ソニーは、Xperiaシリーズの最新モデル「Xperia 1 VII」を発表した。同モデルは、Xperiaのフラグシップモデルという位置付け。前モデルの「Xperia 1 VI」から超広角カメラを強化し、これとAIを組み合わせた「AIカメラワーク」や「オートフレーミング」といった新しい動画撮影機能を搭載した。こうしたリアルタイム処理を行うAIを「Xperia Intelligence」と名付け、ユーザーに訴求していく。
ソニー全体の戦略にのっとり、クリエイター向けという色合いを濃くしているXperiaだが、前モデルのXperia 1 VIでは、その声に応える形でディスプレイ比率を変更するなどのリニューアルを行った。Xperia 1 VIIでもその方針は踏襲。ラインアップ全体の整理も行い、より利益率を高める方向にかじを切っている。ここでは、Xperia 1 VIIや秋の投入が予告されている「Xperia 10 VII」から見えてきた、ソニーのスマホ戦略を読み解いていきたい。
ディスプレイ比率を一般的なスマホに近い19.5:9に変更したり、カメラのユーザーインタフェースを大きく刷新したりと、フルモデルチェンジを果たしたXperia 1 VI。後継機にあたるXperia 1 VIIでも、その路線は踏襲されている。一方で、音楽再生にはWalkmanで培った技術を本格的に取り入れ、音質を向上。カメラも超広角カメラのセンサーを1/1.56型まで大型化して、ゆがみの少ない画質を実現している。
また、この超広角カメラとAIを組み合わせることで、動画撮影に新たな機能を搭載した。1つがAIカメラワーク。被写体の姿勢を推定して動きを追い続けることで、プロが撮ったかのようなカメラワークを実現する機能だ。超広角カメラの画角を生かして広めに記録しておき、人物などのロックした被写体の動きに合わせて切り出すことで、こうした撮影を可能にした。
もう1つの機能が、オートフレーミング。こちらも、被写体を追い続けて一部をクロップするという点はAIカメラワークと同じだが、どちらかといえば、舞台上の人などを撮ることが想定されており、超広角で撮った全体の映像と、人物などをフィーチャーした寄りの映像の両方を記録できる。
横位置で撮りながら、人物全体を写す縦動画も同時に記録でき、その動きにもきちんと追従する。広めに写しておくだけで、あらかじめ設定した人物をきちんと追い続けてくれるため、画面を凝視する必要がない。動画として思い出を残しつつ、肉眼でそのシーンを見たいというニーズを満たす機能だ。単純な画質向上ではなく、使い勝手や撮影のしやすさにAIを活用した、面白い事例といえる。
こうしたAIを、ソニーは「Xperia Intelligence」と呼ぶ。といっても、iPhoneに搭載された「Apple Intelligence」のように、文章や画像を作成できる生成AIではなく、カメラやディスプレイ、音楽などの各機能を補完するためのもの。従来のXperiaにもさまざまなAIが搭載されており、カメラの「瞳AF」や高速なオートフォーカスのための被写体推定などに活用されていたが、Xperia Intelligenceはそれらを含めてXperiaのAIとしてリブランディングしたものになる。
Xperia Intelligenceという形で自社の守備範囲をきっちり定めたことで、それ以外のAIはプラットフォームを開発するGoogleに任せる方針が以前より明確になった。Xperia 1 VIIも「Gemini」を内蔵しており、「かこって検索」も利用可能。Googleフォトを使えば、「編集マジック」も利用できる。あえてGoogleと競合するようなAIは実装せず、自社の強みであるカメラや音楽、ディスプレイにAI開発のリソースを集約するというのが、AIスマホ時代のソニーの戦略といえる。
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