PC向けの液晶ディスプレイは、搭載する液晶パネルの駆動方式によって、TN系、VA系、IPS系という3種類に大別される。一般的には、低コストの順にTN系、VA系、IPS系、広視野角の順にIPS系、VA系、TN系といわれている(実際の画質は、パネルの世代やメーカー、コントローラの性能などにもよる)。このことから、IPS系とVA系はTN系より画質面で優位に立っている。
昨今のPC向け液晶ディスプレイはTN系とVA系が主流だ。特にTN系パネルは高解像度化と低価格化が著しく、逆にVA系は数を減らしつつある。IPS系に至ってはコストの高さがネックとなり、一部の高級機種を除いてほとんど見かけなくなってしまった。
今でもIPS系パネルの広視野角で落ち着いた表示傾向を好むファンは多い(数年前は国産IPSパネル搭載の名機がいくつか存在した)が、低価格を重視する液晶パネルの業界事情などから新しい製品が以前ほど期待できなくなり、ユーザー側としてはほとんどあきらめの境地だったといえる。筆者もその1人だ。
このように、PC向け液晶ディスプレイ市場では数が減っていたIPS系の液晶パネルだが、ここへ来て新型の“e-IPS”パネルを搭載したデルの「2209WA」が登場した。e-IPSパネルとは、LG Displayが開発した液晶パネルだ。生産ラインを小型テレビと共通化し、開口率を高めてバックライトを減らすなどの工夫で、低コスト化を図っている。
2209WAの画面サイズは22型ワイド、画面解像度は1680×1050ドット(アスペクト比は16:10)、画面の表面処理は外光反射を低減するノングレアタイプだ。フルHD解像度(1920×1080ドット)のドットバイドット表示には対応しないが、IPS系としては低コストのe-IPSパネルとデルならではのアグレッシブな価格戦略により、発売時の直販価格で2万9800円という低価格を実現した。輝点のドット抜けもカバーするプレミアムパネル保証が標準で3年間付与されているのも見逃せない。
では、基本スペックから見ていこう。輝度は300カンデラ/平方メートル、コントラスト比は標準で1000:1(ダイナミックコントラスト比は最大3000:1)だ。IPS系の液晶パネルは一般に輝度とコントラストを上げにくいといわれるが、スペック上の数値ではTN系やVA系に見劣りしない。最大発色数は約1670万色、視野角は水平/垂直とも178度だ。
応答速度は中間調(グレーtoグレー)で6msをうたう。黒→白→黒の応答速度は公開されていないが、IPS系液晶パネルの特性を考えると、階調による応答速度の差は小さいと予想される。色域は公開されていないが、実際はsRGB程度(NTSC比で約72%)で、いわゆる広色域タイプではない。
インタフェースは、アナログRGB接続のD-Subと、デジタル接続のDVI-D(HDCP対応)の2系統だ。4ポートのUSB 2.0ハブも備えているが、アップストリームポートは1つなので、2台のPCをつないだ場合にUSB切り替え器のようには使えない。4つのダウンストリームポートは、2つが背面、2つが左側面に分かれている。スピーカーは内蔵しないが、画面下部に取り付けるスピーカーユニットの「AX510」(4620円)がオプションで用意されている。
本体サイズは511.77(幅)×184.12(奥行き)×361.91〜461.91(高さ)ミリ、重量は約7.93キロとなっており、奥行きが短く設置しやすい。スタンドは上21度/下4度のチルト、左右各45度のスイベル、100ミリの昇降調節が可能で、低価格な割に可動範囲が広く、画面を設置面近くまで下げられるのが好印象だ。
さらに、画面部分を90度回転して縦長表示にする機能もある。画質面は後述するとして、視野角による色の変化が少ないので、縦位置で画像などを表示しても、画面の上下で見た目の発色が変わるような違和感はない。縦位置表示のツールなどは付属しないので、通常はグラフィックスドライバの縦回転機能を利用することになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.