もっとも、eSIMのプロファイルを発行するのはキャリア側。Appleが単独で機能を開発しただけで導入できるものではない。ターナス氏も「キャリアパートナーとの綿密な計画やテストによって、グローバルなカバレッジが実現した」と語る。Appleが単独で実行に移したというより、これを受け入れるキャリア側との協力があって、初めてeSIM専用設計が可能になったといえる。
キャリア側も事前にeSIM専用の端末を受け入れる準備を進めてきた。先に挙げたeSIMクイック転送への対応は、その1つ。当初は分かりづらかったプロファイル再発行のオペレーションなども徐々に改善されてきている。
ただ、SIMカードを入れ替えるだけとは違い、eSIMの再発行にはどうしてもシステムを動かすためのコストがかかる。キャリアの一部は、それを手数料としてユーザーに転嫁している。こうした中、各社ともeSIM専用端末のiPhone Air投入前に、相次いで無料化を打ち出した。
ソフトバンクは8月に事務手数料を改定したが、その際にもeSIM再発行だけは無料を当面の間、継続することにした。KDDIも、9月から4Gと5G、5Gと5G SAなどに契約種別が変わる際の手数料を無料化。eSIM再発行の手数料もソフトバンクと同様、当面無料にしている。“当面”という言葉は少々気になるが、もともとオンラインでの手続きに手数料を取っていないドコモや楽天モバイルも含めて、大手キャリアは4社ともeSIMの再発行が無料になっている。
また、店頭でのオペレーションもiPhone 17シリーズやiPhone Airの投入に向け、徐々に変更を加えてきたようだ。Y!mobileの新料金プラン「シンプル3」発表時に、専務執行役員 コンシューマ事業推進統括の寺尾洋幸氏は、ソフトバンクショップでeSIMを推進していることを明かし「物理SIMとは違ったオペレーションになるので、その練習をしているところ」と語った。
実際、筆者がPixel 10を購入するためにソフトバンクショップを訪れたところ、物理SIMからeSIMへの変更を強く勧められた。Pixel 10は物理SIMにも対応しているものの、ショップにおいてもeSIMを中心にしたオペレーションへシフトしようとしていることがうかがえた。
日本で約半数のシェアを占めるiPhoneがeSIM専用端末になることで、その利用率は一気に上がっていくことは間違いない。かつてはmicroSIMやnanoSIMを先行的に採用し、eSIMへの対応も早かったApple。こうした動きにAndroid勢が追随することで、業界のスタンダードが塗り替わってきた経緯がある。こうした歴史を踏まえると、iPhone AirやiPhone 17シリーズの登場をきっかけに、eSIM専用化の動きが加速する可能性も高そうだ。
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