こうしたサービス以上にインパクトが大きくなりそうなのは、複数のキャリアの回線を束ねられるところにある。これが加入者管理機能を持ち、自身でSIMを発行するメリットの1つだ。どこか1社のMNOに頼らなくてもよくなるため、あるときはau、あるときはドコモにつなぐといった制御も可能になる。現状でも、mineoはAプラン、Dプラン、Sプランという形でMNO別の回線を提供しているが、音声フルMVNOであれば、これらを1つのmineoプランに束ねることができる。
日本では、大手3キャリアの人口カバー率が軒並み99.9%を超えているため、3社そろって圏外になるケースは少ない一方で、キャリアによってはつながらない場所も存在する。最近では、キャパシティーの問題もあり、キャリアごとの通信品質もまちまち。複数回線を切り替えながら利用できれば、こうした問題を回避できる可能性も出てくる。複数キャリアの回線を束ねられるのは、MVNOならではの強みだ。
オプテージもそれは強く認識しており、au回線での音声フルMVNOを開始した後、別の1社とも接続して、マルチキャリア化を目指していく方針を打ち出している。具体的な協議が開始されたわけではないものの、松田氏としては、ドコモ回線を追加することを想定しているようだ。ドコモは、日本通信向けに音声フルMVNOを実現するためのネットワーク改修を行っている。接続の技術的なハードルは低くなるため、auとドコモの両対応は現実的な計画といえる。
ただ、音声フルMVNOになるためのハードルは高く、電話を提供する各社との相互接続や、警察、消防、海上保安庁といった緊急通報にも対応していく必要があり、時間がかかる。実際、日本通信も接続先との交渉や調整に時間がかかったことを理由に、サービス開始を約半年間延期している。オプテージは、2027年度下期に提供できるのか。
これに対し、松田氏はオプテージに「eo光」で「eo光電話」を提供しているノウハウがあるとしながら、「緊急通報機関との打ち合わせは始めているし、固定でやってきた経験もあるので、そこはしっかりやっていきたいと思っている」と語る。モバイルと固定では、交換機や設備構成に大きな違いはあるものの、相手先との接続という点では経験を重ねている。音声フルMVNOは初めてだが、電話に関しては素人ではないというわけだ。
もっとも、音声フルMVNOを始めたからといって、コンシューマーの回線が急増するわけではないだろう。ライトMVNOとは違い、交換機や加入者管理機能を持つための設備投資も必要になる。MNOへの接続料は引き続きかかるため、ライトMVNOのサービスのような安さは売りにしづらい。オプテージがあえてこの道を選んだのは、法人向けやIoTに活路を見いだしたからだ。
同社は音声フルMVNOと同時に、パートナーのMVNO事業を支援する「MVNO Operation Kit」も発表しており、取締役 常務執行役員・モバイル事業推進本部長の松本和拓氏は、「売上高を倍近くにしていきたい」と語っている。法人向けで大きく事業を拡大しながら、コンシューマーにも音声フルMVNOの特徴を生かした新たなサービスを提供するというのが、オプテージの新しい戦略といえそうだ。
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