ThinkPad X201sのプレミアムな性能を試す元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2010年04月14日 11時00分 公開
[元麻布春男(撮影:矢野渉),ITmedia]

「スペシャルの“s”!」に回帰する

ThinkPad X201より小型軽量モデルながら、画面解像度は1440×900ドットと「プレミアム」なディスプレイを搭載した「ThinkPad X201s」

 実用的な携帯性を備えて“リアルモバイル”を掲げるThinkPad Xシリーズにあって、型番の末尾に「s」がつくモデルは、“ちょっとしたプレミアムクラス”という位置付けだ。メインストリームがあえて通常電圧版のCPUを搭載するのに対し、コストパフォーマンスで不利になる低電圧版CPUを採用することでヒートシンクとファンを軽量化し、バッテリー駆動時間を延ばそうという狙いだ。これは、従来モデルのThinkPad X200sでも同じで、ThinkPad X200の標準構成では用意されない「1440×900ドットの高解像度液晶ディスプレイ」を搭載していた。

 しかし、ThinkPad X200sにおいて、こうしたポジショニングが必ずしもうまくいったわけではない。その理由の1つが「高解像度液晶ディスプレイの品不足」という問題だ。バックライトにLEDを用いた1440×900ドット対応の液晶ディスプレイは、表示可能な情報量が増えるだけでなく、ThinkPad X200とThinkPad X200s世代で従来モデルから100グラム以上の軽量化実現にも貢献した。当然、リリース直後から多くのユーザーにオーダーされることになったが、その数に供給が追いつかず、たびたび納期が延長されただけでなく、レノボのダイレクトショップにおいてすら受注が停止して、購入したいユーザーを失望させることも少なからずあった。

 もう1つの誤算は、インテルからコンシューマー向けの低価格超低電圧版(CULV版)CPUをメインとしたプラットフォームが登場したことだ。Atomを搭載したNetbookのヒットで、低価格モデルならモバイルPCでも一定の需要があることを認識したインテルは、Netbookとそれまでの標準的なノートPCを埋めるものとして、超低電圧(ULV=Ultra Low Voltage)版CPUを用いた低価格なコンシューマー向けノートPCプラットフォームを出荷し、これまで比較的価格が高かったULV版CPUと対応チップセットが安価に供給されるようになった。

 コンシューマー向けとはいえ、価格を抑えることができるプラットフォームの登場は、ビジネス向けの製品でもモバイル利用を重視するノートPCの構成に影響を与えた。そして、コンシューマー向けの安価なULV版CPUとして登場したCeleronやCore 2 Soloを、ビジネス向けモバイルPCでも採用する製品が登場するようになる。

 その代表例の1つがThinkPad X200sだ。レノボ・ジャパンは、CULV版のCeleron 723を搭載したThinkPad X200sの価格を5万円台に設定したため、価格の点でThinkPad X200を大幅に下回ることになった。ThinkPad X200sは、型番末尾に“s”であるのに、プレミアムであるどころか安売りモデルとなってしまったのだ。低価格で登場する競合のCULVノートPCへの対抗策として、既存のThinkPad X200sにラインアップを追加したことでThinkPad Xシリーズのマーケティングが混乱してしまった。

X201sはプレミアムモデルに軌道を修正

 2010年2月にモデルチェンジしたThinkPad X201sで、レノボ・ジャパンはこの混乱を元に戻そうとしているようだ。

 ThinkPad X200sでは一部のモデルだけだった1440×900ドットの液晶ディスプレイはThinkPad X201sの全モデルで標準となり、さらに、搭載するCPUは低電圧版のCore i7-640LMのみとなった(将来的に下位クラスのCPU搭載モデルが追加される可能性はあるが)。逆に、X201に下位クラスCPUを搭載したバリューモデル(といってもCeleron 723を搭載したThinkPad X200sほど極端な低価格ではないが)として、「ThinkPad X201i」が追加されている。このように、ThinkPad X201とThinkPad X201sの価格を比べて、ほとんどの場合でThinkPad X201sがThinkPad X200を上回るようになった。2010年4月上旬現在、同社ダイレクト販売における最小構成価格(お勧めモデル)は、ThinkPad X201iが10万4790円、ThinkPad X201sが14万9940円となっている。

 レノボ・ジャパンの商品ラインアップでCULV版CPUを採用したモバイルノートPCとしては、IdeaPad U150シリーズやIdeaPad U350シリーズが存在する。ビジネス向けのラインアップでも、ThinkPad Xシリーズの下位クラスにAMDのプラットフォームを搭載したThinkPad X100eが加わっている。サイズが大きくてもかまわないユーザーなら、液晶ディスプレイに13型ワイド、14型ワイド、15.4型ワイドを搭載したThinkPad Edgeシリーズもある。日本での販売は未定だが、ThinkPad Edgeにはインテルプラットフォームを採用したモデルも米国では発表されている。ThinkPad X201sにCULV版Celeronを搭載してまで、価格を抑える(価格競争を行う)必然性はなくなったともいえるだろう。

12.1型ワイド液晶ディスプレイで1440×900ドットの解像度を実現した。これはThinkPad X201を上回るスペックだ(写真=左)。キーボードはThinkPadシリーズ伝統の配列を採用。主要キーのピッチは19ミリを確保している(写真=右)

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