夏休みの時期になると、PCメーカーは、自由研究を意識した親子向け体験型イベントを開く。松下電器産業の「手作りLet'snote工房」や富士通の「富士通パソコン組み立て教室」(生産拠点がある福島県伊達市と島根県簸川郡斐川町の2カ所で行っている)などが有名で、NECも、PCの生産拠点がある山形県米沢市で「NECハイテクものづくり教室」を開催している。ただし、NECのイベントは夏休みではなく、地元の「米沢市産業まつり」に関連した行事として、2005年、2006年とも秋に行われていた。
そのNECが、2007年の夏休みに「環境」をテーマとしたセミナーイベントを行った。実際に使われている生産ラインで自分だけのPCを組み立ててしまうような、派手な体験ではないものの、単なる「メーカーのイメージアップ」だけに止まらない、なかなか奥の深い話が紹介された。
とはいえ、そこはNECの夏休み企画なので、PCの中身のチェックから始まった。参加していた子どもたちも「お家にパソコンがある人〜」という問いかけには全員が手を挙げたものの、「じゃあ、パソコンの中身を見たことある人〜」となると、なんと、誰も見たことがないらしい。そこで、NECのスタッフが目の前でノートPCを分解して、子どもたちに実物を見てもらった。
今回開かれたイベントのメインテーマは「エコ」ということで、PCの中身の次は「有害物質」の説明となる。スライドでは、最近なにかと話題になる「中国製品」にまつわる有害物質混入の事例や、環境保護に「世界一うるさいのだ」(イベントで示されたスライドより)というヨーロッパで施行されている「RoHS指令:ロースしれい」(同じくスライドより)など、製品に含まれる有害物質に関する最近の話題が紹介された。
日本についても、含有マークを貼れば有害物質が含まれていても出荷できる状況を「日本では、販売禁止じゃないから、あまいね」(やはり、示されたスライドより)と手厳しい言葉で説明するとともに、NECのPCは、これらの有害物質を完全に排除していることも合わせてアピールしている。
PCと環境の関係で、最近取り上げられるのが「環境にやさしい」再生プラスチックとバイオプラスチックの話題だ。NECでは、再生プラスチックを1998年から、植物のケナフから取り出した繊維を添加したバイオプラスチックを2004年から、それぞれPCの材料として採用している。セミナーの説明では、再生プラスチックにおける廃プラスチック含有比率「5〜10%」はPCの材料として最も高いレベルにあるそうだ。
また、こちらも最近注目されている「使用済みPC」について、使用済みの製品を回収して有用資源に再生する「リサイクル」と、製品そのものをNECが買い取って、再生作業(筐体のクリーニングなど)を経て“リフレッシュPC”として販売する「リユース」の取り組みが紹介された(リサイクルとリユース、そして、使う量や発生するゴミや減らす省資源“リデュース”の「3R」が環境保護のキーワードだ。環境教育が行き届いているイマドキの小学生のほとんどがこの言葉を知っていた)。
通常のメーカーイベントなら、自社が関わっているところまでで説明が終わってしまうところだが、「親子で学べるパソコンのエコ」では、NECという枠を越えた「全地球的な環境問題」にも多くの時間(午前中に行われたイベントのほぼ3分の1)をかけている。そこで取り上げられたのは「地球温暖化」の問題で、セミナーでは、政府の環境対策プロジェクト「チーム マイナス6%」がWebページで紹介しているムービーを見せながら、温暖化の進行を食い止めるために、個人で出来ることをスライドで紹介した。
セミナーで講師を勤めたのは、NECで環境プロジェクトを推進する吉川啓子環境CS推進部主任だ。今回のセミナーで、PCだけでなく、温暖化問題といった全地球的な環境問題を取り上げた理由について吉川氏は、「環境というテーマで夏休みの自由研究として利用していただくために、PCと地球全体の環境問題を紹介するのがいいと思いました」と説明してくれた。
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