それではベンチマークを利用して双方の処理能力を計測していこう。今回入手したのはPentium D 820(2.8GHz)とPentium 4 670(3.7GHz)の2つで、いずれもIntel 945Gで動作させている。
テストに利用したのは、BAPCoのSYSmark2004、FutureMarkの3DMark05、PCMark04、それにペガシスのTMPGenc Xpress 3を利用したエンコードテストだ。ただし、Pentium D 820とPentium 4 670では、なぜかSYSmark2004のInternet Contents Creationが完走しなかったので、今回はInternet Contents Creationに関しては除外してある。
実在のオフィスアプリケーションを実行して性能を計測するSYSmark2004のOffice Productivityでは、Pentium D 820(2.8GHz)はPentium XE 840(3.2GHz)はもちろんこと、Pentium 4 670(3.8GHz)にも劣っている。
というのも、Office Productivityに採用されているアプリケーションはすべてシングルスレッド処理で(一部複数のアプリケーションを同時に実行する処理も行われるものの)、ほとんど場合、デュアルコアが生きてくるマルチスレッド環境で処理が行われないからだ。
従って、クロック周波数の違いがそのまま結果に反映されていると言ってよい。グラフを見ても、Pentium 4 670(動作クロック3.8GHz)、Pentium XE 840(同3.2GHz)、Pentium D 820(同2.8GHz)となっていることからも明らかだろう。
3DゲームにおけるCPU性能を示す3DMark05では、テスト自体がマルチスレッドに対応しているためか、デュアルコアのCPU(Pentium XE、Pentium D、Athlon 64 X2)が、シングルコアのCPUを上回る結果となっている。この傾向は、PCMark04でも同じように見ることができる。PCMark04のCPUテストで、クロックが低いPentium XE 840がPentium 4 670を上回っているのは典型的な結果といえるだろう。
デュアルコアの恩恵が最も現れやすいのが、マルチスレッドにアプリケーションレベルで対応しているエンコーダソフトだろう。今回利用したTMPGencもその1つで、クロックが1GHzも低いPentium D 820が、Pentium 4 670の結果を上回ることからも、マルチスレッド対応アプリにおけるデュアルコアCPUの優位性が分かる。
以上のような結果から、現時点ではデュアルコアCPUを買って恩恵を受けることができるのは、ずばりエンコードを多用するユーザーと言い切っていいだろう。すてべのテレビ番組を丸取りして、24時間エンコードのためにPCを動かしているというヘビーユーザーであれば、同じ時間でエンコードできる量が増えることになり、そのメリットを十分に体感できるだろう。逆に、あまりそうしたことをしないというユーザーであれば、残念ながらデュアルコアのもつメリットを享受するのは難しいのではないだろうか。
ただ、コンシューマー向けCPUがデュアルコアになったことで、アプリケーション側のマルチスレッドへの対応が今後進んでいくことが予想される。そうした時代には、今よりもメリットを得られる場面は増えていくことも考えられる。
また、アンチウィルスのように、現時点においても複数のアプリケーションを同時に実行することが珍しいことではなくなっている。そうした環境では、デュアルコアは大きな威力を発揮する。そういう意味では、今デュアルコアCPUを選択するというのは悪い選択ではないし、逆に言えばわざわざPentium Dよりも高価格のシングルコアのCPUを選択するという積極的な理由も見あたらない。
なお、Athlon 64 X2を買うか、Pentium Dを買うかという問題だが、これはシンプルに考えられる。性能面ではAthlon 64 X2が明らかに勝っている。ただし、以前の性能比較の記事でも述べたように、価格がハイエンドモデルで10万円を超えるなど、ちょっと手を出しにくいというのも事実。そもそもAthlon 64 X2の投入は第3四半期になる見通しだ。
これに対して、Pentium Dはハイエンドの840でも5万円強、ローエンドの820では3万円弱と、ミドルレンジのCPUとしても手を出せる範囲に設定されている点が大きな魅力と言える。性能のAthlon 64 X2、コストパフォーマンスのPentium D、どちらを買うかは、ユーザーの「PC観」がどちらを重視しているかにかかっているだろう。
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