現代のデジタル環境において、ユーザーは「タイパ(タイムパフォーマンス)」を極めて重視する。YouTubeの広告が5秒でスキップ可能になるのをカウントダウンし、数秒の読み込み遅延でブラウザを閉じる人にとって、起動画面の専有は「時間を奪う行為」としてネガティブに捉えられる。
たかが数秒、されど数秒。
人によってはそのわずかな時間が耐えがたいストレスとなる。LINEヤフーは「特別な世界観を楽しめます」とアピールしたが、ユーザーが求めているのは特別な世界観ではなく、ストレスのない「使い慣れた操作性」ではないだろうか。
これは、マーケティング部門が描く「ブランディング」と、現場のユーザーが享受する「UX(ユーザー体験)」が決定的に乖離(かいり)していたことを示唆している。LINE側は、この数秒間を「新プランとの接触機会」として捉えていたが、ユーザー側には「目的達成を阻む壁」に映っていた。この認識のズレこそが、今回の炎上の本質だといえる。
今回の発端となった広告は、決してLINE特有の事象ではない。例えば、同じコミュニケーションアプリである「Rakuten Link」でも、画面上(通話終了後や着信履歴)に広告が多く表示されることに対して、使い勝手の悪さを指摘する声は少なくない。
「Rakuten Link」のFAQページには、「通話終了後や着信履歴に表示される広告を非表示設定にすることはできません。通話終了後に表示されるポップアップ広告は、閉じるボタンもしくは広告以外の画面を押下することで閉じることができます」と記載されている(出典:楽天モバイルお客さまサポート)企業側の意図も理解できるが、利用シーンを考慮しない設計や仕様は危険だ。メッセージの送信や通話といった本来の目的を阻害するほどの過剰な広告表示は、サービスからの離脱を招きかねない。SNSで不満が拡散されれば、「肝心なときに使いにくいアプリ」という印象を植え付けられ、それを払拭(ふっしょく)しづらくなってしまう。
今回のNetflix広告騒動は、LINEにとって重要な教訓を残したはずだ。広告はビジネスモデルを支える柱であるが、それが「日常的に使う道具としての機能」を損なわせたとき、ユーザーの信頼を大きく低下させるリスクがあるということだ。
サービス事業者は、演出や効果を優先する前に、ユーザーがその瞬間、何をしようとしているのかという想像力を働かせることが、長期的なサービスの成長には不可欠だ。
月間アクティブユーザー数が9700万人に達する(LINE自社調べ、2025年12月末時点)巨大なインフラだからこそ、LINEには、日々使う道具であることを踏まえ、使い勝を損なわないUI設計を心掛けてほしい。
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