「エクストリームなハイデフ」環境で知るRadeon X1950によるCrossFireの底力イマドキのイタモノ

» 2006年10月13日 19時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 先日、超高解像度と重負荷条件におけるQuad SLIの効果を検証した。GeForce 7950 GX2によるQuad SLIとCore2 Extreme X6800を組み合わせという、NVIDIA製GPUでできる現時点における最高の構成が発揮するパフォーマンスを市販のゲームを使ったベンチマークで見たわけだが、では、ATI Technologies(ATI)製GPUを使った構成ではどのような性能が発揮されるだろうか。

 ATI製GPUで現時点における最上位ラインアップは、Radeon X1950 XTXを組み合わせたCorssFire構成になる。Radeon X1950シリーズはそれまでのRadeon X1900シリーズとGPUの構造はほぼ同じで、その意味では従来モデルの高クロックバージョンということができる。コンシューマー向けPCパーツとしてビデオメモリに採用したGDDR4は駆動電圧がGDDR3の1.8ボルトから1.5ボルトに下げられるなど、消費電力におけるメリットが強調されている。

 動作クロックはコアクロックが650MHzにメモリクロックが1GHz(データ転送レートで2Gbps相当)と、コアクロックは従来のRadeon X1900 XTXと同じだが、メモリクロックが大幅に引き上げられている。内部の構造はVertexShaderが8ユニットにPixelShaderが48ユニットとRadeon X1900 XTXと同様。新世代Radeonの特徴であるリングバスメモリアーキテクチャも採用されている。内部構造が従来のハイエンドGPUとほぼ同じRadeon X1950 XTXのパフォーマンスの向上は、そのメモリのクロックアップに大きく依存していることになる。

 Radeon X1950 XTXでもRadeon X1950 CrossFire Editonと組み合わせることで、ATIのマルチGPU技術「CrossFire」で動作させることが可能になる。現在のところ、これがATI製コンシューマー向けGPUの最高峰の構成となる。これと、インテルのコンシューマー向けGPUの最高峰「Core2 Extreme X6800」と組み合わせた場合、どのような性能を発揮してくれるのだろうか。

カードサイズは228×98ミリと通常のハイエンドグラフィックスカードと同じ。新しいクーラーユニットは2スロット分消費する厚さがあるが、大口径ファンをゆっくり回すので音は小さい。Catalyst ContrlPanelで測定したアイドル時のチップ温度は65度だった
CrossFireを構築する場合は、Radeon X1950 XTXとRadeon X1950 CrossFire Editonを専用のケーブルで接続する。上下に並べてカードの裏側を見ると、上のXTXに比べて下のCrossFire Editionに実装されているチップが多いことが分かる

 Core2 Extreme X6800とCrossFire構成を組み合わせようとすると、そのマザーボードはIntel 975Xチップセットを搭載したものに限られることになる。別な言いかたをすると、Core2 Extreme X6800に限らず、Core2マイクロアーキテクチャのCPUとインテル製チップセットを搭載したマザーボードを組み合わせるユーザーがマルチGPU構成を使いたい場合、CrossFireが唯一の選択肢となる……、といいたいところだが、Intel 975Xチップセット搭載マザーでもBIOSが対応していれば、NVIDIAの「GeForce 7950 GX2」搭載のグラフィックスカードが使える。

 Intel 975XマザーでCrossFire構成を使う場合、インタフェースとなるPCI-Expressのレーンは「X8+X8」となるが、GeForce 7950 GX2は「X16が1本」となる。また、Quad SLIのレビューで示したように、これまでの一般的なゲーム環境である「1024×768ドット」「1600×1200ドット」というノーマルな設定と「1920×1200ドット」「2560×1600ドット」といった超高解像度の「エクストリームなハイデフ」(X-HD)設定のそれぞれで、CorssFireとGeForce 7950 GX2の優劣がどのように変わるのかも興味深い。

 3D性能を重視するパワーゲームユーザーにとって、Intel 975XマザーでRadeon X1950を使うCrossFire構成を選べばいいのか、それともGeForce 7950 GX2を選べばいいのか。これは、なかなかの悩みどころである。

 そこで今回は、Core2 Extreme X6800とIntel 975Xマザーという構成をベースにして、グラフィックスカードの構成を「Radeon X1950 XTXのCrossFire構成」「GeForce 7950 GX2の単体構成」というマルチGPUの環境と「Radeon X1950 XTX」「GeForce 7900 GTX」の単体構成におけるそれぞれのパフォーマンスを市販ゲームによるベンチマークで比較してみた。Radeon X1950 XTXとCrossFireに適用したCatalystは評価用機材に同封されていたものだが、CATALYST Control Centerで表示されるバージョンは6.7であった。GeForce 7950 GX2とGeForce 7900 GTXにはForceWare 91.45を適用している。

