9月9日(現地時間)に発表された「iPhone 17」シリーズや「iPhone Air」で、最も驚きだったことの1つが「eSIMオンリー」という仕様だ。もともとAppleは、2022年に発売された「iPhone 14」シリーズで先行的にiPhoneから物理スロットを排除。2024年に投入された「iPhone 16」シリーズまで、米国版のみeSIMオンリーで展開してきた。Apple製品というくくりでは、iPadもeSIM化を進めており、こちらは日本でも現行ラインアップはeSIMオンリーになっている。
iPhone 17シリーズやiPhone Airでは、eSIM化の波が日本にも到達した。iPhone 17や、そのプロモデルにあたる「iPhone 17 Pro/Pro Max」は物理SIMスロットを残したバージョンを展開する国や地域もあるが、日本で販売されるのはeSIMオンリー版。スマホの本流で、最も販売台数も多いiPhoneだけに、その影響は大きくなる。では、なぜAppleはeSIMを推進しているのか。同社の戦略とともに、日本での対応状況や今後の展開を読み解いていく。
「iPhone Airは世界中でeSIM専用設計にした」(Apple ハードウェアエンジアリング担当上級副社長ジョン・ターナス氏)――この発表があった瞬間、発表会の会場になっていたSteve Jobs Theaterは驚きに包まれた。SIMスロットを完全に廃した端末はiPhone Airが初というわけではないが、ここまで大規模かつグローバルで展開される端末という点では異例と言ってもいいだろう。
実際、iPhone AirはeSIMに対する規制が厳しく、導入が進んでいない中国本土でも同じ仕様で販売されることが明らかになっており、例外なくSIMスロットを廃している。また、iPhone 17 Pro/Pro Maxが披露された際には、eSIMオンリーモデルの方が、より多くバッテリーを積めると解説。同モデルでは、ビデオ再生時間が2時間長くなっている。
SIMスロットを廃するメリットを、ここまで明確に打ち出したのは初めてのこと。発表会では、「eSIMは非常に利用が簡単で、よりセキュリティが強固になり、貴重なiPhone内部のスペースを節約することができる」(同)と語られている。海外旅行時に、安価な料金プランを提供する海外用eSIMを入れられることも改めて紹介された。
確かにiPhone Airは、eSIMがあってこそ実現できたような端末だ。内蔵部品の多くはカメラ周りのバンプ部分に集約されており、ボディーには全体にバッテリーが敷き詰められている。バッテリー性能を犠牲にしなければ、SIMスロットを搭載する余地はないように見える。eSIMオンリーにすることが、設計の前提になっていたといえる。
iPhone Airに比べて内部構造には余裕があるiPhone 17 Pro/Pro Maxも、先に述べたようにeSIMオンリーにすることで、これまで以上に駆動時間を伸ばせるのはメリットだ。可動部分を減らすという意味では、SIMスロットの故障もなくせる。その意味で、SIMスロットの排除は、スマホを開発するメーカーにより設計の自由度を与えることにつながっている。
また、Appleが主張するように、ユーザーにとっても契約が簡易かつ場所を選ばなくなる上に、セキュリティの強化にもつながる。端末の盗難時に、SIMカードだけ抜かれて海外に通話されてしまったり、データ通信を使われてしまったりといったトラブルを防ぎやすいからだ。
ターナス氏が、「われわれはeSIMのパイオニアで、その後業界のスタンダードになった」と語るように、AppleはeSIMの採用で他社を先行していた。初採用は、2018年に登場した「iPhone XS」シリーズ。その後も継続的にスマホに採用し、デュアルeSIMなどの仕様もいち早く取り入れてきた先駆者だ。米国市場限定ながら、SIMスロットの排除にいち早く取り組んできた
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