楽天モバイルが9月30日にプレスカンファレンスを開催した。事前の案内では、楽天モバイル 代表取締役会長の三木谷浩史氏と、楽天モバイル 常務執行役員CMOの河野奈保氏が登壇することが案内されており、サービスの根幹に関わる発表だと予想された。
単純に考えると、翌10月1日から提供する「Rakuten最強U-NEXT」を改めて発表する、あるいは何らかの改定があるかと思われたが、大手キャリアが料金プランの値上げを発表している中、ついに楽天モバイルも値上げに動き出すのか……とみる向きもあった。
事実、三木谷氏は、カンファレンスの冒頭で大手キャリアの通信費が値上げ傾向にあることに触れ、その背景として電気料金や人件費の高騰を挙げる。そして三木谷氏が「今日は、楽天モバイルも値上げします……」と切り出し、いよいよか、と思われたところで、「……ではなく、楽天モバイルは、低価格×無制限を継続します」と続ける。思わず筆者もだまされかけたが、楽天モバイルは値上げをしないことを改めて伝える場を設けたかったようだ。
競合他社を見ると、ドコモとauはコンテンツや通信などの付加価値サービスを加えながら値上げ、UQ mobileはデータ容量を増やして値上げ、Y!mobileは割引なしだと値上げといった形で、収益改善に打って出ている。
そんな中、楽天モバイルはその流れにあらがうかのごとく、料金は据え置きとする。楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」は月額3278円(税込み、以下同)でデータ通信が使い放題としており、大手キャリアに比べてそもそもの料金が安い。電気代や物価が高騰している中で、この低価格を維持できる理由として、「完全仮想化ネットワーク」と「Open RAN」を挙げる。
完全仮想化ネットワークでは、ハードウェアに依存せずソフトウェアを活用することで、設備投資費を約40%、事業運営費を約30%削減できるという。オープンな規格に基づき、さまざまなベンダーの通信機器を導入できるOpen RANを基地局に採用したことで、機器の調達コストを大幅に削減できたとする。これまで導入したOpen RAN対応の通信機器は34万以上に上る。
電気代の高騰に対しては、AIを活用することで影響を抑えていく。「基地局の稼働率が高いところでは出力を上げ、稼働率があまり高くないところは省エネモードで運用していく」(三木谷氏)。これにより、2025年は1年間で電力消費量を20%削減できる見通しだという。
人件費については、三木谷氏は「(楽天モバイルショップ)1店舗あたりの獲得数はどんどん上がっていっている」と話し、DXや業務改善によって、ショップのコストは維持または下げられているという。「1件獲得あたりのコストと生涯価値を考えると、まだ十分に吸収できる範囲内にある」との見立てを示した。
早期黒字化の達成に向けて値上げをするという選択もあったはずだが、それでも料金を据え置きとしたのは、「われわれが第4のキャリアとして迎え入れられた理由が、リーズナブルで使いやすいネットワークを提供することがミッションだから」と三木谷氏。「なかなかつらいところもあるが、頑張っていく」と話し、ローンチ当初の原点を忘れない姿勢を示した。
そんな楽天モバイルの契約数は2025年9月時点で930万を突破しており、「年内に1000万へ到達したい」と三木谷氏は期待を寄せる。1カ月の平均データ利用量は31.2GBまで増加しており、ARPU(1ユーザーあたりの収益)も向上していることがうかがえる。
10月1日には、新料金プランとして「Rakuten最強U-NEXT」の提供を開始する。このプランでは、月額4378円でU-NEXTの動画コンテンツを楽しめる他、楽天モバイルのデータ通信が使い放題になる。さらに、2026年1月末までは月額3278円に割り引くキャンペーンを実施する。月額3278円はRakuten最強プランの20GB超〜データ使い放題と同額なので、楽天モバイルで毎月20GB以上使っている人にとっては、4カ月間、U-NEXTが無料で視聴できることになる。
三木谷氏はRakuten最強U-NEXTについて「型破りな値段で挑戦してきたが、これに加えて、エンタメについてもできるだけ定額で安く、他社に比べるとだいぶ負担が少ないと思う」と自信を見せる。
楽天モバイルは、長らく「ワンプラン」を貫いてきたが、同社にとっては異例となる2つ目のプランが加わることになる。2プランのすみ分けについて河野氏は以下の通り説明する。Rakuten最強プランは、月によってデータ無制限で使いたいが、データ通信を使わない月もある人に勧める。Rakuten最強U-NEXTは、データ無制限でエンタメも楽しみたい人に勧める。
6月から、U-NEXTを契約するとポイントを還元する先行キャンペーンを実施してきたが、Rakuten最強プランとU-NEXTへの申し込みは、3カ月で10万件を突破したという。毎月のデータ利用量が20GBを超えている層も一定数おり、これまでとは違った年代や性別のユーザーも獲得できているという。4カ月間、U-NEXTが実質無料になるキャンペーンも、1000万契約を目指す楽天モバイルにとって、ユーザーを増やす大きなドライバーになりそうだ。
グループ全体で見れば、モバイル事業単体でビジネスをするというよりは、モバイルのユーザーが楽天経済圏で購買活動をすることで、グループの収益向上に貢献できる。河野氏は「楽天グループとしてのベネフィットを提供していき、総合力で勝っていきたい」と意気込む。
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