Perfumeを起用したパフォーマンスで注目を集める大阪・関西万博のNTTパビリオン。IOWNの活用やユニークな建築技法、ガイドアプリやメタバースでの取り組みをまとめて紹介する。
NTTパビリオンの建築自体も見どころの1つだ。敷地面積3500平方メートルと民間パビリオンとしては最大級で、東ゲートを入ってすぐ場所に位置する。設計はNTTファシリティーズが担当している。
建築のコンセプトは「感情をまとう建築」。「循環するパビリオン」「一緒につくるパビリオン」「生きているパビリオン」の3つのテーマで構成されている。
最大の技術的特徴は、カーボンファイバーワイヤー約1500本を活用した構造設計だ。建物を外から引っ張ることで、長い無柱空間を実現し、鋼材料を20%削減することに成功。これにより、従来の建築に比べてCO2排出を15%削減している。
この構造は日本初の方式で、建築基準法の通常基準では認められず、万博展示のための特別許可を受けて実現したものだという。
また、パビリオンには2種類の布が使用されている。外側の白い布(約3万枚)は日よけ効果を持ち、内側のカラフルな布(約14万枚)は「感情の布」と呼ばれ、人間の感情の多様性を表現する30色以上の色で構成されている。これらの布は石川県奥能登の企業と連携して製作されており、復興支援の意味も込められている。
来場した子どもたちが自分の感情を表す色の布を選んで建物に結び付けることができる仕組みもあり、会期中にパビリオンの色彩が徐々に変化していく「成長する建築」となっている。
NTTパビリオンの演出を支えているのが、NTTが推進する次世代通信インフラ「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」技術だ。
Zone2で実演された3D空間伝送は、「動的3D空間伝送再現技術」と「触覚振動音場提示技術」を活用。吹田市の万博記念公園で計測・撮影された膨大な3次元点群データと画像データを組み合わせ、リアルタイムで3Dデータを高解像度化するNTT独自技術により、高精細かつ高速に遠隔地に伝送・再現している。
パビリオンを覆う幕の演出にもIOWNが用いられている。会期中、Zone2に設置されたカメラで来場者の表情(笑顔や驚き)を取得し、NTT西日本本社のIOWN光コンピューティングでリアルタイム分析。その結果に応じてパビリオンの幕に設置されたワイヤーが有機的に動く仕組みとなっている。
そしてこのIOWN光コンピューティングには、世界初となる光電融合デバイスを活用している。従来の「光→電気→光」の変換過程を「光→光」に直結させることで、2020年比で消費電力を1/8に削減することに成功した。
具体的には、GPUサーバと光電融合デバイスを組み合わせ、ネットワークスイッチの入り口からプロセッサの近くまでを光で接続することで電力効率を高めている。IOWN技術は将来的にはプロセッサのパッケージ内部まで光化し、「演算部分以外は全て光化」を目指すという。
NTT PavilionではIOWN技術の光電融合デバイスが実用段階にあり、今後のAI処理や映像処理の効率化に大きく貢献することを示す技術実証の場ともなっているということだ。
NTTグループは万博体験をサポートするアプリも手掛けている。NTTとNTTアーバンソリューションズは、万博会場での体験をサポートするスマートフォンアプリ「EXPO2025 Personal Agent」の提供を開始した。このアプリは「来場者向けパーソナルエージェント」として開発された。
アプリの主な機能は、会場マップや混雑状況の表示に加え、トイレやレストランの混雑状況もリアルタイムで確認できる。
特に、AR(拡張現実)を使ったルート案内機能は、155ヘクタールという広大な会場内を歩きまわる際に役立ちそうだ。スマートフォンのカメラで映した現実風景に矢印が重なり、直感的に目的地まで誘導してくれる。
約200のパビリオンと多数のイベントの中から、ユーザーの興味に合わせて最適な訪問プランを提案するAIレコメンド機能も備えている。AIはユーザーの趣向だけでなく、移動効率や混雑状況も考慮して最適なプランを作成。また、パビリオン予約システムとも連携しており、予約情報も表示される。来場者が増えるほどAIの学習データも増え、より精度の高いレコメンドが可能になるという。
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