「U3011」実力診断――デルの30型ワイド液晶ハイエンドモデル広色域IPSパネル、WQXGA、7系統入力(2/3 ページ)

» 2010年09月24日 16時15分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]

豊富な画質モードとスケーリング機能を用意

 OSDメニューの操作は、液晶ディスプレイ部の右下に用意された5つのLED付きタッチセンサーボタンを用いる。一番下のボタンに触れると、プリセットの画質モード、輝度/コントラスト、入力信号の切り替え、OSDメインメニューの4項目が並んだルートメニューが表示され、ここから各設定メニューにアクセスする仕様だ。

ルートメニューに表示されるOSDメインメニュー以外の項目は、ユーザーがカスタマイズできる

 U2711も同様の仕様だが、設定作業の入口が統一されて分かりやすい半面、メニュー階層が深くなる一長一短な設計といえる。ルートメニューに表示されるOSDメインメニュー以外の項目は、ユーザーが任意のものに変更できるため、利用頻度の高い項目があれば、カスタマイズして使いたい。もっとも、OSDメニューのレスポンスはよく、設定作業自体は手軽に行える。

 OSDメインメニューには、輝度/コントラスト、アナログ接続時の画面自動調整、入力信号切り替え、色設定、画面設定、音の設定、PBP(ピクチャーバイピクチャー)設定、そのほかの設定、カスタマイズといった多くの項目があり、タブを切り替えながら各設定を行う。

 プリセットの画質モードはルートメニューのほか、色設定のメニューからも切り替えられる。画質モードは標準、マルチメディア、ゲーム、ムービー、暖色、寒色、Adobe RGB、sRGB、XV(xvYCC)モード、カスタムカラーとなかなか多彩にそろえている。このうち、カスタムカラーのみユーザーが独自に色を調整可能だ。それも、一般的なRGBゲインの調整に加えて、オフセット、色相(RGBCMY)、彩度(RGBCMY)の6色調整機能が設けられているのは目を引く。

 また、色設定メニューには入力カラー形式(RGB/YpbPr)、ガンマ(PC/Mac)の設定も用意されている。さすがにこのクラスのディスプレイでは、ガンマや色温度の数値での設定メニューが欲しいところだが、プリセットの画質モードが充実しているため、これを積極的に活用したい。

カスタムモードも含めると、プリセットの画質モードは10種類と充実している
色設定メニューでは、入力カラー形式(RGB/YpbPr)やガンマ(PC/Mac)の設定も可能だ

 画面設定メニューでは、表示領域やシャープネス、ノイズ軽減、ダイナミックコントラスト、スケーリングなどの設定を行う。スケーリングの設定は「ワイドモード」のメニューから、全画面、16:9、4:3、縦横比、1:1の設定が選べる。これにより、低解像度の映像をドットバイドットで小さく表示したり、4:3映像や16:9のフルHD映像を正しいアスペクト比で表示することが可能だ。

 別々の入力系統からの映像を左右に並べて同時表示するPBP機能は健在だ。PCとビデオ機器の表示が同時に行える便利な機能だが、各画面のアスペクト比はスクエアに固定されるため、ワイド画面は縦に伸びてしまう。上下の黒帯領域が大きいのも少し残念だ。欲をいえば、親画面の一部に子画面を小さく表示するピクチャーインピクチャー(PIP)機能も欲しかった。

スケーリングは「ワイドモード」のメニューから、5種類の設定が選べる
PBP機能のオン/オフや設定もOSDメニュー内で行う仕組みだ
PBP機能で左にコンポーネントビデオ、右にDVI-Dの映像を表示した例。ワイド画面は縦に伸びる

ソフトウェアキャリブレーションでガンマと色再現性を確認

 さて、実際の表示性能をキャリブレーターで客観的にテストしてみた。ここではエックスライトの「i1Pro」(製品パッケージとしては「i1Basic」)を用いたソフトウェアキャリブレーションの結果と、作成したモニタプロファイルの色域を図示し、ガンマの精度と色再現性を見ていくことにする。

 プリセットの画質モードは多数あるが、色再現性を求める用途で使用頻度が高いと思われるsRGBモードとAdobe RGBモードを選択した。これらのモードは出荷時に個別調整を行っているだけに、期待が持てそうだ。両モードではOSDメニューからの色調整ができないため、測定前には輝度とコントラストのみ調整している。

