既報の通り、ソフトバンクはY!mobile(ワイモバイル)ブランドの新料金プラン「シンプル3」を発表した。その名の通り、「シンプル」という言葉は分かりやすい料金プランを想起させるが、その実態はどうなのだろうか。
シンプル3の要点をまとめると、データ容量はSプランが従来の4GBから5GBに増量、Mプランは30GB、Lプランは35GBとなり、いずれも余ったデータは翌月に繰り越せる。各種割引適用前の月額料金(税込み)は、Sが3058円、Mが4158円、Lが5258円に設定された。
ここに「PayPayカード割」や「おうち割 光セット(A)」を組み合わせることで実質負担は大きく下がる。しかし、裏を返せば、これらの割引を受けられない場合は割高に感じられるだろう。割引の適用には条件を満たす必要があり、誰でも簡単に安く利用できる料金プランとは言い難い。
では、なぜシンプル3は名前に反してシンプルに見えないのか。まず、プランの要点を整理してみよう。
上記のうち、「データ容量に応じて選べる3つのシンプルな料金プラン」という点は、決して目新しい内容ではない。かつてワイモバイルとウィルコム沖縄(旧提供会社名)が提供していた「スマホプラン」も、現在と同様に3つのデータ容量から成る料金プランだった。
しかも当時は、「通話が多いなら、月額1000円のオプション『スーパーだれとでも定額』を追加する」という案内で、利用者も「データ通信中心なら基本プラン、通話もするならオプション追加」というシンプルな理解で済んだ。
一方、シンプル3は音声通話の仕組みもシンプルとは言えない。SプランとMプランでは30秒あたり22円(税込み)の通話料がかかるのに対し、大容量のLプランのみ「10分以内の国内通話無料」が付帯する。これにより、「通話が必要ならオプションを追加する」という、かつてのような単純な考え方が通用しなくなっているのだ。
Y!mobileの新料金プランであるシンプル3の発表会場では、筆者と疑問と同様に「どこがシンプルなのか」という率直な質問が飛んだ。この問いに対し、ソフトバンクの寺尾洋幸専務執行役員は、次のようにその背景を説明した。
「もともとY!mobileブランドは非常に小さいセグメントでした。(しかし)SoftBankブランド中心から段々とY!mobileブランド中心になってくる中で、全体の通信コストの増加にある程度対応していかなければならないのは事実です」
「ソフトバンクが通信事業を生業として安定したサービスを提供する上では、一定の収益、つまり売上が必要であることは事実だと考えております」
「その中で、お客様に低廉な料金プランを提供する上で、我々のグループサービスをご利用いただくことを条件とさせていただいているのは、ご指摘の通りだと思います。ただ、実は少しずつ(条件などの)面倒なことをなくし、注意書きが減るよう努力をしてきております」
ソフトバンクとしては、分かりやすくなるように努力をしているが、グループサービスを活用して相乗効果を生み出しつつ、通信コストの増加に対応していかなければならない、という事業者ならではの苦悩や事情があるようだ。
とはいえ、ユーザー視点でいえば、もし「シンプル3」に魅力を感じず、分かりにくいと感じるのであれば、他の料金プランを検討するのも一つの手だろう。そのために、ソフトバンクはSoftBank、Y!mobile、LINEMOという3ブランドの選択肢を用意しているのだ。
近年では、楽天モバイルやKDDIのpovoといった選択肢もあるし、言うまでもなくどれを選ぶかは消費者の自由だ──。
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