AMDは、CEATEC JAPANで初めて自社ブースを出展した。その自社ブースのオープニングとして行ったカンファレンスでは、同社のマーケティング本部PCプラットフォームプロダクトマーケティング部マネージャーの土居憲太郎氏が、「AMD HD! Experience」の特徴を紹介した。
土居氏は、地上デジタル放送に対応する大画面テレビや、Blu-ray Discプレーヤー、フルHD画像を記録できるビデオカメラの普及によって、個人によるHDコンテンツ利用機会が増えたが、従来のPCではHDコンテンツを扱えるのが一部のハイエンドモデルに限られており、その状況を改善して、購入しやすい普及モデルのPCでも使えるようにするのがAMD HD! Experienceの目的という、これまでも同社が繰り返し紹介してきた背景を説明した。
AMD HD Experience!を構成する技術として土居氏が特に取り上げたのがUVD(Universal Video Decoder)だ。AMDが自社のGPUやチップセットに統合したグラフィックスコアに実装しているUVDは、ハードウェア(GPU)でVC-1やMPEG-2、H.264のデコード処理を行うことで、CPUの負荷率を下げ、HDコンテンツ再生中でも、メールやインターネット利用などが可能になることが紹介された。
さらに土居氏は、AMD HD! Experienceやこれから導入が進む「GPGPU」(GPUを描画処理だけでなく汎用目的の演算処理にも用いる)によって、PCを構成する各パーツが行う役割も変化すると述べている。その例として、従来のプラットフォームでは、CPUが動画再生や音楽、写真、動画の変換処理を行う一方、チップセットに統合されたグラフィックスコアや外付けのGPUはゲームで利用されるだけだったのが、これからはGPUでもHD動画再生支援(UVD)や音楽や写真、動画の変換処理、そしてゲームにおけるAIの演算処理、そして、より高画質の動画再生などが行われるようになると説明している。
土居氏は、AMDの技術進歩の中で、AMD HD! ExperienceがAMDのプラットフォーム技術とともに着実に進化していることを示した上で、将来は、CPUとチップセットが融合した「FUSION」の登場で、チップセットでもUVDが利用できるようになるほか、次世代モバイル向けGPUではGPGPUに対応することが紹介された。
CEATECのAMDブースでは、「Radeon HD 4000世代と同じ」と土居氏が語る次世代モバイル向けGPUの動く開発サンプルが世界で初めて展示されている。開発中ということもあって、ボードサイズは大きいが、土居氏は、「製品版ではサイズはもっと小さくなり、消費電力も低くなるだろう」と説明している。
AMD HD! Experienceでは、多数のパートナー企業が対応することで、各種デバイスが同じコンテンツデータを利用できるようになるなど、より普遍的なプラットフォームへと成長するとともに、ユーザーの使い勝手も向上していく。すでに、PCバーツベンダーやPCメーカー、そして周辺機器メーカーやソフトウェアベンダーの計37社がAMD HD! Experienceパートナーとなっている。
カンファレンスでは、UVDに対応したメディアプレーヤー「TotalMedia Theatre」を開発したアークソフトの代表取締役本部長兼米国本社副社長 富嶋稔氏が、UVDを利用することで高画質コンテンツの再生でもCPU負荷率が下がり、再生処理もスムーズであることを紹介したほか、現在、GPGPUに対応した動画編集ソフト「LoiLoScope」を開発しているLoiLoの取締役COO 杉山竜太郎氏が、LoiLoScopeのユニークなユーザーインタフェースを披露した。
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