日本でも高い人気とシェアを誇るGoogleのスマートフォン「Pixel」。その最新モデルをはじめとしたさまざまな部品や再生端末が、中国・深センで豊富に流通しているという事実をご存じだろうか。
深センは中国南部に位置する、世界最大級の電子機器取引が行われる都市。中でも「華強北(ファーチャンベイ)」と呼ばれるエリアには、スマートフォン関連部品の専門業者が数千軒以上ひしめいており、“電子部品の聖地”とも称される。
iPhoneやGalaxyの修理部品はもちろん、MEIZUやNothingなどのニッチメーカーのパーツ、そして中国では販売されていないはずの「Google Pixel」の部品までもが、当然のように並んでいた。
しかし、Google Pixelは中国本土どころか、深センからほど近い香港やマカオでも正式販売されていない端末だ。中国本土では「金盾(グレート・ファイアウォール)」によってGoogleの主要サービスへのアクセスが制限されており、Pixelを購入しても満足に使うことはできない。
それでも、ここ深センではPixelのディスプレイ、基板、カメラモジュール、背面パネルに至るまで、まるで正規取扱製品かのように豊富な修理パーツが手に入る。
この謎の背景には、Pixel端末の多くが中国国内で製造されているという現実がある。Pixelシリーズの部品を供給するサプライヤー企業の中には中国メーカーも多く、さまざまな部品が集まる深センではそうした部品の流通が自然と生まれる。
また、メーカーが卸売業者へ直接パーツを提供するケースもあり、「公式」ではないが極めて純正に近いパーツが流通している。加えて、再生部品の豊富さも深センならではの特徴だ。Pixelシリーズは主にアメリカ、日本といった地域で人気が高く、キャリア契約では2〜3年の契約満了後にリサイクル・下取りに出されるケースが多い。
こうした端末は業者を通じてコンテナ単位で深センに輸出され、整備可能な個体は「リファービッシュ品」として再販される。動作不能な端末は分解され、再利用可能な部品だけを抜き出して「再生部品」として市場に並ぶのだ。
訪れたPixelの部品専門店では、新品と再生品の2ラインでパーツが提供されていた。新品は工場やサプライヤーから直接調達したもの、再生品はジャンク端末から取り出し整備されたものである。
店頭にはメイン基板、カメラ、指紋センサー、バイブモーター、電源キー、そして背面パネルや本体フレームなどをはじめ、あらゆるパーツがそろっていた。この店舗だけでPixelを1台組み上げられそうな勢いである。
例えば、Pixel 9 Proの背面パネルは工場から仕入れたという正規品で、価格は1枚50元(約1000円)ほど。20枚以上買ってくれたらもっと安くできるとのこと。品質も非常に高く、触った感覚は日本で販売されているPixelと何ら変わりなかった。
こうした修理部品は当然ながらGoogle公式のルートを通っていない、いわば“非公式流通品”だ。だが、その自由度の高い環境こそが、公式サポートを受けられない端末や地域、あるいはDIY修理を行いたいユーザーのニーズに応えている。
別の店舗ではバッテリーやSIMトレイ、ディスプレイのモジュールなどが小分け包装で販売されており、個人でも扱いやすいよう配慮されていた。いかにも“セルフリペア前提”な製品だ。
パーツについても最新機種に限らず、日本でも人気を博したPixel 3シリーズはもちろん、10年以上前に発売されたNexus 5といった旧モデルのパーツも販売されていた。公式の修理受付が終了した機種でも、深センなら修理できるような環境がそろっている。
日本では法規制の関係でDIY修理の文化が根づきにくいこともあり、このような光景を見ることはほとんどない。深センらしいこの圧倒的なパーツ供給の光景は、ある種のカルチャーショックですらあった。
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