「頭金0円=スマホがタダ」は誤解――複雑な割引内容、総務省が注意喚起 新機種を“もっと分かりやすく買う”方法は?

» 2025年09月06日 22時20分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 総務省は9月5日、携帯電話端末の販売価格に関する注意喚起を実施した。スマートフォンなどの携帯電話端末の購入を検討している消費者に対し、店舗によって販売価格が異なる事実や、業界特有の商慣習である「頭金」について十分に理解し、支払総額をよく確認した上で契約するよう呼びかけた。

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総務省 スマホ 買い方 複雑 分かりづらい 消費者 「携帯電話端末の販売価格」に関して注意喚起を行う総務省のサイト

同じスマホ(携帯電話端末)なのに……店舗によって値段が違うのはなぜ?

 携帯電話端末は、携帯電話事業者が直接運営する直営店やオンラインショップ、あるいは事業者から委託を受けた販売代理店が運営するキャリアショップ、そして家電量販店などで購入できる。同じ携帯電話事業者の回線契約を伴う端末であれば、どの店舗で購入しても価格は同じだと誤解されているようだが、実際は違う。

 ここで、販売代理店における価格設定の仕組みを整理してみよう。代理店が設定する端末販売価格は、主に2つの要素で構成される。1つは、携帯電話事業者から代理店へ端末を卸す際の「端末卸価格」。そしてもう1つが、代理店が自身の利益や経費などを賄うために上乗せする「利益相当額」だ。

 最終的な端末販売価格は「端末卸価格+利益相当額」で決まる。この代理店が上乗せする額が店舗によって異なる。それゆえに同じ機種、同じキャリアの端末であっても、例えばA店とB店では販売価格に数万円の差が生じるというのだ。

後から気付いた……「(スマホ)端末代、安くなっていないじゃないか」 それは、頭金という名の追加料金だから

 今回の注意喚起で特に注視・理解すべきは頭金という言葉の存在だ。頭金と聞くと、住宅ローンや自動車ローンなどで、総額の一部を契約時に現金で支払い、残額を分割で支払う形態を想像するだろう。この場合、頭金を多く支払えば、その後のローン残高は減る。しかし、携帯電話販売においては、頭金という名の追加料金にすぎない。

総務省 スマホ 買い方 複雑 分かりづらい 消費者 「頭金を支払ったら、分割払いの金額はその分減るんじゃないの?」「頭金0円ってことは、端末がタダで手に入るってことじゃないの?」──これらは誤解だ

 販売代理店で端末を分割払いで購入する際、その多くは携帯電話事業者が提供する割賦払い契約を利用することになる。この時、携帯電話事業者は分割払いが可能な上限額、すなわち「割賦上限額」を設定している。これは多くの場合、事業者のオンラインショップなどで販売されている直販価格と同額だ。

総務省 スマホ 買い方 複雑 分かりづらい 消費者 販売代理店と売買契約を結ぶと同時に、利用者は携帯電話事業者と立替払い契約を結ぶ。割賦額は与信範囲で自由に決めるものではなく、事業者の設定する上限(多くは直販価格と同額)に一致するのが一般的だという

 どういうことなのか、具体的な金額を例に挙げ、カラクリを見ていこう。

 審査を伴う分割払いによる端末購入時には、携帯電話事業者があらかじめ設定した割賦上限額を上限にローン契約を組むことになる。例えば、先述の割賦上限額が10万円の端末があったとする。ある販売代理店がこの端末に2万円を上乗せして12万円で販売する場合、その差額の2万円を頭金という名目で消費者に請求する。この場合、消費者の支払総額は、携帯電話事業者に分割で支払う10万円と、頭金の2万円を合計した12万円となる。

総務省 スマホ 買い方 複雑 分かりづらい 消費者 販売現場では、この上限額がそのまま割賦払い額として表示され、さらにその額に上乗せする形で「頭金」という名称が用いられる

 つまり、端末の購入においては、住宅ローンや自動車ローンなどの割賦販売でいう頭金と違い、消費者が頭金を支払っても割賦払い額は減らないのだ。

 ただ、日本国内の全店舗が頭金を設定しているわけではなく、追加頭金0円を掲げる店舗も見かける。

 とはいえ、頭金という名の追加料金というカラクリを知らない消費者は、例えば販売店員から「頭金がたった数万円ですよ。この端末、購入しませんか?」という甘い誘い言葉を掛けられても、よく情報を得て整理し、吟味してから購入を検討しよう。消費者が、頭金という言葉のイメージに惑わされ、本来支払う必要のない可能性のある追加料金を支払い、結果的に損をする必要はないのだ。

 総務省では、「こうした携帯電話端末の価格の構造や、店舗ごとに端末販売価格が異なるという事実を認識していないことに起因するトラブル(例:購入した端末の支払総額を認識していなかったケース、「頭金」がある店舗とない店舗があることを認識していなかったケース)が発生しています」とし、消費者に注意を呼びかけている。

複雑な割引なんて審査が必要だし、考えるのが面倒じゃないか……そんな人はどうすればいい?

 複雑な割引内容を考えるのが面倒なら、「ゲオ」「じゃんぱら」「ソフマップ」などの買い取り・販売の専門店を利用するのもアリだ。今使っている端末を査定して買い取ってもらい、その代金を利用して新しい端末を購入する手もある。買取店舗が近くにない場合は手間はかかるが、近年では自宅に宅配員が中古品を引き取りにきて、発送された後に査定が完了したら代金が指定の銀行口座に振り込まれる仕組みも充実している。

 つまり、複雑な割引サービスを利用しなくても、買い取り・販売の専門店を頼り、新しい端末を一括で購入する際に中古端末の買取額を利用すれば、新しい端末をお得に入手することも可能だ。端末を初期化したり、査定を待ったり……と、この方法も「負担が少なく楽だ」とは断言できないが、携帯電話販売店やキャリアショップへ行き、審査をクリアできるかどうかも分からない、複雑なプログラムを組むよりは、中古端末の買取額を頼って新端末を買う方が確実かつ単純に考えられるはずだ。

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