下り最大40MbpsのWiMAXのライバル規格と目されるのが、イー・モバイルが提供している、下り最大42MbpsのDC-HSDPAだ。数字だけを見るとDC-HSDPAの方が速いが、ビットエラーを考慮した“正しい数字”で比べると、WiMAXの方が速いという。移動体通信では電波の干渉などで多数のビットエラーが生じ、受信側でエラー訂正を行う必要がある。「無線通信ではビットエラーは必ず起こるので、エラー訂正が必須」(要海氏)
WiMAXの40Mbpsは、(6ビットの情報を伝達する)64QAMの変調方式で6分の5の符号率(エラー訂正あり)という条件で出したもの。一方、DC-HSDPAの42Mbpsは、64QAMの変調方式で6分の6の符号率(エラー訂正なし)という条件で出したもの。したがって、WiMAXの通信速度をエラー訂正なしで考えると、(1.2倍の)48Mbpsとなる。逆にWiMAXの40Mbpsを基準にすると、DC-HSDPAの速度は(1.2で割った)35Mbpsということになる。
要海氏は、WiMAXならではの特徴として以下の5点を挙げた。
MIMOは、受信機と送信機に複数のアンテナを用いて、データ送受信可能な帯域を広げる技術。16eでは2×2 MIMO、16mでは4×4か8×8 MIMOが標準的な仕様だが、「端末に8本のアンテナを入れるのは物理的に難しいので、現実的には4×4 MIMOになる」(要海氏)。
OFDMA(直交周波数分割多重接続)は、無線リソースを高密度で利用できるのが特徴。16eでは850本の周波数をデータ伝送に割り当てられるので、1回路のクロック速度を低減でき、信号処理の精度が上がる。DC-HSDPAと比較した場合、DC-HSDPAが2つの信号を使うのに対し、WiMAXは1024の信号(サブキャリア)を使って通信をするので、「信号処理の精度はWiMAXの方が圧倒的に高い」と要海氏は話す。「同じ帯域で同じデータを送っても、OFDMAの方が正確に届けられる」
良好なエリア構築について、エリア品質を図る指標は電波の強さを示す「RSSI」のほか、電波のクリアさを示す「CINR」も重要になる。CINRは、受信信号に含まれる雑音と干渉電力を示すもの。信号に雑音が含まれると、振幅(電波の強さ)にブレが生じ、ビットエラーの原因となる。WiMAXでは信号を1024回送るので、DC-HSDPAよりも雑音が収束しやすく、高いCINRを維持できる。
現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの4社は、一部のユーザーが回線を占有する状況を防ぐために、帯域制御(通信速度制限)を実施している。例えば、イー・モバイルは24時間に300万パケット(366Mバイト)以上の通信をするユーザーを対象に、当日21時〜翌日2時の通信を制御している。
一方、UQは帯域制御は実施していない。要海氏は「速度制限をすればネットワークは助かるが、WiMAXの差別化要素をなくすことになるので、なるべくやりたくない。不公平感を生じない方策を検討する」との姿勢を示した。「他社は一般道だが、WiMAXは(広帯域なので)高速道路を使っている。当分は帯域制限はしない」(野坂氏)。
WiMAX 2やLTEの次世代通信にとって、高速化は生命線ともいえる部分。WiMAX 2で目指す“無線で100Mbps”を実現できれば、インターネットに新たな世界をもたらすことはもちろん、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器に与える恩恵も大きい。その世界を一足早く体感したいという人は、CEATEC JAPAN 2010で実施されるWiMAX 2の公開デモを見学してみてはいかがだろうか。
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