Nehalem世代のCPUが「Core i7」(開発コード名:Bloomfield)として発売されてから約10カ月経った。ただ、Bloomfieldはあくまでハイエンド向けであって、メインストリーム向けのモデルは引き続きCore 2シリーズが担ってきた。日本時間の9月8日にインテルから発表された「Core i7」および「Core i5」(以後、Bloomfieldと区別するため、開発コード名である「Lynnfield」を用いる)は、Nehalemのアーキテクチャ「Intel Microarchitecture Nehalem」をメインストリームに拡充するモデルだ。今回投入されるLynnfieldのラインアップは、「Core i7 870」「Core i7 860」「Core i5 750」の3製品だ。
注意したいのは、Bloomfieldと同じCore i7という名称であっても、Lynnfieldラインアップでは「LGA1156」というCPUソケット規格が採用されていることだ。BloomfieldのLGA1366と混同しないために、Nehalemアーキテクチャを採用するモデルと従来のCore 2アーキテクチャを採用するモデルのスペックをまとめておこう。
ブランド | Core i7 | Core i7 | Core i5 | Core 2 Quad |
---|---|---|---|---|
開発コード名 | Bloomfield | Lynnfield | Lynnfield | Yorkfield |
ソケット | LGA1366 | LGA1156 | LGA1156 | LGA775 |
メモリコントローラ | 3ch | 2ch | 2ch | 2ch(MCH側機能) |
CPUコア | 4(ネイティブ) | 4(ネイティブ) | 4(ネイティブ) | 4(2+2のMCM) |
Hyper Threading Technology | ○ | ○ | − | − |
最大実行スレッド数 | 8 | 8 | 4 | 4 |
L1キャッシュ | 4×(32KB+32KB) | 4×(32KB+32KB) | 4×(32KB+32KB) | 4×(32KB+32KB) |
L2キャッシュ | 4×256KB | 4×256KB | 4×256KB | 2×(6MB共有) |
L3キャッシュ | 8MB共有 | 8MB共有 | 8MB共有 | − |
EIST | ○ | ○ | ○ | ○ |
Turbo Boost Technology | ○ | ○ | ○ | − |
VT-x | ○ | ○ | ○ | ○ |
VT-d | ○ | ○ | ○ | ○ |
Intel 64 | ○ | ○ | ○ | ○ |
プロセス | 45nm | 45nm | 45nm | 45nm |
上記の表からBloomfieldとLynnfieldの違いをピックアップしていこう。両者で大きく異なるのはメモリコントローラの仕様だろう。BloomfieldではDDR3トリプルチャネルと、従来のプラットフォーム(ノースプリッジに統合されていたメモリコントローラ)より1チャネル増やされたわけだが、LynnfieldではDDR3デュアルチャネル対応にとどまっている。
また、Nehalemから導入されたIntel Turbo Boost TechnologyでもBloomfieldとLynnfieldで異なる。Intel Turbo Boost Technologyは、CPUの温度をセンサーが感知し、熱設計上限まで余裕がある場合には動作クロックを引き上げる機能だ。Lynnfieldでは5段階アップ(Core i5-750を除く)に設定されており、Bloomfieldの2段階アップよりも段数が多いことになる(この段数を“bin”と呼んでいる)。5binアップした場合、定格の動作クロックが2.93GHzのCore i7-870では3.6GHzまで上がることになるが、これはCore i7-975 Extreme Editionの2binアップと同じ値になる。
なお、LynnfieldラインアップはCore i7とCore i5に分かれるが、両者を明確に区別するのが、上記のIntel Turbo Boostのbin数以外に、ハイパースレッディングテクノロジー(HT)への対応が挙げられる。LynnfieldのCore i7モデルはHTに対応して物理コア4つで同時論理コア8つで動作するが、Core i5モデルはHTに対応しないため、物理コア4つ論理コア4つで動作することになる。
Lynnfieldに対応するチップセットは「Intel P55 Express」(開発コード名:Ibexpeak)となる。Intel P55 Expressは、Bloomfield対応のIntel X58 Expressと異なるシングルチップ構成で、CPUとチップセットの接続バスも、NehalemとIntel X58 Expressで採用されていたQPI(QuickPath Interconnect)ではなく、DMI(Direct Media Interface)が使われている。これは、Lynnfieldでグラフィックスカード用のPCI Express 2.0 x16インタフェースがCPU側に統合されたためだ。従来のチップセットでは、ノースブリッジからPCI Express x16インタフェースが出ていたため、高帯域のバスでCPUとチップセットを結ぶ必要があったが、これをCPUに統合したLynnfieldでは、CPUとチップセットの接続で高帯域のバスが不要になった。
チップセット側に残された役割は、グラフィックスカード以外で使うPCI ExpressレーンやPCI、Serial ATAといった、これまでサウスブリッジが担っていた機能になる。
なお、Intel X58 ExpressではマルチGPU技術としてAMDのCrossFireXに加え、NVIDIAのSLIにも対応していた。これはIntel P55 Expressでも継承される。もちろん、SLIに対応するのは、NVIDIAからSLI認証を取得した製品に限られる点は変わらない。とはいえ、ゲームユーザーなどには、CrossFireXのみの対応だったIntel X48 ExpressやIntel P45 Expressからアップグレードする動機として大きく影響するだろう。ただ、Lynnfieldから伸びるPCI Expressレーン数は計16レーンであるため、SLI、およびCrossFireXを構成するときは、x8レーン×2という構成になる。BloomfieldとIntel X58 Expressの組み合わせでx16レーン×2が利用できたのと比べると機能が縮小しているので、絶対性能を重視するユーザーは注意したい。
ブランド | Core i7 | Core i7 | Core i5 | Core 2 Quad |
---|---|---|---|---|
開発コード名 | Bloomfield | Lynnfield | Lynnfield | Yorkfield |
ノースブリッジ | Intel X58 Express | Intel P55 Express | Intel P55 Express | Intel X48 Express |
分類 | IOH(I/O Hub) | PCH(Platform Controller Hub) | PCH(Platform Controller Hub) | MCH(Memory Controller Hub) |
メモリ接続チップ | CPU | CPU | CPU | MCH(FSB経由:最大12.8GB/s) |
メモリサポート(Core i7/i5はCPU統合) | DDR3-1066 | DDR3-1333 | DDR3-1333 | DDR3-1333 |
メモリ最大搭載量 | 24GB | 16GB | 16GB | 8GB |
メモリチャネル数 | 3ch | 2ch | 2ch | 2ch |
PCI Express x16接続チップ | IOH(QPI経由:最大25.6GB/s) | CPU | CPU | MCH(FSB経由:最大12.8GB/s) |
PCI Express x16レーン構成 | PCIe 2.0 x16×2 | PCIe 2.0 x16×1またはx8×2 | PCIe 2.0 x16×1またはx8×2 | PCIe 2.0 x16×2 |
マルチGPUテクノロジサポート | SLI&CrossFireX | SLI&CrossFireX | SLI&CrossFireX | CrossFireX |
サウスブリッジ | ICH10ファミリ | − | − | ICH10ファミリ |
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