―― razr 60 ultraも、razr 60と同様、ベースのパフォーマンス向上が主な改良点でしょうか。
伊藤氏 ultraは背面パネルにアルカンターラというイタリア製の高級素材を採用しています。これは、車のシートにも使われている素材で、スマホに採用したのは世界で初めてになります。また、ultraはよりAIがサクサク動くようにしたいということで、プロセッサには現時点で(国内では)最速の「Snapdragon 8 Elite」を採用しています。メモリとストレージ構成は以前のモデルが12GB/512GBでしたが、16GB/512GBにしてオンデバイスAIも含めてサクサク動くようにしています。
razr 60もオンデバイスAI対応のプロセッサを搭載してはいますが、パフォーマンスの関係で処理が必要なカメラ系の機能が一部非対応になっています。これに対し、ultraではそういったことがなく、全てに対応しています。edge 60 proでもあった「アクションショット」という人が宙に浮いているような写真を撮れる機能や、全員が目を空けた写真が撮れる「グループショット」にも対応しています。
―― オンデバイスAIは主にカメラ系の処理に使っているということでしょうか。
伊藤氏 今はそうなっています。クリエイト系の機能も、一部はオンデバイスを使っていますが、多くはクラウド側でLLM(大規模言語モデル)エンジンが処理をしています。(新機能の)「おまとメモ」や「とりまリスト」では、そんなことをやっています。
―― クラウドを使うメリットはどこにありますか。精度でしょうか。
伊藤氏 モトローラはマルチプラットフォームAIという戦略を採用しています。moto aiに加え、他のパートナーのAIをエンジンとして採用しています。いろいろなパートナーのLLMエンジンを使い、moto aiがゲートウェイとしてふるまう。これが今、現在の姿です。
ただし、カメラ系の機能についてはオンデバイスでやらないと処理が間に合いません。また、今後はクラウドを使っているものをオンデバイスでできるようにする検討をしています。そちらにシフトしていく動きもあるということです。
―― 処理速度に応じて使い分けているということですね。
伊藤氏 そうですね。例えばおまとメモは数秒遅れで文字起こしが始まりますが、オンデバイスであればこの遅れが分からないぐらいになります。
―― クラウドで処理しているということは、過去モデルでも使えるようになるのでしょうか。
伊藤氏 例えば今回razr 60でmoto aiの日本語対応をしましたが、処理はクラウドでしているのでrazr 50でもOSアップデートで同じ機能を提供しようと考えています。1人でも多くの方にmoto aiを使っていただけるようにできるのが、クラウドのメリットとしてあると思います。
オンデバイスのパフォーマンスは前のモデルより低いことになりますが、クラウドで処理する部分については変わりません。一部オンデバイスでやっている処理は少しだけ時間がかかりますが、それほどユーザー体験には影響しないと思います。
―― 折りたたみとAIの相性というものは、どのようにお考えでしょうか。
伊藤氏 モトローラは、AIが間に入り、アプリを開かなくても(AIが)代わりにやってくれるような世界を目指しています。そういう意味だと、折りたたみスマホの場合、閉じたままでもいろいろな操作ができます。とりまリストやおまとメモはアウトディスプレイだけでそのまま操作ができます。今後も開かず、いろいろなことができる使い勝手には注力していきます。
―― おまとメモは、サマリーをつけてくれますが、「まとめる」という名前になったのは、単なる文字起こしというより、サマリーの方に重きを置いているのでしょうか。ただ、実際に使ってみると、ちょっとまとめがザックリすぎるきらいもありました。
伊藤氏 結構ザックリになってしまいます(笑)。今は、コンシューマーの方がプライベートな会話を録音しておき、サクッとまとめるという使い方に主眼を置いています。
―― ビジネスユースの文字起こしとは少し違うのでしょうか。
伊藤氏 ただし、文字起こしそのものは結構ちゃんとやってくれます。定例進捗(しんちょく)会議というスクリプトを作って実際に試していますが、サマリーという形で話していた内容はまとめてくれました。いわゆる要約はできます。
―― 日本語認識の精度にはまだ改善の余地があるように感じました。ここはいかがでしょうか。
伊藤氏 後で確認できるよう、音声データも残ります。日本語がおかしいというところは、聞き直すこともできます。精度向上には、引き続き取り組んでいます。
―― その精度は、いつの間にか上がっているものなのでしょうか。
伊藤氏 Google Play上でAIは順次アップデートをかけています。それを最新のものにすると、精度向上が図られるという形になります。
―― 次に、とりまリストはどのような使い方を想定しているのでしょうか。
伊藤氏 とりまリストは見逃したメッセージや最重要なメッセージを要約して教えてくれるもので、かつ返信もしてくれる。LINEや電話アプリとユーザーの間に入り、いろいろなことをやってくれるAIです。
例えば朝寝坊して、鬼電、鬼メッセージが来ている状態だと、不在着信は何個か見えますが、LINEの通知は最後のものしか見えなかったりします。それに対してとりまリストを使うと、電話が何回あって、メッセージが送信され、「今日10時集合だけど起きているか」という確認が来ていたことが分かるようにまとめられます。それを見て、返信やコールバックができるようにもなっています。
―― まとめられるのは、LINEと電話だけでしょうか。
伊藤氏 メッセージ系のアプリをまとめるようになっていて、X(旧Twitter)やInstagramのDMにも対応しています。
―― ショッピングアプリなど、その他の通知が多いアプリはどうでしょうか。
伊藤氏 現在はありませんが、「まとめられるといいね」というのは各キャリアとも話をしています。
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