モトローラ・モビリティ・ジャパンが送り出すフリップ型の折りたたみスマホ「razr」シリーズが、存在感を高めている。日本では、テレビCMなどに出演するアンバサダーとしてタレントの目黒蓮さんを起用。新機種の「razr 60」「razr 60 ultra」でAI性能を強化したことをアピールしている。
取り扱いキャリアを増やすことで、販路の拡大にも成功している。2024年には「razr 50」のドコモ版にあたる「razr 50d」をドコモが販売。2025年の「razr 50d」でも関係を継続している。さらに、razr 60 ultraは約13年ぶりにKDDIのauから販売することも決まり、ついに3キャリアで取り扱われるようになった。
フォルダブルスマホはフォールド型、フリップ型の大きく2つに分かれるが、モトローラは後者に特化することでシェアを伸ばしている。では、razr 60、razr 60 ultraはどのような端末で、今後、どう勢いを拡大していくのか。モトローラ・モビリティ・ジャパンのテクニカルサポートグループ 開発事業部長の伊藤正史氏に話を聞いた。
―― まず、razr 60とはどのような端末なのかを教えてください。先代の「razr 50」から、どこが変わったのでしょうか。
伊藤氏 ほぼ1年前にrazr 50を出させていただき、その後、グローバルではフリップ型でシェア1位になるなど、徐々に成長をしています。AIに関しては(グローバルで)「moto ai」の機能追加を順次進めてきました。ただ、日本語対応にはどうしても時間がかかってしまうので、「motorola edge 60 pro」のときには間に合わず、カメラ系のところだけを進化させた形で投入しました。
その後、moto aiの日本語対応が進み、razr 60で日本語に対応したAIとしてリリースすることができ、razr 60は“AI対応の折りたたみスマホ”として出させていただきました。
―― 進化したのは、主にAIということでしょうか。
伊藤氏 一部進化しています。基本的なプラットフォームは前のrazr 50と共通していますが、例えばプロセッサはMediaTekの「Dimensity 7400+」になってAIパフォーマンスが15%向上しています。チップセットは前作の後継的なものです。バッテリーもrazr 50のときには4200mAhでしたが、razr 60では4500mAhに増えています。
昨年のドコモ版のrazr 50dは4000mAhでしたが、今回は3機種とも4500mAhでそろえることができました。大容量化を図れた理由の1つは、これまでグラファイトアノードだったバッテリーを、シリコンアノードに切り替えたことです。シリコンを使うと高温には弱くなってしまいますが、大容量化を図れます。この辺りは、キャリアとも連携し、信頼性の試験も十分やっています。
―― ぱっと見は変わらないものの、処理能力を上げてバッテリーを増やしたというのは、よりハードウェアとしてAIに最適化したと捉えていいのでしょうか。
伊藤氏 CPUはAIに向けてオプティマイズしていますし、AIを使い倒すとどうしても使用時間が増えてきますので、1日中バッテリーを持たせるためにそのような対応もしています。
また、言い忘れましたが、ハードウェアという点では防水、防塵(じん)に対応しています。ヒンジにはチタン製の部品を使って耐久性を強化しています。これまではステンレス製でしたが、材質としての強度は4倍になりました。強度を高めていき、開閉試験も80万回実施して信頼性を確保しています。
―― チタンにしたことで、軽量化されたなどのメリットはありますか。
伊藤氏 逆に2gほど重くなっていますが……(笑)。
―― それは、バッテリーを増量したりしたことも含めて、トータルでということですよね。
伊藤氏 そうです。結果として、折り目もさらに目立ちにくくなりました。構造も見直し、ヒンジプレートの形状も変わっています。
―― その意味では、内部的に強化した部分が多そうですね。
伊藤氏 いまだに折りたたみは壊れるという心配をお持ちの方もいます。そういう方の声にこたえるために、耐久性を上げています。
―― ちなみに今回もオープンマーケットではrazr 60ですが、先ほどお話があったようにドコモ版はrazr 60dで、ソフトバンク版には「s」がついて「razr 60s」という名前になっています。名前を変えるほどの違いは何かあるのでしょうか。
伊藤氏 違いはいくつかあります。まず、カラーバリエーションですが、オープンマーケットモデルとソフトバンク版は3色ですが、ドコモ版は2色になります。メモリとストレージ構成もオープンマーケットは12GB/512GBですが、キャリア向けの2機種は8GB/256GBになります。また、「Perplexity Pro」は、ソフトバンク版のみ、ソフトバンクがオプションとしてつけて6カ月無料になりますが、オープンマーケット版とドコモ版はモトローラの施策として3カ月間無料になっています。
さらに、ドコモ版はドコモグループが「2040年ネットゼロ」としてサステナビリティを推進していることもあり、環境に配慮した超薄型の個装箱を採用しています。竹とサトウキビでできた個装箱で、スーパーエコフレンドリーです。後は、ドコモ版ではn79(5Gの4.5GHz帯)への対応が必要になるので、そこはハードウェアも少し改修しました。
―― なんと。ドコモ版は無線まわりのハードウェアも異なるのですね。
伊藤氏 はい。n79に対応しているのはrazr 60dだけです。
―― razr 60はキャリア版にそれぞれの名称がついているのに対し、auが販売するrazr 60 ultraはrazr 60 ultraのままです。この違いはどこにあるのでしょうか。
伊藤氏 基本的にメーカーブランドの仕様のものを採用いただきました。これは、「razr 50 ultra」のときも同じような建付けでした。razr 50 ultraはソフトバンクが採用していましたが、そのときにも「s」はつきませんでした。
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