好調「Kindle」の死角米国電子書籍事情(1/2 ページ)

» 2010年03月23日 17時00分 公開
[登丸しのぶ/Shinobu T. Taylor,ITmedia]

 Amazon.comの「Kindle」大成功したのを受け、米国では電子書籍市場が盛り上がりを見せている。2009年の年末商戦期間に在庫切れとなっていたBarnes & Nobleの「nook」も再び店頭に姿を現し、電子書籍リーダー機能を備えた「iPad」の発売も間近に迫るなど、デバイスの選択肢も増えつつある。そんな米国から、最新の電子書籍事情をリポートする。

nookはKindleを超えられるか?

2009年のクリスマス商戦に間に合わなかった「nook」だが、2010年に入って品不足は解消し、それとともにユーザーの評価も高まっている

 Amazon.comは、2009年のクリスマス商戦において、電子書籍の販売額が通常書籍の販売額を初めて上回ったと発表した。 The Association of American Publishers(AAP)の発表によると、2009年の全米における電子書籍の売上高は1億6950万ドルに達し、2008年度比で176.6%と大幅に増えたことも、市場の盛り上がりを証明している。

 このような状況の中、これまでKindleの一人勝ちだった電子書籍リーダーの市場にも、競合製品が続々と登場している。まず、2009年10月に発売以降、年末商戦まで在庫切れの状況が続いていたBarnes & Nobleの「nook」は、2010年1月後半あたりから店頭の看板が「Out of Stock」(在庫切れ)から「Now in Stock」(在庫あり)に変わり、サービスカウンターなどで積極的にプロモーションを展開している。

デザイン的にも目立つカラーサブディスプレイは、限られたサイズの電子書籍リーダーで多彩なインタフェースを実現する

 販売スタッフも「nookこそ業界一の電子書籍リーダーだ」とカウンターで積極的に対応してくれる。一般客としてKindleと比較した優位点を聞くと、まずは、「Amazon.comの45万タイトルをはるかにしのぐ、100万タイトルという書籍数の多さ」をアピールした。また、Kindleにない特徴として、「友人などに電子書籍を14日間貸し出せる機能もユーザーは高く評価している」という。

 さらに、デバイスの下部に配置したタッチスクリーン式のカラーサブディスプレイは、デザイン性だけでなく、タッチやスクロールなどを組み合わせて目的の書籍を簡単に見つけてダウンロードできる操作性という面からも、ガジェット好きから評価されている。好みにもよるが、Kindleのキーボードより使いやすいと感じるユーザーも多いようだ。無線ネットワークは3GとWi-Fiを利用できるうえ、価格はKindleのスタンダードタイプと同じ259ドルに設定されている。米国では、今後Kindleに対してどれだけシェアを伸ばしていくのか、多くの関係者が期待とともに見守っている。

米国で健在! ソニーの電子書籍リーダー

 家電量販チェーン大手のBEST BUYでは、ソニーの電子書籍リーダーだけを取り扱っている。店頭で展示販売されていたのは、「Digital Reader Pocket Edition」(199.99ドル)とDigital Reader Touch Edition(299.99ドル)の2機種のみだった。

 ソニーは電子書籍業界のスタンダードフォーマットであるEPUBとPDFをサポートしており、独自の電子書籍サイト「Reader Store」に加え、Google Booksや公立図書館、シェアサイトや自費出版といった幅広いソースから電子書籍を入手できることを強みとしている。ちなみに、前述のnookもEPUBをサポートするが、Kindleは「AZW」という独自フォーマットを採用している。

 BEST BUYでも一般の購入希望者として販売スタッフの担当に話を聞いたが、電子書籍リーダーの詳しい知識は持っておらず、販売に積極的とはいえない感じだった。また、前述のソニーの電子書籍リーダー2モデルはワイヤレス通信機能を搭載しておらず、3G通信モジュールを搭載したReader Daily Editionは399.99ドルと、競合製品と比較すると割高だ。

 その販売スタッフは、電子書籍リーダーとして今後、「iPad」の取り扱いを予定していると教えてくれた。iPadはアップルストアでの米国発売は4月3日と発表されているが、BEST BUYとしてはiPadの取り扱いを公式には発表しておらず、販売開始時期はまだ明らかになっていない。

米国Sonyが販売する電子書籍リーダー「Digital Reader」シリーズ。左から「Touch Edition」「Daily Edition」「Pocket Edition」

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