このようにいずれも一長一短であり、機能や性能が大きくかけ離れているわけでもない。プリンタにこだわりがあるユーザーでなければ、どれを買ってもハズレはないだろう。今回はこの中からおすすめの製品を選べという無理難題を引き受けてしまったわけだが、強いて1台を選ぶとすれば、トータルバランスのよさでMP630を推したい。
MP630は突出した部分がない売れ筋モデルなのだが、写真の画質、文書の画質、印刷速度、付加機能、操作性とも高水準をキープしており、省スペース性や用紙のハンドリング、静粛性もよい。それでいて価格も無難なだけに幅広いユーザーにおすすめできる(いうまでもなく、MP610からのリプレイスはおすすめできないが)。2006年に登場してベストセラーモデルとなったMP600系のアドバンテージはいまだ続いているといえそうだ。
とはいえ、ロープロファイル仕様の新カートリッジにより印刷コストが上がったことと、ネットワーク機能がないのはパワーユーザーにとって物足りないところ。プリントサーバを別途導入する手はあるが、そこに追加投資するくらいならば、素直にMP980を購入したほうがよいだろう(ネットワーク機能を搭載したMP620は性能面で見劣りする)。
MP980は写真を頻繁に印刷する層にもおすすめだ。何しろカラーのみならず、モノクロも堪能できるのは本機だけである。後部トレイも備えているので、さまざまなサイズの写真用紙を使用するにも都合がよい。また、新メディアである光沢プロ[プラチナグレード]のデキがよいこともMP980を選ぶ理由の1つとなるだろう。
MP980の対抗となるEP-901Fもなかなかに面白い。写真印刷の画質に目立った進化はなく、普通紙印刷では少々不利なところもあるが、専用紙への写真印刷は昨年の時点でも優れていたので問題ない。操作性については、メニューの構成をもう少し練りこんだ方がよいと思うが、タッチパネルは初心者にも分かりやすく、他機種より1歩進んでいる印象がある。ADFやFAXといった付加価値にも注目だ。
EP-901Fは本体を小型化して、デザインも洗練させ、プリントヘッド詰まりへの対策までしてきたことを大いに評価したい。これまでのマルチフォトカラリオが抱えていた欠点をまとめて克服してきたアグレッシブな製品で良機といえるが、新設計ゆえ値段の高さが玉に瑕(きず)か。FAXが不要ならば、EP-901FからFAXを省いたEP-901Aに注目だ。EP-901Aであれば、量販店で3万円台前半で入手できる。MP980かEP-901F/EP-901Aは、必要な機能の有無やデザインの好みで選んでも構わないだろう。
なお、導入コストを抑えるならばEP-801Aもあるが、タッチパネルに比べて操作性がかなり落ちるので、EP-901FやEP-901Aほどおすすめできない。3代に渡り熟成を重ねたMP630と比べると、まったくの新機種であるEP-801Aが少々不利に映るのは仕方ない。もっとも、他機種をしのぐ薄型の新デザインが気に入り、操作性について割り切ったうえで購入するならアリだ。
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