総務省は9月5日、携帯電話端末の販売価格に関する注意喚起を実施した。スマートフォンなどの携帯電話端末の購入を検討している消費者に対し、店舗によって販売価格が異なる事実や、業界特有の商慣習である「頭金」について十分に理解し、支払総額をよく確認した上で契約するよう呼びかけた。
携帯電話端末は、携帯電話事業者が直接運営する直営店やオンラインショップ、あるいは事業者から委託を受けた販売代理店が運営するキャリアショップ、そして家電量販店などで購入できる。同じ携帯電話事業者の回線契約を伴う端末であれば、どの店舗で購入しても価格は同じだと誤解されているようだが、実際は違う。
ここで、販売代理店における価格設定の仕組みを整理してみよう。代理店が設定する端末販売価格は、主に2つの要素で構成される。1つは、携帯電話事業者から代理店へ端末を卸す際の「端末卸価格」。そしてもう1つが、代理店が自身の利益や経費などを賄うために上乗せする「利益相当額」だ。
最終的な端末販売価格は「端末卸価格+利益相当額」で決まる。この代理店が上乗せする額が店舗によって異なる。それゆえに同じ機種、同じキャリアの端末であっても、例えばA店とB店では販売価格に数万円の差が生じるというのだ。
今回の注意喚起で特に注視・理解すべきは頭金という言葉の存在だ。頭金と聞くと、住宅ローンや自動車ローンなどで、総額の一部を契約時に現金で支払い、残額を分割で支払う形態を想像するだろう。この場合、頭金を多く支払えば、その後のローン残高は減る。しかし、携帯電話販売においては、頭金という名の追加料金にすぎない。
販売代理店で端末を分割払いで購入する際、その多くは携帯電話事業者が提供する割賦払い契約を利用することになる。この時、携帯電話事業者は分割払いが可能な上限額、すなわち「割賦上限額」を設定している。これは多くの場合、事業者のオンラインショップなどで販売されている直販価格と同額だ。
どういうことなのか、具体的な金額を例に挙げ、カラクリを見ていこう。
審査を伴う分割払いによる端末購入時には、携帯電話事業者があらかじめ設定した割賦上限額を上限にローン契約を組むことになる。例えば、先述の割賦上限額が10万円の端末があったとする。ある販売代理店がこの端末に2万円を上乗せして12万円で販売する場合、その差額の2万円を頭金という名目で消費者に請求する。この場合、消費者の支払総額は、携帯電話事業者に分割で支払う10万円と、頭金の2万円を合計した12万円となる。
つまり、端末の購入においては、住宅ローンや自動車ローンなどの割賦販売でいう頭金と違い、消費者が頭金を支払っても割賦払い額は減らないのだ。
ただ、日本国内の全店舗が頭金を設定しているわけではなく、追加頭金0円を掲げる店舗も見かける。
とはいえ、頭金という名の追加料金というカラクリを知らない消費者は、例えば販売店員から「頭金がたった数万円ですよ。この端末、購入しませんか?」という甘い誘い言葉を掛けられても、よく情報を得て整理し、吟味してから購入を検討しよう。消費者が、頭金という言葉のイメージに惑わされ、本来支払う必要のない可能性のある追加料金を支払い、結果的に損をする必要はないのだ。
総務省では、「こうした携帯電話端末の価格の構造や、店舗ごとに端末販売価格が異なるという事実を認識していないことに起因するトラブル(例:購入した端末の支払総額を認識していなかったケース、「頭金」がある店舗とない店舗があることを認識していなかったケース)が発生しています」とし、消費者に注意を呼びかけている。
複雑な割引内容を考えるのが面倒なら、「ゲオ」「じゃんぱら」「ソフマップ」などの買い取り・販売の専門店を利用するのもアリだ。今使っている端末を査定して買い取ってもらい、その代金を利用して新しい端末を購入する手もある。買取店舗が近くにない場合は手間はかかるが、近年では自宅に宅配員が中古品を引き取りにきて、発送された後に査定が完了したら代金が指定の銀行口座に振り込まれる仕組みも充実している。
つまり、複雑な割引サービスを利用しなくても、買い取り・販売の専門店を頼り、新しい端末を一括で購入する際に中古端末の買取額を利用すれば、新しい端末をお得に入手することも可能だ。端末を初期化したり、査定を待ったり……と、この方法も「負担が少なく楽だ」とは断言できないが、携帯電話販売店やキャリアショップへ行き、審査をクリアできるかどうかも分からない、複雑なプログラムを組むよりは、中古端末の買取額を頼って新端末を買う方が確実かつ単純に考えられるはずだ。
総務省のガイドライン改正で激安Androidスマホは軒並み値上げに それでも“実質24円”が残るワケ
字義とは違う スマホやケータイを買う時の「頭金」ってなぜあるの?
「端末値引き4万円まで」「白ロム割規制」は12月27日から 電気通信事業法の省令改正が決定
「端末値引き4万円まで」「白ロム割規制」は12月27日から 電気通信事業法の省令改正が決定
「5Gミリ波の端末、普及していない」 ならば割引上限額を4万円→5.5万円に緩和でどうか 総務省が意見募集Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.