「iPhone 16e」は全世界で「n79対応」「ミリ波5G非対応」 日本は「nanoSIM+eSIM」構成(デュアルeSIM可)に

» 2025年02月20日 08時45分 公開
[井上翔ITmedia]

 既報の通り、Appleが2月20日に新型スマートフォン「iPhone 16e」を発表した。Apple Storeでは2月28日に発売される予定で、直販価格は9万9800円からとなる

 iPhoneというと、全世界で1つの構成(モデル)が販売されていると思われがちだが、実際には複数の構成が用意されており、国/地域によって売り分けられている。iPhone 16eも例外ではなく、現時点では4つの構成の存在が確認されており、日本ではヨーロッパなどと同じ「A3409」というモデルが販売される。

 この記事では、iPhone 16eのモバイル(携帯電話)通信回りについてチェックしていく。

【訂正:22時15分】初出時、5G対応iPhoneについて誤った記述がありました。おわびして訂正いたします

iPhone 16e iPhone 16シリーズの廉価版として登場する「iPhone 16e」

iPhone 16eは全モデルが「バンドn79対応」「ミリ波5G非対応」

 先述の通り、iPhone 16eには現時点で4モデルが確認されており、そのうちの2つが特定国向け(中国本土向けの「A3410」と米国向けの「A3212」)で、残りの2つ(「A3208」と先述のA3209)を地域ごとに割り振っている。なぜ、同じiPhoneで複数の構成を用意するのか――理由の1つにモバイル通信のバンド(対応周波数帯)の問題がある。

 通信規格は全世界共通でも、国や地域の事情によって、利用するバンドは異なる。そのため、販売する国/地域に合ったバンドに対応する構成を複数用意した方がコスト面で有利なこともある。これはAndroidスマートフォンでも同様で、「グローバルモデル」と言われているものでも実際は国/地域ごと(場合によってはキャリアごと)に異なる仕様で販売されていることが多い。

 4モデルのiPhone 16eは、5G NR(5Gの通信規格)とLTE(FDD-LTE/TD-LTE)の対応バンドに微妙な違いがある(W-CDMAとGSMの対応バンドは同一)。その違いの説明は割愛するが、今回は全モデルが5G NRの「n79」に対応する一方で、5G NRの「ミリ波」には非対応となっている。

4モデル iPhone 16eの対応バンド。本文にもある通り、A3410は中国本土専用モデル、A3412は米国専用モデルとなる(クリックで拡大)

n79はNTTドコモユーザーに有利(5Gローミングを含む)

 5G NRの「n79」は4.5GHz帯の電波を利用する。この周波数帯は日本ではNTTドコモしか利用しておらず(※1)、海外でも利用できる国/地域は限られる。

(※1)ソフトバンクも2031年度までに利用を開始する予定

 より多くの周波数帯をカバーすることは、端末の開発/製造コストに直結する。そのため、海外ではn79に対応する5G端末はかなり少ない。その点、5G対応のiPhoneはきちんとn79に対応している。iPhone 16eも同様だ。

 n79対応によって、海外からiPhone 16eを持ち込んでドコモの5Gネットワークにローミングした際の通信品質が向上することが期待される(※2)。

(※2)NTTドコモはn79を主体としてSub-6(6GHz以下)の5G NRネットワークを構築しているため、同じ5G対応端末でも「n79に対応しているかどうか」で体感品質に差が出やすい

米国モデルも「ミリ波非対応」

 5G NRの周波数帯は「Sub-6」と「ミリ波(mmWave)」に大別される。基本的には電波の届きやすいSub-6でエリアを構築し、特定箇所で高速通信を実現する必要がある場合にミリ波のエリアを局所的に用意することが多い。

 そのような特性から、5Gスマートフォンにおけるミリ波対応は基本的にハイエンドモデルに限られる。仕向け先の国/地域(キャリア)によってミリ波対応の有無を変えるケースもあったりする。

 その点でいうと、従来の5G対応iPhoneは米国専用モデルのみミリ波対応としてきた。その点、今回のiPhone 16eは米国専用モデルもミリ波非対応としている。筆者が記憶する限りにおいて、米国で販売された5G対応iPhoneでミリ波非対応なのは「iPhone SE(第3世代)」以来だ。

米国 iPhone 16eの米国専用モデル(プエルトリコを含む)は、iPhone SE(第3世代)以来となるミリ波非対応となる

SIMカードは「nanoSIM+eSIM」(デュアルeSIM対応)が基本

 iPhoneが国/地域によって構成を分けているのは、対応するSIMカードの差異も一因だ。iPhone 16eの場合、モデルによって以下のSIMカードに対応している。

  • 米国専用モデル:eSIMのみ(nanoSIM非対応/eSIMは2枚まで同時稼働可)
  • 中国専用モデル:nanoSIM×2(eSIM非対応)
  • その他モデル:nanoSIM+eSIM(eSIMは2枚まで同時稼働可:※2)

(※2)eSIMを2枚同時稼働する場合はnanoSIMが無効となる(いつでも切り替え可)

 米国専用モデルではnanoSIMカードスロットがそもそも存在しない。そのため、外観はスッキリとしている。

 一方、中国専用モデルや他の2モデルでは左側面にnanoSIMスロットが用意されている。中国専用モデルでeSIMを非搭載としているのは、現地の法令の都合だ。

レンダリングイメージ 左が米国専用モデル、右が他国向けモデルのレンダリングイメージ。米国専用モデルはnanoSIMスロットが“ない”。「ケースをしてしまえばnanoSIMスロットがあるかどうかは気にならない」と言われれば、それはその通りである

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