モトローラ・モビリティ・ジャパンは9月30日、都内で新製品発表会を開き、最新の折りたたみスマートフォン「motorola razr 60」シリーズを披露した。
4月24日(米国東部時間12時)に開催した「Motorola Global Mega Launch 2025」において発表済みだが、その日本市場向けモデルの発表に至った形だ。個性的な折りたたみスマートフォンrazr 60シリーズ。今回はどこが進化点なのか、順調に浸透しているのかなど、代表取締役社長の北原秀文氏が語った。
モトローラは、オープンマーケット向けに加え、ソフトバンク向けの「motorolar razr 60s」、NTTドコモ向けの「motorolar razr 60d」を10月10日に発売する。最上位モデルの「motorolar razr 60 Ultra」を12月に投入する計画で、キャリアではKDDIが扱う予定だ。
オープン市場向けモデルの発売日はrazr 60が10月10日、razr 60 ultraが12月。公式通販サイト(moto store)の他、主要な家電量販店やECサイト、インターネットイニシアティブ(IIJmio)を始めとするMVNOを通して販売される。moto storeにおけるrazr 60の販売価格は13万5800円となる。
製品のセールスポイントは「進化したAIと高性能、耐久性と美しいデザインの融合」。AI機能「moto AI」の大幅な進化により、ユーザーの生活に寄り添うサポート役としての役割を強化した。
moto AIでは、新機能として見逃した通知やToDoリストを要約してくれる「とりまリスト(Catch me up)」、音声を保存して書き起こしや翻訳を行ってくれる「おまとメモ(Pay Attention)」、見たり聞いたりスクリーンショットを撮ったりしたものを簡単に探せる「お気にいリマインダー(Remember This/Recall)」、さまざまなことをテキストで串刺し検索できる「グローバルサーチ」が追加されている。
さらに、外部AIとの連携も進め、Gemini Liveの利用に加え、PerplexityやCopilotをmoto AIの導線に組み込み、自然に活用できるようにしている。
性能面では、AI処理能力を15%向上させたMediaTek Dimensity 7400Xを採用し、各種AI機能を快適に動作させる。外側には3.6型のアウトディスプレイを備え、主要アプリを閉じたまま操作できる点も特徴だ。
耐久性も強化され、ヒンジ部品にチタン素材を導入。80万回の開閉試験を実施し、折り目の目立ちにくさも改善した。防水・防塵(じん)性能も備え、日常からアウトドアまで幅広いシーンでの利用を想定している。
また、端末をテント型やノートPC型に配置する「Flex View」スタイルにより、手を使わずに撮影やビデオ通話が可能。ジェスチャー操作も進化し、手のひらをかざして動画撮影を開始し、グーを見せて停止する機能が追加された。
モトローラは折りたたみ端末の黎明(れいめい)期にある日本市場で存在感を高めることを狙っている。グローバルで積み上げた技術とAI活用の知見を生かしつつ、デザイン性や若年層への訴求を通じてブランド力を浸透させる構えだ。
グローバルでは、世界的に成長を続けているモトローラ。北原氏は、過去8四半期連続でプラス成長を維持し、直近の第1四半期では収益ベースで14%増、出荷ベースで6%増を記録したと説明する。特にプレミアムカテゴリーに位置付けられるrazrシリーズとedgeシリーズが好調で、収益は40%、出荷台数は51%増と、市場をけん引しているそうだ。
その中でも日本市場の伸びは際立つ。アジア太平洋地域全体が成長を主導しているが、とりわけ日本では収益が前年比371%増と3倍以上の拡大を見せた。北原氏は「日本はグローバル成長の中心地の1つ」と強調し、今後も投資を強化する方針を示した。
北原氏は、グローバル戦略を「デザイン性」「AI」「IoT」の三本柱に整理した。スワロフスキーとのコラボモデルのように、ファッション性を意識したデザインを推進しつつ、スマートフォンを通じてAI活用を身近にする取り組みを加速する。さらに、ワイヤレスイヤフォンやスマートウォッチなど周辺機器を含めたIoT展開を強化する。
特にAIについては、自社(モトローラ)で大規模言語モデルを持たず、用途に応じて最適なエンジンを選択する「マルチプラットフォーム戦略」を採用。Copilot、Perplexity、Google Geminiの3つのサービスを利用できるようにしたのも、さまざまなユースケースに適したものを選択できることに重きを置いているからだそうだ。
折りたたみ端末の分野では世界シェア1位を獲得している。北原氏は、razrシリーズ購入者の約4分の1がiPhoneからの乗り換え組である点にも触れ、かつてはクレームの多かったヒンジやディスプレイの不具合も技術進化により満足度が向上したこともアピールした。
「iPhoneを長期間使っていた人がiPhoneに飽きて、折りたたみスマホに挑戦したいということから、乗り換えた事例が非常に多い」(北原氏)
今後、モトローラとしては目黒さん効果による認知訴求を引き続き実施していくことに加え、販路拡大も狙う。キャリアのモデルは日本仕様などのキャリア要件を満たさなければ扱ってもらえないが、今回はドコモ、ソフトバンクがraze 60をペースとしたモデルを、12月にはKDDIがrazr 60 Ultraを取り扱う予定だ。
中でも「ソフトバンクでは、ローエンドからミッドレンジ、ハイエンドに至るまで、モトローラ製品のあらゆるレンジがそろっている」と北原氏は胸を張る。販路を広げていく戦略は今まさにお話をしているところだが、各社さん、パートナーさんの事情がありますんで、どのタイミングでどの機種を扱うのかという点については、相談をしているところ」(北原氏)
モトローラが発表したrazr 60シリーズは、折りたたみ端末としての存在感をさらに強めつつ、AIとデザインの融合によって新たな体験を提案するモデルとえいる。グローバルでの成長を背景に、日本市場でもシェア拡大を狙う同社の戦略がどこまで浸透するのか注目される。
razrシリーズに限らず、モトローラブランドの製品は、AppleやSamsung、Googleなどのビックテックブランドに比べ、ブランド力や認知度が低い。特に、若い世代に製品認知を訴求すべく、これまでに男性アイドルグループSnow Manのメンバーである目黒蓮さんをブランドアンバサダーに起用し、テレビCMを放映するなどしてブランドの認知拡大を図ってきた。
モトローラは、2024年の「razr 50」シリーズから掲げてきた「そろそろ、“フツー”に飽きてきた?」というキャッチコピーを今回も継承している。ただ、“普通じゃない”スマホの魅力を伝えるためにも、体験できる場が今後さらに重要になるはずだ。
北原氏は、「折りたたみスマホだと強調して強制的にプッシュしても、やはり「いらない」という結論になってしまう、写真の撮り方や、サブ画面でPayPayやd払いといった決済を行うなど浸透させていくことが非常に重要だ」と述べ、SNSなどを通じて宣伝していく他、イベントなどの各所で認知訴求に努める考えを示した。
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