最後に、パフォーマンス・スペックの責任者で標準化本部 ディレクターのヴァレンティン・ゲオルギウ氏が、6Gで性能強化される部分について説明した。
5Gでは100MHz幅がFR1(Sub6の帯域)での最大の帯域幅で、それより広い帯域を使う場合は複数の帯域を束ねて通信する「キャリアアグリゲーション(CA)」を利用する必要がある。しかし、CAにはインフラ側・端末側双方に非効率が生じていることが、運用を通じて明らかになったという。
具体的には、複数の周波数キャリアを同時に制御するための複雑なスケジューリングが必要となること、それによる消費電力の増大や、端末側で帯域を広げる際に遅延が発生するなどが課題となっている。
そのため6Gでは、可能な限り広帯域をシングルキャリアで扱う方向で議論が進んでいる。FR1において、1キャリアで400MHz幅を使用する要求が3GPPで合意された。
広帯域をシングルキャリアで扱うことにより、トラフィックに応じた帯域幅の調整が容易になる。ネットワーク側は、アンテナやパワーアンプを周波数ごとに用意する必要がなくなり、コスト削減にもつながる。また、ネットワークセンシングも広帯域の方が精度が上がるという。
なお、3GPPでよく挙がったのが、400MHz幅を取れない国や地域はどうするかという議論。3GPPでは、例えば250MHz幅のシングルキャリアを作り、そこで効率よく運用できるようにすることが暫定的に合意されている。
「オペレーターがどれくらいの周波数を割り当てられるか決まってから、標準化に動き出すと思います。日本でも200MHzや400MHz幅が取れるかどうか。300MHz幅があったときに、それを1つのチャネルにして効率よく使えるようにすることが重要なポイントだ」(ゲオルギウ氏)
5Gでもかなり高性能になっているので、6Gではメリットが得られないのでは、という声もあるが、Qualcommは「小さい進化を積み重ねることでメリットはまだ得られる」と主張している。ゲオルギウ氏はQualcommが物理レイヤーにおいて提案している技術を紹介した。
周波数利用効率は、5G比で受信時に1.5倍、送信時に1.6倍向上する。また、5Gは当初、TDD用に新しい周波数が割り当てられ、TDDに最適化されていたので、FDDに特化した改善がほとんどなかった。その分、6GではFDDで得られるメリットが高くなっている。キャリアからも「低い周波数のバンドでは6Gを入れるにはそれなりの強化が必要だ」とFDDでの改善が求められているそうだ。
干渉を防ぐガードバンドについては、帯域によって異なるが、30MHz以下の帯域では約6%のメリットが得られる。ノイズや電波干渉の影響で生じた信号の誤りを自動修正する「誤り訂正」については6Gで新技術の採用が決まったが、パフォーマンスより簡単な実装を優先しているという。
変調方式に、Qualcommが推す「プロバビリスティック・シェイピング(Probabilistic Shaping)」という比較的新しい技術を採用すると、2dB程度のメリットが得られるという。変調方式については「ジオメトリック・シェイピング」を提唱する企業もあり、現状、最も物議を醸しているテーマだそうだ。
現状、ほとんどの端末は送信機が1つだが、高い周波数はアンテナのサイズが小さくなり複数の送信機を入れやすくなる。それによってMIMOを使う際に送信時の効率が上がる。
重要なのは、「1つの技術によって大幅にパフォーマンスを上げるものではないということ」と城田氏は言う。ガードバンドの削減、変調方式の進化、MIMOの強化など、数多くの地道な技術改善を積み上げることで性能を向上させようとしている。
ただ、通信キャリア、ネットワークベンダー、移動機ベンダー、チップベンダーなど通信業界に関わる各企業で姿勢が分かれている。Qualcommのように、積極的に技術を盛り込もうとするアグレッシブな企業がある一方で、変更して労力をかけたくないと考えるコンサバティブな企業も存在する。3GPPでの議論は企業のせめぎ合いでもあると城田氏は語っていた。
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