「iPhone Air」誕生で「Pro」は道具へ Apple幹部が語る、2025年iPhoneのラインアップ戦略石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2025年09月20日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

「eSIMが未来と確信」――Appleが通信技術に注力する理由とは

 冒頭で述べたように、iPhone Airはグローバル全体でeSIM専用モデルになった。SIMカードスロットありのモデルは存在しない、ということだ。また、日本ではiPhone Airだけでなく、iPhone 17やiPhone 17 Pro/Pro MaxからもSIMカードスロットがなくなっている。米国では、2022年に発売されたiPhone 14で同様の仕様になったが、3年という歳月を経て、日本を含む一部地域にもそれが広がり始めている。

 SIMカードやeSIMのプロファイルは、あくまでキャリアが発行するもの。Appleだけが先走ってeSIM専用設計にしても、キャリア側が対応していなければ使うことができない。そのため、Appleは「この日に備えるため、キャリアのパートナーと協力して取り組んできた」という。3年は、お膝元である米国から拡大するための準備期間だったというわけだ。

iPhone 17 Pro 写真は米国版だが、日本版もiPhone 17やiPhone 17 Pro/Pro MaxからSIMカードスロットがなくなった

 実際、キャリア各社も店頭やオンラインでのeSIM対応を行うべく、オペレーションなどの準備を続けてきた。とはいえ、ここまでeSIMを積極的に拡大するメーカーは珍しい。Appleは、eSIMへの取り組みが非常に早く、その取り組みは2014年にiPadが採用した「Apple SIM」にさかのぼることができる。

 「2014年にiPad、2017年にはApple Watch、2018年にはiPhoneにeSIMを搭載しました。ですから、われわれは長年この旅を続けており、eSIMの標準を策定する支援もしてきました」

iPhone eSIM 2018年のiPhone XSでeSIMを初めて採用した。その取り組みは、丸7年を超えた

 では、なぜ同社は他社をリードする勢いでeSIMに注力しているのか。ボーチャーズ氏の答えは単純明快。同氏は「eSIMが未来であると確信している」と断言して、こう続ける。

 「これほどまでに注力しているのは、eSIMがお客さまに対して大きなメリットを提供できると信じているからです。使いやすく、より安全で、1台の端末に8つまで搭載できるのに、製品内のスペースを取りません。iPhone AirはeSIMなしでは実現できませんでしたし、iPhone 17 Pro/Pro MaxはどちらもeSIMによって大幅なバッテリーの恩恵を受けています」

iPhone 17 eSIM eSIMには恩恵が多いと語るボーチャーズ氏

 eSIMに限らず、Appleは通信の新機能に積極的だ。2025年の新製品では、Apple Watchも3機種が5Gに対応。Apple Watch Ultra 3は、衛星通信も利用できるようになった。振り返ると、いち早くeSIMを採用し、単独での通信を可能にしたのもApple Watchだった。ディスプレイやカメラなどでは“初物”を狙うことが少ない一方で、こと通信に関しては先頭集団どころか先頭を独走することも多い。

Apple Watch Ultra 3 Apple Watch Ultra 3は、衛星経由の緊急SOSに対応。Apple Watchは3機種とも、初めて5Gもサポートする

 その理由を問われたボーチャーズ氏は、「これまで言及した全ての製品(iPhone、Apple Watch)を購入する主な理由の1つが、コミュニケーションを取るため」としながら、次のように話す。

 「それは、電話での通話かもしれませんし、インターネット経由のメッセージングサービスかもしれません。あるいは緊急時の衛星通信という場合もあるでしょう。われわれは、常に「お客さまに何を提供できるか」を考えることから始めて、それを実現するための最高の技術を追求します。場合によっては、それは長年存在していた技術かもしれません。しかし、多くの場合、市場に投入する必要のある新しい技術なのです」

 「携帯電話を再定義する」(ジョブズ氏)とうたって登場したiPhoneだが、当初はGSM(2G)のみで、3Gすらサポートしていなかった。そのAppleが、今や根幹でもある通信技術を自身で発展させ、モデムまで設計するようになった。初代iPhoneから18年での大きな変化といえる。iPhoneやApple Watchが率先して最新技術に対応した結果、キャリアのインフラが進化する契機になることも多い。iPhone AirやiPhone 17シリーズも、日本のeSIM普及率を向上させる起爆剤になりそうだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年07月26日 更新
  1. 「0.2秒で冷却」をうたうペルチェ素子搭載の腰掛けファン Amazonで53%オフ (2026年07月24日)
  2. ドコモが「iPhone 17」シリーズや「iPhone Air」を値上げ 一部機種は残価も引き上げ、実質負担額の影響は? (2026年07月24日)
  3. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  4. 従来の健康保険証は7月31日で利用不可に 8月1日以降は「マイナ保険証」の利用を (2026年07月24日)
  5. 330円で手に入る「足元灯」「非常灯」 充電式になって利便性向上 (2026年07月25日)
  6. サムスンが「Galaxy Z Fold8」で横長折りたたみを投入する理由 AIの進化にもマッチ、“iPhone包囲網”も万全か (2026年07月25日)
  7. モトローラから新しいミドルレンジスマホ「moto g37」シリーズ登場 ソフトバンク、楽天モバイル、ドコモも取り扱い (2026年07月24日)
  8. なぜ「LINE VOOM」は嫌われたのか 保護者を悩ませた“子供たちの抜け道” (2026年07月24日)
  9. 界面活性剤とマイクロファイバーでタッチパネルをきれいに! ダイソーで220円の「スクリーンクリーナー」を試す (2026年07月25日)
  10. ダイソーで330円の「人感・明暗センサーLEDバーライト(Type-C)」が意外と便利 1人暮らしの帰宅時や非常灯に便利  (2026年07月18日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー