本特集では各社最新のインクジェットプリンタ(複合機)を5回にわたって検証する。第1回では、エプソン、キヤノン、日本ヒューレット・パッカードが年末商戦に向けて投入した家庭向け複合機の全体的な傾向と注目モデルを紹介した。
今回は第1回で取り上げた3社の注目モデル7台(下表を参照)を集め、省スペース性、液晶モニタと操作パネル、給排紙機構、CD/DVDレーベル印刷、プリンタ部、スキャナ部、インタフェースなどの使い勝手を横並びで比較・検証していく。
第1回 今年は複合機の“当たり年”――最新モデルの傾向と注目機は?
第2回 省スペースと高機能を両立したい――複合機7モデルの使い勝手は?(本記事)
第3回 写真も年賀状も高速印刷がいい――複合機7モデルのスピードは?
第4回 印刷品位をとことんチェック――最も高画質な複合機は?
本特集で比較・検証する複合機7モデル | |||||
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製品名 | メーカー | 液晶モニタ | インク構成 | スキャナ | 実売価格 |
EP-901F | エプソン | 3.5型 | 染料6色(シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラック) | 4800×4800dpi(CIS) | 4万円台前半 |
EP-801A | エプソン | 2.5型 | 染料6色(シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラック) | 2400×4800dpi(CIS) | 2万円台半ば |
PM-A840S | エプソン | 2.5型 | 染料6色(シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロー、ブラック) | 1200×2400dpi(CIS) | 2万円前後 |
PIXUS MP980 | キヤノン | 3.5型 | 染料5色(シアン、マゼンタ、イエロー、グレー、ブラック)+顔料1色(ブラック) | 4800×9600dpi(CCD) | 3万円台前半 |
PIXUS MP630 | キヤノン | 2.5型 | 染料4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)+顔料1色(ブラック) | 4800×9600dpi(CIS) | 2万円台半ば |
PIXUS MP620 | キヤノン | 2.5型 | 染料4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)+顔料1色(ブラック) | 2400×4800dpi(CIS) | 2万円台後半 |
HP Photosmart C6380 All-in-One | 日本HP | 2.4型 | 染料4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)+顔料1色(ブラック) | 4800×9600dpi(CIS) | 2万台半ば |
印刷品質が各社とも一定の品質を超えた現状にあって、家庭向けのインクジェット複合機が差別化を図るためには、ほかの要素を加味しなければならない。ニーズがありながらいまだに満たされていない要素はいろいろとあると思うが、2008年末は各社ともボディのシェイプアップに努めてきた。特に今年のエプソンは小型化にこそ主眼を置いているようにさえ見える。
とはいえ、複合機は置き物ではないので、単純にボディサイズだけを気にしていればよいわけではない。複合機は単機能プリンタと異なり、それ自体を触って操作してダイレクトプリントやコピーを行うことがあるので、小型化が本体の使い勝手を阻害してしまっては困る。また、インクの交換や用紙の補充など、保守作業への配慮も必要だ。その辺りも含めて、各機のボディを見ていこう。
まずは7モデルの本体サイズについて、未使用時にトレイや液晶モニタをたたんだ状態と、使用時にトレイを引き出して液晶モニタを持ち上げた状態の2パターンで比較した。それをまとめたのが下の表だ(使用時の本体サイズは実測)。
複合機7モデルの本体サイズと重量 | |||
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製品名 | EP-901F | EP-801A | PM-A840S |
未使用時の本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 466×385×198ミリ | 446×385×150ミリ | 450×413×205ミリ |
使用時の本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 466×585×198ミリ | 466×585×150ミリ | 450×455×275ミリ |
重量 | 約10.7キロ | 約9キロ | 約8.3キロ |
