既報の通り、Appleの新型「iPhone 17」シリーズは、販売される国や地域によってハードウェアの仕様が若干異なるが、日本国内モデルはSIMが「eSIM」のみの対応となる。
スマートフォンに採用されるeSIMは、従来の物理的なSIMカードのように差し替える必要がなく、ネットワーク経由で契約者情報(プロファイル)を書き換えられる点が大きな特徴だ。これまでもiPhoneやPixelなどの機種で、物理SIMと並行して積極的に採用されてきた。
しかし、日本で発売されるiPhone 17シリーズと、同時発表された薄型モデル「iPhone Air」(全ての販売国)では物理SIMスロットが廃止され、eSIMのみの対応となった。
「Appleの思い切った変更判断」に対し、X(旧Twitter)では「eSIMは再発行に時間がかかり不便」「物理SIMカードが使えないのは困る」「物理SIMの廃止は面倒だ」といった懸念の声が多数上がっている。また「使ったことがないので分からない」といった、使い方に戸惑う声も見受けられる。
そこで本記事では、eSIMのメリットとデメリットを整理する。
eSIMの大きな利点として、機種変更時に便利な「eSIMクイック転送」機能が利用できる点が挙げられる。iOS 16でこの機能が導入される以前は、eSIMを新しい端末に移す際に通信事業者での再発行手続きが必要であった。
しかし、クイック転送機能を使えば、iCloudやBluetoothを通じて新旧iPhoneの状況を確認した上でeSIM情報を移行でき、面倒な手続きを省略できる。ただし、利用には通信事業者が指定するOSのバージョンなど、いくつかの条件を満たす必要がある。
【訂正:9月11日19時37分】iCloudやBluetoothに関する文言について、実際の仕組みとは異なる印象を与える恐れがあるため、修正いたしました。お詫びして訂正いたします
eSIMはスマートフォン本体に組み込まれているため、物理SIMカードのように抜き差しする必要がない。そのため、SIMカードトレイを引き出すための細長い棒状の器具、通称「SIMピン」が不要になる。中古端末の購入時などにSIMピンが付属していないと、いざというときに別途用意しなければならない。eSIMであれば、そうした心配は無用である。
SNSの声にもあるように、eSIMの手続きは必ずしも簡単とはいえない。特に、前述のクイック転送を利用しない場合、契約者情報が書き込まれた「プロファイル」を自身でダウンロードする必要がある。この作業がうまくいかなければ、当然ながらデータ通信や通話はできない。
多くの通信サービスがこのプロファイルをインストールするためのQRコードを用意しており、例えば、1台のPC画面にQRコードを表示し、利用したいスマートフォンのカメラでそれを読み込む作業も必要だ。つまり、最低2台のデバイスが必要になるということだ。
手続きに不安がある場合、通信事業者の店舗で相談することも可能だが、十分なサポートが受けられないケースもある。筆者が家族の契約で店舗を訪れた際も、最終的なプロファイルのダウンロード作業は利用者自身で行うよう案内され、その場で試行錯誤しながら設定を進めることになった。
eSIMは、セキュリティ上のリスクも指摘されている。過去には、楽天モバイルでeSIMが不正利用される事案が発生した。これは、第三者がフィッシングサイトなどで利用者のIDとパスワードを不正に入手し、eSIMを勝手に再発行して通信サービスを乗っ取るという手口である。
この種の犯罪は「SIMスワップ」や「SIMハイジャック」と呼ばれ、FBI(米国連邦捜査局)も2022年に注意喚起を行っている。楽天モバイルが総務省へ提出した報告書によれば、一連の事案で多数のIDとパスワードが不正に入手されたとされている。犯人によって契約者向けサイト「my楽天モバイル」にログインされると、通話履歴などの個人情報が第三者に筒抜けになる危険性があった。
このように、eSIMは物理SIMカードの差し替えが不要になるという利点がある一方で、手続きの面ではまだ「シンプル」とはいえない状況だ。シンプルを優先してセキュリティを度外視するのは絶対にダメだが、現状では、SIMピンの有無といった点を考慮しても、「物理SIMを差し替える方が手軽で早い」と感じるユーザーが少なくないはずだ。
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