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» 2009年01月05日 17時11分 公開

5分で分かった気になるアキバ事情:「ちょっと違う街」になった2008年の秋葉原――街編 (2/2)

[古田雄介,ITmedia]
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女性層の取り込みを狙った「AKIBA TOLIM」と「chomp chomp AKIHABARA」

JR秋葉原駅に建つ「AKIBA TOLIM」。電気街とも東西自由通路でつながっている

 秋葉原の街全体に目を向けると、従来の「家電とPC、サブカルの街」というイメージから大きく離れた動きも目立った。象徴的なのは、4月14日にオープンした駅前商業施設「AKIBA TOLIM」だ。AKIBA TOLIMは、行政と民間が一体となって行ったJR秋葉原駅前の再開発のうち、最後の主要ビルとなる「(仮称)TX秋葉原駅前開発ビル/阪急電鉄」の正式名称。つまり、駅前再開発完了のシンボルともいえる施設なのだ。

 AKIBA TOLIMは女性が利用しやすい施設を目指し、京商の屋内サーキット「KYOSHO AKIHABARA」を地下一階に置く一方で、雑貨店や衣類店といったこれまでのアキバにはあまりなかった店舗が多数入店しているのが特徴だ。同時期にAKIBA TOLIMの向かいに建った「chomp chomp AKIHABARA」も女性を主要ターゲットとしており、街全体で新たな層を取り込む動きがあることがうかがえる。

 新たな層が街に入り込むことで電気街というカラーが相対的に薄れることを危惧する声もあったが、PCパーツショップの中でも「今のアキバはTX秋葉原駅の開通などでターミナル駅の役割が強くなっています。あらゆる人が便利に使えるということを考えると、女性向け施設は必要でしょう」という冷静な意見も聞いた。

 なお、従来どおりのアキバ色を強める店舗もオープンしている。代表的なのは、4月5日、俺コンハウス跡地に建った「まんだらけコンプレックス」だ。また、4月25日には、エバーグリーンが経営するデジモノ系雑貨店「むだや」の1階に同社のネットショップで有名な「上海問屋」が入店している。

「chomp chomp AKIHABARA」を見上げる筆者とライター藤山哲人氏(写真=左)。黒塗りのビルが目印のまんだらけコンプレックス(写真=中央)。激安メモリカードなどで有名となった「上海問屋」。地下一階には「むだや」が入る(写真=右)

突然起きた事件――「秋葉原連続殺傷事件」の以前/以後

1週間後の事件現場。トラックが突っ込んだ部分にはオレンジのネットが被せられていた

 2008年6月8日の日曜日、歩行者天国で人が賑わう秋葉原電気街で事件が起こった。一人の男による「秋葉原連続殺傷事件」という凶行は、大手メディアに取り上げられ、多くの人々の関心を集めていく。話題は犯人の異常性から、派遣労働者の環境、秋葉原という街の特殊性にまで及び、答えのない問いに仮の答えをつけていくような流れが作られていった。

 この事件による街の変化は大きかった。日曜日と祝日に行われていた中央通りの歩行者天国は中止となり、街には巡回する警察官が明らかに増えた。事件現場の側には献花台が置かれ、秋になって場所を移したあとも献花は途絶えなかった。献花台が撤去された12月末にも、現場の交差点には花が供えられている。

 事件前、秋葉原の歩行者天国にはパフォーマーやメイドさんがあふれ、それらを眺める多数の人に中央通りが埋め尽くされるような状態だった。各種メディアが報じ全国的な注目を集めたことから、アイドルの卵などが路上ライブすることもめずらしくない。そうした状況は冒頭の事件によってすべて中止に追い込まれたが、悲観する声は街では少数派だった。ある雑貨ショップの店長は「パフォーマーを喜ぶほとんどの人は観光客。人によっては、街の印象をヘンな方向に持っていく迷惑な存在と考えていた。正直、事件が起きなくてもいずれは中止になっていたと思います」と話している。

 一方、警察の巡回が厳しくなったことを気にするコメントも多かった。某PCパーツショップの店員さんは、「(店舗のユニホームである)エプロンには梱包を解くためのハサミを入れています。だけど、今はそのまま外に出ると警察に職務質問を受けて、凶器扱いされるから御法度ですね」(事件当時)と語っていた。

 2008年末の時点で歩行者天国は中止されたままだが、警察官が巡回する頻度はある程度下がった印象だ。それでも、大きなリュックを背負った男性が職務質問される光景はめずらしくない。12月末、ある飲食店のスタッフは「今の秋葉原は観光地としての価値を無視できません。今のまま地味な方向で固まるのは考え物ですよね。とはいえ、一部マニアの暴走を止められないのは困る。このあたりをうまくコントロールできる仕組みができたらいいのですが……」と、事件前の秋葉原を振り返った。

事件現場には献花台が置かれ、多くの人が訪れていた。そして警察官も多数配備されていた(写真=左)。歩行者天国中止を知らせる立て看板(写真=中央)。事件前まで行われた歩行者天国。警察がパフォーマンスを止めるように注意すると霧散するが、しばらくすると復活するといういたちごっこが繰り広げられていた(写真=右)

著者近影

古田雄介:

 アキバ探索のほかにも、家電量販店取材や人気サイトの管理人さんインタビュー、EXCEL活用法やらショールーム見学など、いろいろやっているフリーライター。

「秋葉原はさまざまな要因で大きく変化します。大規模な駅前再開発は2008年で一段落しましたが、2009年はどんな店舗がオープンし、どんな文化が生まれるのか。少なくとも藤山氏がいうような“ソフトSM”の街にはなってほしくないなと思う今日このごろです。あけましておめでとうございました(古田雄介のブログ)。


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