 ベンチマークの設定はQuad SLIのレビューと同様に、X-HDゲーム環境といわれる「2560×1600ドット」「1920×1200ドット」という超高解像度のそれぞれで「アンチエイリアシング=4x、異方性フィルタリング=8サンプリング」「アンチエイリアシング=8x、異方性フィルタリング=16サンプリング」の負荷をかけて測定したほか、同じ負荷条件で「1024×768ドット」「1600×1200ドット」の通常解像度でもパフォーマンスを調べている。なお、Radeon X1950 XTX搭載グラフィックスカード単体ではアンチエイリアシング設定が最大でも「6x」であるため、この構成ではアンチエイリアシング=8xのデータを測定していない。

 また、ベンチマークで使用したゲームタイトルと設定、それからマザーボードとグラフィックスカード以外の評価システムの構成はQuad SLIのレビューと同じにしてある。プラットフォームが異なるので、今回はデータを並べていないが、興味のあるユーザーは両方のグラフを参考値として比較してみるのも一興と思われる。

ベンチマークシステム環境
CPUCore2 Extreme X6800(2.93GHz)
マザーボードIntel D975XBX
メモリPC2-5300/1GB×2ch
HDDST3160023AS
OSWindows XP Professional +SP2

DOOM 3 timedemo(X-HDゲーム環境)
Quake 4 Guru3D(X-HDゲーム環境)

FarCry Hardware OC River(X-HDゲーム環境)
F.E.A.R. timedemo(X-HDゲーム環境)

DOOM 3 timedemo(通常環境)
Quake 4 Guru3D demo(通常環境)

FarCry Hardware OC River(通常環境)
F.E.A.R. timedemo(通常環境)

 X-HDゲーム環境において、Radeon X1950 XTXを使ったCrossFire環境のパフォーマンスは、Quake 4の低解像度(とはいえ1920×1200ドットである)以外で、ほかのグラフィックスカードを圧倒している。ともにGPUを2つ使うGeForce 7950 GX2との差は、ゲームタイトルによってその傾向は異なるが、より高解像度(これはDOOM 3やFarCryで顕著になる)、より重負荷(これはQuake 4とF.E.A.R.で顕著になる)と条件を厳しくするにつれて大きく開いていく。ちなみに、単体構成のRadeon X1950 XTXの結果を100としたときのCrossFireにおける相対性能はゲームタイトルでそれほど差が出ていない。おおよそ140から150台というところでそろっている。いずれのタイトルでも条件が厳しくなると相対性能がわずかに上がる傾向が見られた。

 しかし、1024×768ドット、1600×1200ドットの“通常環境”になると、CrossFire構成の優位性は失われてしまう。Quake 4、Farcryの低解像度条件ではほかのグラフィックスカードのベンチマーク結果を下回り、ほかのテストで優位に立つ状況でもGeForce 7950 GX2との差はわずかである。F.E.A.R.とDOOM 3において「1600×1200ドット」「アンチエイリアシング=8x、異方性フィルタリング=16サンプリング」の条件で測定したときにだけ、CrossFireの結果がほかのグラフィックスカードを大きく引き離している。

今回評価した構成におけるそれぞれの消費電力を3DMark03のGT4とPixel Shaderテスト実行時にワットチェッカーで測定した。GDDR4のおかげでアイドル時の消費電力は少ないものの、Shaderユニットがフルに動き出すと“ぐんっ”と跳ね上がってしまう

 先を見越した絶対性能を確保する考えでグラフィックスカードを選択する場合、Intel 975XマザーでPCを構成するユーザーはRadeon X1950 XTXを組み込んだCrossFireを選ぶことになる。2560×1600ドットという条件において、その性能は圧倒的である。最も負荷を重くしたときの結果はGeForce 7950 GX2の2倍に相当する。ITmedia ShoppingでRadeon X1950 CrossFire Editionの価格を調べるとこちらのように、2006年10月中頃で6万円台後半、Radeon X1950 XTXがこちらのようにおおよそ6万円台半ばとなっている。CrossFire Editonを構成するのに約13万円超えというのは、GeForce 7950 GX2の価格がこちらのように8万円台前後であることを考えると、価格に見合った性能を十分に出していると考えていい。

 ただし、現状の一般的なゲーム環境におけるコストパフォーマンスを考えると、CrossFireを構成するのには躊躇してしまう。少なくとも、今回の評価環境であるIntel 975Xマザーの「8XのPCI-Expressスロット2本」という状況では、投資したコストに見合った性能は望めないことがベンチマークの結果からいえてしまう。「2560×1600ドットのX-HDゲーム環境はそんなに非現実的なことなのか」という考察は別な機会に改めて行うが、Radeon X1950 XTXによるCrossFireを構築する投資に見合った性能を堪能するならば、ユーザーはX-HDゲーム環境の構築も同時に考えたほうがいい。もし、Intel 975Xマザーのシステムで「いち早く」X-HDゲーム環境を堪能したいなら、Radeon X1950XTXでCrossFireをぜひ構築していただきたい。そのパフォーマンスはほかのグラフィックスカードとまったく異なるゲームの世界をユーザーに見せつけてくれるはずだ。

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