「iPhone 2.0」で何が変わるのか?WWDC'08基調講演まとめ(前編)(1/4 ページ)

» 2008年06月13日 12時32分 公開
[林信行,ITmedia]

 来月登場する新型iPhoneの詳細が発表されたWWDC 2008の基調講演。日本ではiPhoneが未発売だったこともあり、ついに日本でも発売されるという情報だけで盛り上がってしまった感がある。だが、あらためて講演の内容を聞き返すと、モバイルコンテンツプレーヤープラットフォームとして(もちろんビジネスモバイル端末としても)大きな可能性を秘めたiPhone 3Gについて、数多くの重要な情報が含まれていることに気付く。

 まずは3部構成だった基調講演の第1部、「iPhone 2.0」についての詳報を、WWDC総集編の前編としてお届けしよう。アップルが公開している基調講演のビデオ映像とあわせて読んでもらうと、より楽しめるはずだ(ところどころにタイムコードを併記した)。

講演が3部構成だった理由

今のアップルは3つの柱を持つ。今回の基調講演ではこのうちiPhoneの話をすることになった(WWDCのセッションでは、ほかの2つの柱についても触れる)。

 基調講演の冒頭で、スティーブ・ジョブズCEOは「今のアップルには3つの柱がある」と語った。1つはMac、1つは音楽ビジネス、そしてもう1つがiPhoneだ。

 そのうちMacについては、次期OSが「Mac OS X Snow Leopard」という名前で、その詳細は秘密保持契約下のセッションで話すと明かしただけである。1時間45分に渡る講演の残り時間は、すべてiPhoneに費やされた。

 講演の途中で、今回の内容をひと言でまとめた言葉が登場する。米New York Times紙のDavid Pogue(デビッド・ポーグ)氏からの引用だ(00:20:40)。

Platform Experience担当の副社長、スコット・フォースタール氏はiPhoneへの感想をいくつか紹介したが、そのトリを飾ったのがこのセリフだった

「あなたは3番目となるメジャー・コンピュータープラットフォームの誕生を目撃しようとしている。Windows、Mac OS X、そしてiPhone」。

 今回の基調講演は、すでにiPhoneを持っている(欧米)のユーザーが誤解しないように配慮した3部構成だったが、まだiPhoneを手にしていない日本の読者には逆に分かりづらかったかもしれない。

 第1部がiPhoneのソフトウェアについて、第2部がiPhoneのサービスについてで、ここまではすでにiPhoneを持っている人でも、ソフトウェアのアップデートやサービスへの登録で恩恵が受けられる部分だ(iPod touchユーザーも有料でアップグレードできる)。これに対して第3部は、7月11日から販売が始まる新製品「iPhone 3G」の紹介だ。

 アップルがこの3つに加えて、最も言いたかったことは、もはやiPhoneの進化がアップルだけの努力によって進むものではなく、世界中の多くの開発者の手に委ねられ始めているということだろう。わずか105分の講演中、32分強(00:21:40-00:53:50)の時間は、他社製のiPhone用アプリケーションの解説に割かれている。

 こうした発表によって、iPhoneはもはや電話+iPod+インターネット端末だけの存在ではなくなったことが実感として得られるようになった。

 壇上には10社が招かれ、SEGA、Pangea、Digital Lengeds Entertainmentの3社が4つのゲームを、eBay、Six Apart、Associated Press、MLB.comの4社が既存のWebサービスをさらに快適に使うためのクライアントアプリケーションを、MODALITY、MIMvistaの2社が医療で必須のビジュアルコミュニケーションを手のひらサイズに納めた新しいソリューションを、そしてloopt社が、iPhoneだからこそ可能になる位置情報に基づいた新しいアプリケーションを紹介した。これについては、後でもう少し詳しく触れるとして、ここからは3部構成の中身を、もう一度しっかりと確認していこう。

「iPhone 2.0」は企業対応

 第1部では、7月はじめにリリース予定の「iPhone 2.0」について解説した。

 このiPhone 2.0には3つの特徴がある。1つめは企業情報システムへの対応、2つめは他社製アプリケーション開発を可能にするSDKへの対応、そして3つめは新機能の搭載だ。

Microsoft ExchangeのActiveSync機能にほぼ全面的に対応した。これは次期Mac OS XのSnow Leopardでも目玉機能だ

 企業情報システムへの対応では、さらに2つの事柄を重視したという。1つはMicrosoft Exchangeのサポートで、「Exchange ActiveSync」と呼ばれる新機能では、メール、コンタクト、カレンダーといった情報をプッシュ方式で追加(iPhoneに送信して追加)できるほか、サーバやネットワークの構成を自動的に見つける「Auto Discovery」をしたり、企業のグローバルアドレスブックを参照したり、万が一iPhoneをなくした場合でも、遠隔操作でiPhone内の情報を抹消するといったことが可能になっている。

iPhoneはトップ企業のリクエストにすべてに応えたという

 もう1つ重要なのがセキュリティへの対応だ。この点に関してアップルは、シスコと協力して、iPhoneを同社が提供するVPN技術のすべてに対応させており、企業で必要とされるそれ以外のネットワークセキュリティ規格にもひととおり対応させた(スライドにはWPA/WPA2 Enterprise、802.1x認証、TLS、TTLS、LEAP、PEAPv0、v1といった規格名が書かれていた)。ジョブズ氏は、企業からのリクエストのすべてに応えたつもりだと語っている。

 アップルにそうしたリクエストを伝えていたのは、同社のβプログラムに参加していた企業で、アメリカのトップ企業500社(Fortune 500)のうちの35%の企業がβテストを行っていたのだという――その中には、世界トップ5の銀行やトップ5の証券会社、7大航空会社中の6社、薬剤会社トップ10のうちの8社、エンターテイメント企業トップ10中の8社も含まれている。それに加えて、全米の有名大学もこのプログラムに参加した。

iPhone 2.0のβテストには全米トップ企業500社の35%(175社前後)とトップ大学が参加し、大変好評を得たという

 ジョブズ氏は、テストプログラムに参加した企業の代表者の声をビデオで紹介した。登場した企業はウォルト・ディズニー、110年の歴史を持つ法律事務所のSONNENSCHELN NATH、注目のバイオ企業であるGenentech、そして米陸軍。

 Genentechでは、1週間で7つの社内アプリケーションを開発し、すでに2000人の社員がこれを使っているという。

 SONNENSCHELNは、FBIなどとも仕事をしたり国土安全保障の仕事もしているため、セキュリティへの対応は極めて重要な事項だが、iPhoneのセキュリティはそうした要件を満たすものだという。

 米陸軍では、紛失した端末から重要情報を抹消することは、兵士の生死に関わる重要問題であり、そうした観点からみてもiPhoneがよいと後押しをする。

 ディズニーの人も、iPhoneは企業情報システムに必要な要件すべて、ラップトップパソコンの性能のすべてをスマートフォンの大きさに納めた端末だ、と大絶賛していた。

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