1つのシーケンスに対し場所と時間という2バイトのデータが必要になる前回の方法では、PIC12F675に内蔵されたEEROMを使う場合、たった64ステップの動作しか行えない。といって、シーケンス数を増やすためにデータバイトを減らすと動きや時間に制約が出る。
となると、データ総数を増やす方法を使うしかない。そのためにEEPROMの多いPICを買ってくるのもバカバカしい。というのもPICについているEEPROMデータサイズはPIC16シリーズで最大でも256バイトと2倍にしかならない。もっともっとシーケンス動作ステップを増やさなければ面白くないし、将来の野望に備えるには不十分だ。
そこで外部メモリに活路を見出すことにした。I2C(アイスクエアシーと呼ぶ)のシリアル転送EEPROMを使えば少ない2ピンでROMを読み書きできる。そして、それを簡単に行えるSSP機能を搭載したPICもある。でもPIC12F675にはSSP機能はない。アララ……
ではPIC12F675でI2CのEEPROMが使えないのか? というと、スレーブ動作(コントロールされる側)は無理だが、外部回路をコントロールするマスター動作はソフトウェアで実現可能だ。そのプログラムはMicroChipから“Application Note”として公開されている。I2Cの制御は色々と面倒なことがあるし、デバッグも難しくなるので、素直にこのサンプルプログラムを使ってしまおう。
前回はEEPROMに対してプログラムと同時に書き込んだが、外部I2C ROMへの書き込みは春の工作教室でも紹介した「IC-Prog」と秋月の「AKI-PICプログラマー Ver.4」で共にサポートしている。シリアルROMも秋月電子で売っている(シリアルI2C EEPROM)。
秋月電子では以下を販売している。
メーカー | 容量 | 価格 | 型番 |
MicroChip | 64Kビット | 100円 | 24LC64 |
256Kビット | 160円 | 24(L)C256 | |
ATMEL | 256Kビット | 160円 | AT24C256 |
512Kビット | 300円 | AT24C512 | |
1Mビット | 600円 | AT24C1024 |
価格と容量で256Kビット(32Kバイト)製品が適当なようだ。秋月電子ではATMELとMicroChipの製品を販売しているが、それぞれでピン配置が異なるので配線には注意したい。ここではPICと同メーカーということでMicroChipのメモリを使う。ただし、64Kビット製品も容量が違うだけで制御方法は同じでなので、ステップ数が4000もあれば十分という場合は64Kビット製品を買ってもよいだろう。
ちなみにI2CのスレーブにはA0、A1、A2という3つのアドレスピンがあって、これが背番号になる。つまり背番号0から7までの機器を指定することで、最大8つの機器がI2Cでコントールできるのだ。
あとはプログラム(とシーケンスデータ)を書くだけだ。と言っても今回はプログラムの変更点が多い。まず、資料としてMicroChipのWebサイトから“Application Note”のページを見ると、「APP NOTES BY FUNCTION」という機能別に項目が並んでいる。
その項目から「Communication」セクションの「I2C」というサブカテゴリを開くと「AN982:Interfacing I2C Serial EEPROMs to PIC10 and PIC12 Devices」という説明が見つかるはずだ。ここで「AN892」をクリックしてサマリーを見るとキーワードとして「Serial EEPROM, I2C, PIC10F202, PIC12F675, 24LC16B」と書かれている。
ここからサンプルソースファイルをダウンロードしよう。キーワードから分かるように、非常に好都合なことにPIC12F675をターゲットにしたプログラムとなっているので、ほとんど変更せずに利用できそうだ。I2Cでのコントロールの詳細はPDFファイルのドキュメントを読むとよいだろう。もちろん、24LC64/24(L)C256の資料もMicroChipのサイトから入手できる。
サンプルソースは共通となるモジュール「i2c_routines.inc」と数種類のサンプルプログラムから構成されている。ざっと目を通してみると
という問題がありそうだ。後者はソースファイルを書き変えてしまえば対応だろう。前者は少々厄介で、資料を見ると24LC16Bのメモリ構成は「8*256*8」と書いてある。後ろの8は8ビットアクセスという意味で真ん中の256はアドレスが8ビットあるということだ。では前の8はというと、先に書いたA0、A1、A2でバンクセレクトしてしまおうということになっている。つまり冒頭に書いた「最大8つのスレーブ」というのが使えない。
一方、24C64/256はアドレスを2バイト(16ビット)必要とする。資料を見るとアドレス設定のコントロールワードの後にアドレスを2回、8ビットづつ送信すればよいことが分かる。読み出しルーチンはソースを参考にして別途作ってしまうのがよさそうだ。
もう1つ、I2Cは元々100kHzでのシリアル転送であったが、現在は速度アップされている。ソースは100kHz版だが、秋月電子で売っているMicroChipのI2C EEPROMはすべて400kHz版なので、そこもソースをいじっておくとよいだろう。
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