iPhone 16シリーズに対抗するかのごとく、同時期に発売されたHuawei(ファーウェイ)の3つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」。約40万円と高価なスマホだが、発売された中国国内での注目度の高さは折り紙つきだ。今回は筆者が発売に沸く中国深センに渡航し、実機を体験して感じたレポートと3つ折りスマホの可能性について記したい。
Mate XT ULTIMATE DESIGNでは、本体を閉じた状態で6.4型、一度開くと7.9型、全て開くと10.2型のディスプレイを利用でき、外折りと内折りとそれぞれ異なるヒンジ機構を採用する。
仕組み的には複数のディスプレイを使うのではなく、1枚の大きなディスプレイを折りたたんでいる。イメージがつかない人は、Galaxy Foldのようなスマートフォンを開いた状態に、カバーディスプレイがそのまま横に広がるものを連想してほしい。実は思った以上に大きいのだ。
肝心のヒンジは外折り、内折り共に少々固い印象を受けた。Galaxy Z Fold6と比較すると、ディスプレイを開いたり閉じたりする際に「重い」と感じることが多かった。そのため、片手でディスプレイを展開するのは行いにくい印象だ。
一方でこの固さのおかげか、ディスプレイの角度をしっかり保持できており、端末の自重でディスプレイが勝手に曲がることはなかった。筆者も試しにディスプレイを「Z」の状態にして端末を振ったところ、ディスプレイは動かなかった。
ディスプレイはUTGと呼ばれる極薄のガラスが使用されており、ある程度の強度を持つ。光の当て方によって折り目は目立つものの、たわみはかなり抑えており、視聴体験としては良好だ。
ディスプレイもスマートフォン基準の明るいものが採用されているため、10型のタブレット端末として考えるとものすごくディスプレイが明るいのだ。一方でディスプレイのリフレッシュレートは90Hzにとどまるなどの物足りなさはある。次回作以降でのアップグレードに期待したい。
ここまでディスプレイを中心に動作感をチェックしたが、Mate XT ULTIMATE DESIGNはそれ以外の性能も高い。
カメラは5000万画素のメインカメラ、1300万画素の超広角カメラ、1000万画素の望遠カメラ、1600万画素のフロントカメラを備える。このうち、メインカメラは光学式手ブレ補正に加え、絞り羽を持つ可変絞り機構を備える。仕様的にはMate 60シリーズに近いものだという。
望遠カメラは光学5.5倍。ペリスコープ方式の望遠レンズを採用しており、ズーム性能にも長けている。
一般的に、折りたたみスマートフォンでは本体スペースの確保や軽量化を理由にカメラ性能は削られがちだが、本機種はフラグシップの名に恥じない高いカメラ性能を持ち合わせている。
搭載しているプロセッサや通信バンドについては、近年のHuaweiのスマホらしく非公表だ。メモリは16GBとしており、Huaweiの機種としては大容量だ。過去にレビューした機種の傾向から推察すると、中国で製造された独自のプロセッサが採用されていると考えられる。
通信周りでは中国向けの衛星通信「天通」と「北斗」に対応しており、携帯電話の電波が届かないエリアでも、通話やメッセージの送信が可能だ。
バッテリーはサイズの異なるものが3つ搭載されており、合計で5600mAhの容量となる。本体を薄型にするためにバッテリーの厚さも1.9mmにするなど、かなり力を入れた部分だ。スマホ本体は66Wの急速充電に加え、50Wのワイヤレス充電にも対応する。ワイヤレス急速充電をアピールする理由は、同社が展開する電気自動車等で充電するニーズだとしている。
10.2型の大きなディスプレイのスマートフォンを折りたたんでも「普通のスマホ」と呼べるサイズや重量に仕上げたことも驚異的だ。厚さはディスプレイをたたんだ状態で12.8mmと普通のスマートフォンより厚いが、これはiPhoneなどに厚手のケースを装着した状態と大きく変わらない。また、折りたたみスマホのGalaxy Z Fold5のディスプレイを閉じた状態(13.4mm)よりも薄い。
本体は最薄部が3.6mm、USB端子のある部分でも4.75mmと驚異的な薄さを実現。最薄部が3.6mmという数字は、同社いわくスマートフォンとしては「世界最薄」であり、イヤフォン端子(φ3.5mm)とほぼ変わらない厚さといわれると、そのすごさが分かるはずだ。
ここまで薄くしただけあって、本体の重量は298gと300gを切っている。ディスプレイを閉じたときは凝縮感のある重さだが、全て展開すると、まるで羽のように軽く感じる。そもそも、10型のディスプレイを持つタブレットで200g台の機種など、比較対象が存在しない。
ソフトウェアはHarmonyOS 4.2が採用されており、今後はHarmonyOS NEXTへのアップデートも予定されている。現時点ではAndroid OSが根幹にあるため、一般的なスマートフォン向けのアプリが動作するとしている。
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