世界初3つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」に触れる 衝撃の完成度に“未来のスマホ”を見た(2/2 ページ)

» 2024年10月10日 06時00分 公開
[佐藤颯ITmedia]
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バッテリーの持ちや耐久性に不安も、「5年先の未来」が体験できる

 HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGNは単なる変わり種のスマホでない。「ポケットに入る10型のタブレット」というロマン枠のスマホを、驚異的な完成度で市場に出したことを評価したい。

 本機を触って感じた第一印象は「圧倒的な完成度の高さ」だ。世界初の3つ折りスマホというだけでも衝撃的だが、これを前述してきた卓越したハードウェアで市場に放ったのだから驚きだ。現時点で市場に出せるものとしては最高レベルの完成度と考えたい。

 現時点でこのような3つ折りスマホを出してこられるメーカーはほとんどない。それこそHuaweiと分離独立したHONORしか存在しないと評価したい。

 その理由は、ディスプレイが「外側に折れる機種」と「内側に折れる機種」の両方を展開しているからだ。これらを開発できる技術力、高価でも販売できる高いブランド力があるからこそ、40万円のMate XT ULTIMATE DESIGNは世に送り出せた商品だ。

 その一方で、バッテリーの容量の少なさは直近で改善すべき課題だ。正直なところ、Mate XT ULTIMATE DESIGNのバッテリー持ちは短時間の使用でも「あまりよくない」と感じた。

 ディスプレイの点灯を中心にした体験でも30分でバッテリーが3%ほど消費していたため、実際に動画視聴やゲームなどで利用するとさらに消費すると予想される。確かに5600mAhの容量はスマートフォンとして見れば大容量だが、10型のディスプレイを持つタブレット端末としては心もとない数字だ。

 あとは本体の強度や耐久性に不安が残る。同社の2つ折りスマートフォンにはある防水性能も備えていないため、より慎重な取り扱いが必要に感じた。ディスプレイの開き方にも手順があり、3つのディスプレイを全て開くにはZ字の形状にする必要がある。これを無視して2枚目を開き切った状態で開こうとすると、ディスプレイが破損する可能性があるとメーカーからは説明された。

HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN 展開するにはこの形状にする必要がある

 一方で、3つ折りスマホの可能性も大いに感じた。展開して10型のディスプレイを持ち歩けるという点では、動画や電子書籍をはじめとしたコンテンツの視聴には大きな威力を発揮する。特に10型のサイズではスマートフォン向けの動画アプリも黒帯が少ない状態で視聴できるため、コンテンツの表示サイズがとても大きいのだ。この点では現状の2つ折りスマートフォンよりも「大ディスプレイ」を実感できる。

 ポケットに収まる究極のエンタメ視聴デバイスとして、3つ折りスマートフォンは君臨するはずだ。

HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN 全てのディスプレイを展開してタブレット表示になるアプリもあるが、まだ少数にとどまる

 Huaweiの場合、独自のHarmonyOS NEXTに移行することを考えると、対応する家電や自動車などと組み合わせてより高度な連携、3つ折りならではの特徴的な動作を可能にしてくるだろう。

 専用プラットフォームによる「3つに折れるディスプレイ」に対し、操作UIを柔軟に変更できるアプリの登場。独自プロセッサと専用OSによる高度な最適化によって、少ないバッテリー容量でも長時間使えるようになることが期待される。

 大ディスプレイを生かして家電や自動車を制御するスマートハブを常時表示する、PCやテレビのディスプレイを大ディスプレイに映し出して操作する、といった利用シーンも想定される。この他にも、今からは想像のつかない使い方も可能になっていくだろう。

HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN HarmonyOS NEXTにアップデートされてからが、Mate XTの本領発揮だと考える

 そんな携帯電話のカテゴリーに新たな形を提案した「3つ折り」のスマートフォン。まだまだ荒削り感はあるものの、今後の携帯電話の歴史に刻まれ、これからの新たな時代を示すマイルストーンになるだろう。

 2つ折りのスマートフォンは2019年にGalaxy Foldが登場して以降、5年の歳月をかけて世間に浸透した。これと同様に、3つ折りのスマートフォンも今後5年をかけて浸透していくことになるはずだ。

 そして、5年後には早ければ6G通信のサービス開始も予想される。3つ折りスマホはより大容量、低遅延通信をうたう6G通信の時代の「コンテンツ消費」を象徴するスマートフォンになると考える。

 Mate XT ULTIMATE DESIGNは約40万円と高価でまだ一般的な選択とはいえない。それでも、今後数年で競合他社から多くの製品が登場し、20万円台の価格まで落ち着けば「大画面タブレットとスマートフォンを両立させる端末」として、今の2つ折りスマホ並みの知名度を得るかもしれない。

 その理由は「関心度の高さ」だ。実際、販売地域の中国では600万を超える予約注文が入り、製品体験すら予約制ながら都市部を中心に埋まっていた。発売直後の店頭でも多くの人が体験し、実際に購入して使うユーザーを目の当たりにした。高価でも3つ折りスマホへの関心度の高さは想像以上だった。

HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN 深センのHuaweiストア店頭。発売直後ということもあり、3つ折りスマホを触る人々でにぎわっていた

 この近未来感あふれるスマートフォンに触れれば「5年先の未来」が体験できる。今から10年ほど前にイラストなどで描かれた「ディスプレイの折りたためる未来の携帯電話」の姿は、空想上の未来の話ではない。もう現実世界で手に取って体感できる最先端のスマートフォンなのだ。

著者プロフィール

佐藤颯

 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

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