驚いたのは、修理パーツだけではない。上記のような部品を使って再生されたPixel本体を販売する店舗も、数年前と比べて明らかに増えていた。あるビルの3階には10軒以上のショップが並び、Pixel 9シリーズやPixel Foldといった最新モデルまで取り扱っていた。感覚的には、MEIZUやrealmeなど中国メーカーよりもPixelの方が目立っていたほどだ。
そのうちのある店舗の店主に話を聞くと、これらはジャンク状態の端末を個人で修理して再販したもので、正規のリファービッシュ品とは異なる「DIY再生品」とのこと。そのため、品質は修理者の技術に依存するが、価格は非常に安価だ。
例えば写真のPixel Foldは1800元(約3万7000円)で販売されていたが、IMEIを確認すると、日本のキャリアで利用制限がかかっていた。まさに“訳あり品”である。
こうした再生品は主にアジア圏、インドや中東地域のユーザーから需要があるという。理由は「同価格帯のサムスン機(Galaxy)よりも性能が高く、OSアップデート期間も長いから」だという。品質にこだわらないユーザー層や、安価に長く使える機種を求める層との相性のよさも要因だろう。
さらに、Pixelの部品を買い求めるのはアジア圏に限らない。欧州・北米から部品を買い付けに来るバイヤーや個人も多く、彼らの多くが「セルフリペア用」に部品を調達しているという。
YouTuberによるスマホ修理動画や、近年注目されている「修理する権利(Right to Repair)」の考えも相まって、Pixelのような端末でもDIY修理のニーズが高まっている。Pixelは長期のソフトウェアアップデートが提供されるだけあって、他のメーカーの機種よりも安心して長く利用できるスマートフォンだ。長く使えるがゆえに、消耗品を含めた修理部品や再生品のニーズがあることを実感した。
現地のパーツ業者もそれに応えるように、AliExpressやeBayといったグローバルECを活用し、個人ユーザー向けに修理部品を出荷している。まさに深センは「世界のリペア拠点」といえる存在だ。
深センでGoogle Pixelのパーツや再生品が流通している理由は、深センという都市が「電子ゴミの終着地」であると同時に、「再生・整備・供給の起点」でもあるからに他ならない。
Google Pixelは中国市場では“売られていないはず”の端末。しかし深センにおいては、部品調達・再生・修理という三拍子がそろい、「世界最後の修理拠点」としてその存在を確立している。修理受付が終了したPixelの修理パーツがどうしても必要になったとき、深センに行って探せば、きっと見つかる。その確信を得た取材だった。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
・X:https://twitter.com/Hayaponlog
・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/
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