中国の大地で輝くFlash文化山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2005年06月07日 12時03分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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手軽に作れるMP3プレーヤーが爆発的に普及

 MP3も同様に海賊版のおかげで爆発的に普及した。ちなみに、ここでいう「MP3の海賊版」とは、たとえばソフト屋であたりまえのように買える、MP3ファイルが何百曲も収録されたCDや、著作権を保護するといった概念に乏しい中国人ユーザーのWebサイトでアップされたまま放置されている膨大なMP3ファイルのことだ。

 このように無防備に流通しているMP3の普及を後押ししてしまうのが、生産に高い技術力を必要としないシリコンオーディオメディアプレーヤーだ。「安かろう遅かろう」のメモリといくつかのチップを用意するだけでシリコンオーディオプレーヤーができてしまうとあって、中国国内に存在する膨大な数の零細メーカーがMP3プレーヤーを販売するなど、日本では想像もつかぬほどの苛烈な競争が行われている。

 中国各地の電脳街や大型電器店だけでなく、デパートはもとより、大手スーパーの電器売り場や、学生街の小さな商店まで、各社MP3プレーヤーがびっしりぎっしり並べられている。

 イマドキの中国製低価格MP3プレーヤーは128Mバイトが売れ筋の中心で、価格は「1メガ1元(1元=約13.5円)」が相場、つまり1700円程度(日本で言えば1万2800円の感覚)でプチ金持ちのPCユーザにも無理なく購入できる価格設定だ。

 日本ではiPod Shuffleが戦略的価格で販売されたが、それですら中国ではかなりお高い部類になる。イマドキの中国製低価格MP3プレーヤーは、その便利さと価格から中国人には大いに支持され、都市の若者世代には必須のアイテムとなっている。おかげで、MP3といって意味が分からず首をかしげるような若者はいない。

 誰もが十分な所得が得られる国の人も、国内の貨幣価値が低く、どう考えても先進国の価格水準でソフトを購買できない国の人も、コンテンツを作り、コンテンツを楽しむ権利はある。

 しかし、今の中国のように「海賊版は違法だけれどもやむを得ないから放置している」とも捉えかねない状況はどうにかならないものだろうか。

 欧米や日本では、MP3ファイルをダウンロードたびに課金するシステムが運用されている。海賊版MP3ファイルの流通を防ぐために、このシステムを全世界的に適用し、ダウンロードする国々にあった物価でサービスを提供することは可能かもしれない。

 この方法で、「ダウンロード」というコンテンツを消費する行為ではたしかにフェアになるかもしれない。しかし「Flash」のようなメジャーなコンテンツ製作ツールを購入する場合、アドビが設定した全世界共通価格があるために、貨幣価値が低い国のユーザーは、そのあまりの高さのため、正式版ではコンテンツを作れないことになってしまいアンフェアとなる。

 世界のリーダーであるアドビが、国々の事情に合わせて価格を変えるのも1つの方法であるし、たとえば日本では、Flashコンテンツを作成できるオンラインツールが2000円程度から購入できたりするように、中国でも良質なコンテンツ制作ツールを中国の物価にあわせた価格で提供するのも有効な手段だ。

 中国が海賊版の撲滅に向けて本気で立ち上がっているというならば、そういった有用なソフトを国がソフトウェア製作会社をバックアップしてでも作らせるべきではないだろうか。

 コンテンツ作成ツールがMP3ファイルで提案したような、フェアな課金システムで販売されれば、「高いからしょうがない」といった海賊版普及の温床となる言い訳がなくなるのと同時に、今回紹介したような中国のFlashのような新しいが合法的なソフトウェアライセンスの背景の下に新興国にも生まれるかもしれない。

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