複合機7モデルの本体サイズと重量 | ||||
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製品名 | MP980 | MP630 | MP620 | C6380 |
未使用時の本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 470×385×199ミリ | 450×368×176ミリ | 450×368×176ミリ | 452×406×207ミリ |
使用時の本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 470×655×320ミリ | 450×638×290ミリ | 450×638×290ミリ | 452×545×207ミリ |
重量 | 約10.7キロ | 約8.8キロ | 約8.6キロ | 約7.5キロ |
使用時は給排紙トレイを展開する必要があるため、どのモデルも奥行きが多少長くなる点は覚えておきたい。また、使用時の高さはスキャナのカバーを開いた状態ではなく、閉じた状態なので、コピーやスキャンの機能を利用する場合はさらに高さが増す。
それでは以下に各モデルの省スペース性を個別にチェックしていこう。
まずはボディを思い切って小型化したエプソンのEP-901FとEP-801Aだが、未使用時と使用時の奥行きが大きく異なる。未使用時は、薄さを追求したボックス型デザインのボディにより、リビングの片隅に置いてもすっきりおさまるだろう。特にEP-801Aは天板が平らなので、未使用時に書類などちょっとしたものを置けて便利だ。
一方、使用時には排紙トレイが手前に最大で約200ミリ飛び出すため、全体の奥行きはかなり長くなる。もっとも、排紙トレイは必要なぶんだけ引き出せばよく、設置に際してトレイの長さが困るシーンは少ないだろう。後部トレイがないため、本体後方に必要なスペースは未使用時と変わらず、保守についても大抵はフロントだけで済む。総じて設置性はかなり高いといえる。
ちなみに、オプションの自動両面印刷ユニット「EPADU1」(実売3000円前後)を装着すると、奥行きはさらに約70ミリ延びるので注意が必要だ。
これと対照的なのがマイナーアップモデルのPM-A840Sだ。収納時でも奥行きが400ミリを超えており、後部トレイを採用する関係上、ボディ後方にもスペースは必要になる。使用する用紙のサイズによっては、さらに数センチの空きスペースが求められるだろう。ただ、PM-A840Sはもとのサイズが大きいだけに、使用時にトレイを全部引き出しても設置面積はそれほど大きくならず、数値上の奥行きはEP-901FやEP-801Aよりも短くなる。
とはいえ、一般に家庭内のプリンタは動作していない時間が非常に長いものなので、未使用時の設置面積が小さなEP-901FとEP-801Aのほうがありがたい。
キヤノンのPIXUS MPシリーズは従来から省スペース性が高く評価されてきた。最新モデルのMP980、MP630、MP620も従来機と同じ「SUPER PHOTO BOX」デザインを踏襲しつつ、さらに小型化を果たしており、高さは多少あるものの、エプソンのEP-901FとEP-801Aに設置性で引けは取らない。
3モデルとも後部トレイを用意しており、設置時には背面のスペースが必要になるが、後部トレイは角度が急なので、A4用紙を給紙しても背面にはそれほど迫り出さない。保守についてはフロント側だけで行える。さらにMP980とMP630は、自動両面印刷機能を標準搭載した状態でこの奥行きにおさまっている点に注目したい。
日本HPのHP Photosmart C6380 All-in-Oneは、従来機と同じ前面給排紙機構を備えたシンプルな外観のボディを採用する。前面に給排紙機構が張り出しているので、奥行きは406ミリ、高さは207ミリあり、エプソンの新型やキヤノンの3台と比べると少し大きめだ。
ただ、後部トレイがなく排紙トレイは小型なので、使用時でも本体サイズに大きな変化はない。排紙トレイは前面なので、さして問題はないだろう。自動両面印刷機能は非搭載だ。
以上で最も設置性に優れた機体はどれか? 率直にいえば、どれが一番かを明言するのは難しい。以前ならばエプソンを除く2社のモデルが良好だったのだが、新設計のEP-901FとEP-801Aは完全に巻き返している(従来機と同じボディのPM-A840はさすがに一回り大きな印象)。
7台を並べて見比べた場合、高さが15センチでフラットに仕上がっているEP-801Aと、自動両面印刷機能を搭載していながら全体的にコンパクトなMP630の2台が光るが、それも家庭内に置くうえで決定的といえるほどではない。よほど設置場所が限定されている場合は別として、PM-A840Sを除く6モデルはどれを選んでも大差ないはずだ。いずれもボディデザインが個性的なので、実物のカラーや質感を確認してから、好みのものを選ぶといいだろう。
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