそうだ。特に後者は、大手キャリアには基本的に不可能なサービス。ローカル5Gなどと組み合わせた法人向けサービスはもちろん、通信品質によって接続先を切り替えるような仕組みはコンシューマーにも受け入れられそうだ。2年後に、どのようなサービスが登場するかを、期待して待ちたい。

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