日本通信は、NTTドコモの音声通信網およびSMS網との相互接続に基づく新サービスの開始時期を、当初予定していた2026年5月24日から同年11月24日に変更すると発表した。2024年2月にドコモと相互接続の合意を結び、2025年6月には携帯電話番号の割り当てを受けていたが、他事業者との接続交渉が進展したことから、全体の調整を経て新たなスケジュールを定めた。
2026年の創立30周年を記念して新サービスを開始する予定だった日本通信。複数の通信事業者との音声網接続に関する交渉が想定より長期化したという。一方で、各社との調整にめどが立ったことから、半年後の11月にサービスを始動することを決定したとしている。なお、今回の延期が業績に及ぼす影響は軽微とみており、必要に応じて適切に開示を行う方針を示した。
日本通信は2025年6月、総務省から携帯電話番号(090などで始まる11桁)の割り当てを正式に受けた。MVNOが携帯電話番号を持つのは国内初の事例であり、2021年12月の総務省情報通信審議会の方針決定と、2023年2月の制度改正を経て実現したものだ。この割り当てにより、同社は音声通話とSMSの相互接続に必要な条件を満たし、実サービス提供に向けて大きく前進した。
これまでMVNOはMNOのネットワークを借りてサービスを提供してきたが、携帯番号を自ら保有することで、MNOに依存しない形で音声通話やSMS、データ通信を提供できるようになる。同社はこの仕組みを「ネオキャリア」と呼び、通信事業の本質的な自立を果たすステージに移行するとしている。
日本通信は2007年、総務大臣裁定によってドコモのデータ通信網との相互接続を実現した。しかし、音声通信網やSMS網については、MVNOが携帯番号の指定を受けられない制度上の制約により、長年接続ができなかった。2021年末に制度方針が転換されると、2022年6月にドコモに対し自社コアネットワークとの接続を申し入れ、2024年2月に正式合意に至った。
現在は、緊急通報(110、119など)を含む通信網の整備や、HSS(Home Subscriber Server)、IMS(IP Multimedia Subsystem)、SMSC(Short Message Service Center)といった中核システムの構築が進んでいる。社内での試験も完了段階にあり、今後はドコモの基地局を用いた動作検証に移る予定だ。
代表取締役社長の福田尚久氏は6月25日、相互接続の意義について「従来のMVNOは卸契約に依存し、相手企業の事情に左右されやすい構造にあった。電気通信事業法に基づく相互接続という持続可能な仕組みを得たことで、明確な出口が見えた」と語っていた。さらに「本当の意味で独立した通信事業者として挑戦を続ける」と述べ、ネオキャリアとしての転換を強調していた。
音声通信網やSMS網を含めた相互接続が実現すると、同社はデータ通信網を含む全てのネットワークを、法に基づく「適正な原価と適正利潤」で長期にわたって利用できるようになる。これにより、より自由度の高いサービス設計が可能となり、利用者にとっても新たな選択肢が広がる見込みだ。
日本通信は、6カ国21社のベンダーと連携し、HSSやIMS、SMSCなどのコアネットワーク機能を組み合わせて構築している。機能単位で最適な技術を採用することで、システム全体の投資コストを従来の数分の一に抑える設計を採用したという。また、ネットワーク運用や代理店業務、人件費なども徹底して効率化しており、“MNOよりも優れたコスト効率”を実現できる体制を整えているという。
こうした低コスト運営を軸に「ローコスト・キャリア」として競争力を発揮し、通信料金の低廉化とサービス多様化を同時に推進する考えだ。音声、SMS、データを独自のネットワークで提供するネオキャリア構想は、これまでMNOに依存してきた国内通信市場に新たな競争環境を生み出す可能性を持つ。
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