「Sandy Bridge」のCPUコアが“整然と”並ぶ理由とはIntel Developer Forum 2010(2/3 ページ)

» 2010年09月14日 18時51分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

さらに突き抜けるTurbo Boost Technology

 また、IDF 2010では、Turbo Boost Technologyがさらに進化したことも紹介された。2008年に登場したノートPC向け“Penryn”で初めて採用されたTurbo Boost Technologyは、未使用のコアがある状態でほかのコアの動作クロックを一時的に上昇させ、CPUの性能を引き上げる技術だ。

 Nehalem世代では、ダイ1つ当たりのコア数が4つになったことで、Turbo Boostに複数の段階が設けられるようになり、1コアだけを使用している場合に動作クロックを大幅に引き上げることが可能になった。Westmere世代ではCPUコアとGPUコアが1つにパッケージングされたことで、両者の発熱量と電力使用量を監視しながら、GPUコアの性能を引き上げる「Intel HD Graphics with Dynamic Frequency」が導入された。

 Sandy Bridgeでは電力制御技術がさらに強化されて、デュアルコア動作状態とクアッドコア動作状態、ならびに、GPUコアを含めたすべてのコアに対してTurbo Boost Technologyが有効になるほか、従来と比べてTurbo Boost Technologyにおけるピーク性能が向上する。

CPUコアとGPUコアともにTurbo Boost Technologyに対応する。Sandy BridgeではTurbo Boost Technologyで4コア同時のクロックアップが可能になっているのに加えて、Westmere世代よりも“伸びしろ”が増えている(写真=左)。CPUコアとGPUコアが1つのダイに統合されたことで、電力や熱のより細かい制御が可能になっている。この電力と熱の精度の高い制御がSandy Bridgeにおける大きなポイントの1つといえる(写真=中央)。CPUの世代ごとにTurbo Boost Technologyの特徴をまとめる。Nehalem世代から大きく進化していることが分かるだろう(写真=右)

Sandy Bridgeに導入される機能のうち、IDF 2010で明らかになったのが、Advanced Vector Extension(AVX)命令のサポートと、PCI Express x16スロット1基、もしくは、PCI Express x8スロット2基による外付けGPUのサポート、そして、デュアルチャネルによるDDR3インタフェースだ

 以上が、IDF 2010で紹介されたSandy Bridgeに関する新しい情報だ。そのほかの機能についても、外付けのディスクリートGPU(dGPU)の搭載が可能なこと、「Advanced Vector Extension」(AVX)と呼ばれるベクトル演算命令が追加されて、対応アプリケーションでは最大で従来から2倍のパフォーマンスを発揮できること、そして、メモリインタフェースはDDR3を2チャネルで利用できることなどが紹介された。

 興味深いのは、プロセスの微細化とキャッシュメモリとの連携した高速なリングバスによって、内蔵するGPUが高速化されたとはいえ、依然としてハイエンドの外付けGPUに性能が及ばないことだ。Intelによれば、「ハイエンドゲームなどではなく、あくまで一般的な用途を想定」したのがSandy BridgeのiGPUであり、DirectX 11などの最新フィーチャーに対応したゲームを動かすには、外付けのGPUが必要になるという。

 どちらかといえば、これまでローエンドなGPU性能しか提供できなかったモバイル利用を重視したノートPC、または、液晶一体型PCにおける機能強化を目指したといえるだろう。

整然と並ぶ理由は柔軟なコア数変更のため

マイクロアーキテクチャにおけるSandy Bridgeの改良点。GPUの変更が注目されがちなSandy Bridgeだが、CPUコアでも細かい改良を行っている。Intelによると、このあたりの機構はスクラッチから起こしているという

 当初、Sandy Bridgeの内部構造はNehalemアーキテクチャから大きく変更していないとみられていたが、実際には、多くの部分でスクラッチから起こされているため、かなり細かい改良が施されていると思われる。IDF 2010の技術セッションでは、米Intelのシニアプリンシパルエンジニアのボブ・バレンタイン氏と米Intelフェローのトム・ピアッザ氏が、Sandy BridgeにおけるCPUコアとGPUコアの改良点について解説していたが、キャッシュメモリを利用した分岐予測処理の効率化など、高速処理と省電力化に向けた数多くの改善が行われていると述べた。このことからも、Sandy Bridgeがパフォーマンスと省電力という相反するメリットを同時に実現しているのが分かる。

基本的にはWestmere世代で採用されたGPUコアの延長だが、Sandy Bridgeに搭載されたGPUコアは第2世代として細かい改良が加えられている(写真=左)。これまで別々に開発を進めてきたCPU設計チームとGPU設計チームだが、Sandy Bridgeでは初めて密接に連携して1つのダイを作り上げた(写真=中央、右)

 Sandy Bridgeの技術セッションでは、米Intelのシニアプリンシパルエンジニアでイスラエルチームのオファー・コウ氏が登場し、CPU全体の設計思想や特徴について解説している。そこでは、Sandy Bridgeの特徴的なCPUコアとキャッシュが整然と並んでいる構造についても言及され、その理由が最小限の設計変更でコア数の増減を可能にするためだと説明された。

 Sandy Bridgeの基本デザインはクアッドコア構成だが、これを2つに減らしたデュアルコアデザインにすることも容易だ。これによりローエンドのデスクトップPCやノートPC、液晶一体型PC向けのCPUを短期間でカバーできるようになる。

Sandy Bridgeが、長方形型でCPUコアとキャッシュが整然と並ぶ構造を採用する理由は、最小限の修正でクアッドコアやデュアルコアが設計できる点にある。Sandy Bridgeでは、デュアルコア用のコンフィグも開発の最初から念頭に置いており、ローエンドデスクトップPCやノートPC向けに、Sandy Bridgeのデュアルコアモデルが比較的早い時期にリリースされることが予想される。現在は言及していないが、6コアのハイエンド版もそう遠くない時期に発表される可能性がある

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