ぼくがかんがえた ゆめのこんぴゅーた 「Pandora」2年越しの希望(2/2 ページ)

» 2011年01月18日 12時30分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
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まずはPandoraをセッティング

 PandoraはOSにLinuxディストリビューションであるAngstrom-Linuxを採用し、GUIとしてXfce4とPandora独自のMiniMenuを搭載する。Pandoraのアプリケーションは個々にPNDという独自のパッケージ形式にまとめられており、単にダウンロードしたPNDファイルを、下の表で示したSDメモリーカード内のディレクトリにコピーすればよい。配置したディレクトリによってメニューに表示されるか、デスクトップに表示されるかが決まる。また、アプリケーションが利用するディレクトリとして/pandora/appdata/も作成しておく。

ディレクトリ Minimenu Xfceメニュー Xfceデスクトップ
/pandora/apps/
/pandora/desktop/ ×
/pandora/menu/ ×
AngstromのWebサイト(画面=左)。MiniMenuはPandora独自のインタフェースだ。1つのアプリを切り替えて使うスタイルになっている(画面=中央)。Xfceはフル機能のデスクトップ環境。複数のアプリを同時に使いたいときはこちらがおすすめ。MiniMenuとXfceの切り替えはSwitch GUIでいつでもできる。なお、スクリーンショットではフォントをデフォルトからみかちゃんフォントに変更している(画面=右)

アプリケーションの配布元の1つ、OpenAppStore。Pandoraからのアクセスを考慮したデザイン。デフォルトのWebブラウザはmidoriだが、かなり不安定なのでchromiumなどを使用したほうがよさそう(画面=左)。GP2Xでも活用されていたFile Archive。こちらのほうが数は多いがすべてを網羅しているわけではない(画面=中央)。オフィシャルサイトで配布されているCommunity Codec PackageにはGnome-Mplayerが含まれているのでまずはこちらから。ダウンロード後、SDカードの/pandora/desktop/などにコピー、実行する(画面=右)

 Pandoraのユーザー用ストレージはSDカードなので、カードリーダー/ライターを使ってPCから書き込み、Pandoraで読み込む、という手法が使えるが、PCとPandoraをUSBで接続すれば、マスストレージクラスとしてPCからSDカードをマウントすることができる。

 また、Pandoraには無線LANとBluetoothが内蔵されているものの、技適を取得していないために日本国内で利用すると電波法違反となる。そこで今回はプラネックス製のUSB−有線LANアダプタ「GU-1000T」を利用した。基本的には接続するだけで認識するが、静的にIPアドレスを指定している場合はifconfigコマンド、DHCPを利用している場合はdhclientコマンドを実行する必要がある。ネットワークがつながればssh/sftpが利用できるようになる。

USBケーブルでPCと接続後、メニューからSystem > SD-MassStorageを選択してマウントしたいSDカードを選択する。PC側からはマスストレージクラスとして認識される。その間、Pandoraからは認識されない(画面=左)。sshdはデフォルトでは無効となっている。Settings > StartupからStartup Managerを起動し、Enable/Disable services on bootから有効化させる(画面=中央)。「FileZilla」などのSFTPクライアントや「Teraterm」などのssh対応端末が利用可能だ(画面=右)

音楽プレーヤーの「Exaile」(画面=左)。動画プレーヤー「Gnome MPlayer」。現在はDSPに対応したプレーヤーがないため、H.264の再生は厳しい。Xvidであれば快適に再生できる(画面=中央)。リモートデスクトップクライアントの「Remmina」(画面=右)

CPU-Speedで標準の500MHzから900MHzまでオーバークロックできる。ただし、本来のスペックを超える600MHz以上では警告が表示される(画面=左/中央)。GP2Xと比較するとデスクトップ環境が動作するということもあってLinux機としての色合いがかなり強い。ユーザマニュアルは必読だ(画面=右)


 以上、駆け足でPandoraの概要を見てきた。次回はじっくりとPandoraを試用したうえで、その活用方法や小技を紹介していこう。

 なお、Pandoraはファーストバッチの4000台がすでに予約完売となっているが、ファーストバッチ生産終了後、すぐにセカンドバッチの生産が開始される予定だ。ただし、本体の組み立てはほんの数人が手作業で行っている状態であり、数カ月は待たされることになる。また、先払いしか受け付けていないこと、ファーストバッチよりもやや値上がりして、現在の価格が349米ドルとなっていることも注意が必要だ。

 しかし、それでもなおこの「ゆめのこんぴゅーた」に心動かされた人は、sales@openpandora.org にオーダーすればセカンドバッチの予約ができる。日本に正規代理店がないため、英国に直接オーダーしなければならないというハードルがあるものの、かなり稚拙な英文でも親切に受け付けてくれる。

コラム:Pandora狂想曲 第1章(2)

 本当に欲しいものを自分たちの手で作ろう――Craigの呼びかけに賛同者はすぐに集まった。

 2007年12月、Craig同様、ドイツのディストリビュータであるEvilDragon(@evildragon1717)ことMichael Mrozek氏、トルコのmfk(@_mfk)ことMehmet Fatih KILIC氏は「夢のオープンソースハンドヘルドコンピュータ」を作り上げるため、GP32X.comのフォーラムで意見を募る。その反響はすさまじく、数千のリプライが寄せられた。

 実際、これらの提案によってPandoraに実装された機能は、Bluetooth、アナログスティック、マイク、バッテリーの大容量化など多岐に渡る。小さなボディにこれでもかと詰め込まれた要素は、Pandoraチームに託された多くの人の夢そのものでもあったのだ。もちろん、そこにはCraigたちのこだわりもある。GP32やGP2Xとの決定的な違い――Pandoraがキーボードを搭載している理由の1つは、大好きなAmigaをエミュレーションするためだった。

 当初、基板設計には中国の会社を使ったが、彼らはメディアプレーヤーやゲームコンソールに“悪い意味”で慣れきっており、新しいチャレンジングなガジェットを作り上げるという発想力に欠けていた。

 結果的に2万ドルをむだにした後、Craigたちは英国でパートナー探しを始める。しかし、英国では1万ポンド以上の取引でなければ商談に応じない企業か「頭のおかしい奴が来た」と思われるかのどちらか――あるいはその両方だった。

 企業では自分の思い通りのマシンはできない。だが個人ではマシンを作り上げることすらできない。八方ふさがりかと思われたそのとき、Craigに1通のメールが届く。差出元はテキサス・インスツルメンツだった(つづく)


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