 まずはガンマ補正の結果だが、下図はRGBの入力と出力が1:1の直線を描いていることが望ましい。RGBの各線がずれていると、グレーのバランスが崩れ、色かぶりなどの問題が発生しやすくなる。U3011のAdobe RGBモードでの結果は、シャドーで小さなズレが見られるものの、中間からハイライトまではほぼ直線でRGBの各線が重なった。sRGBモードでの結果はシャドーとハイライトで少しズレが出ているが、広色域パネルでエミュレートしてsRGB色域を出している割には、全体的に安定しており悪くない。Adobe RGBモード、sRGBモードともなかなか良好な結果といえる。

U3011をAdobe RGBモードに設定し、輝度を120カンデラ/平方メートルにセットした状態で、i1Proによるソフトウェアキャリブレーションを実施した結果。輝度は目標値をオーバーしている。ガンマはシャドー側にわずかな乱れが見られるのみで、RGBともほぼ直線を描いている
U3011をsRGBモードに設定し、輝度を80カンデラ/平方メートルにセットした状態で、i1Proによるソフトウェアキャリブレーションを実施した結果。輝度は目標値を大きく超えてしまった。RGBのガンマは明部に向かってズレていくが、全体的なバラツキは少なく、十分に合格点を出せる

 色域の検証では、Mac OS XのColorSyncユーティリティを用いて、sRGBおよびAdobe RGBの各規格と、i1Proで作成したモニタプロファイルの比較を行う。下図の薄いグレーの部分がsRGB規格およびAdobe RGB規格の色域で、色の付いている部分がi1Proで作成したU3011のモニタプロファイルが示す色域だ。つまり、薄いグレーの領域とカラーの領域がピタリと重なれば、それぞれの色域の再現性が高いことを意味する。

 Adobe RGBモードのテスト結果は、このクラスの広色域ディスプレイとしてはよく見られる傾向だ。青から緑の深い領域と赤のごく狭いエリアが足りていないものの、ほかのエリアはほぼ完ぺきに再現できている。sRGBモードのプロファイルは、緑と赤のピークがややズレているが、ほぼ全域をカバーできている。

Adobe RGBモードでキャリブレーションして作成したプロファイルをColorSyncユーティリティで読み込んだ例。Adobe RGBの色域は下に薄いグレーで重ねて表示した。ほぼ全域をカバーできており、Adobe RGBをベースとした環境でも十分に運用できると思われる
sRGBモードでキャリブレーションして作成したプロファイルをColorSyncユーティリティで読み込んだ例。sRGBの色域は下に薄いグレーで重ねて表示した。赤からオレンジの狭いエリアと、緑から青にかかるエリアがカバーできていないが、色域はsRGBにほとんど重なっている

 このように色再現性はかなり高いレベルにあるU3011だが、難点は輝度の下げ幅がかなり狭い点だ。輝度を最低レベルまで落としこんでも、135カンデラ/平方メートル前後の高輝度で表示されてしまうため、Adobe RGBモードやsRGBモードで輝度を80〜120カンデラ/平方メートル程度に固定したくてもできなかった。フォトレタッチやDTPの現場では輝度を下げて使うことが多いため、低輝度で安定した表示が行えるよう、今後の改良を望みたい。

ディスプレイキャリブレーションの基本キット「i1Basic」

「i1Basic」

 エックスライトの「i1Basic」は、測色器の「i1Pro」が付属し、ディスプレイのキャリブレーションに機能を特化したパッケージだ。名前の通り、i1シリーズの中ではエントリーモデルにあたるが、i1Proはスペクトル方式を採用した測色器で、フィルター方式のエントリーモデル「i1Display 2」に比べて、検出精度がかなり高い。同じくスペクトル方式の「ColorMunki」と比較しても、さらに高い精度が得られる。

 i1Basicをベースとして、より高度なカラーマネジメント環境を構築したい場合は、必要に応じてソフトウェアの機能を拡張することも可能だ。

 日本国内では加賀電子が取り扱っており、クリエイター向けオンラインショップ「KGDirect」や「CGiN」で購入できる。両サイトでのi1Basicの価格は16万9800円だ。i1シリーズの製品紹介サイトはこちら



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