コラム
» 2011年03月01日 11時46分 公開

驚くべきは中身か外見か:新型「MacBook Pro」を眺めて思う本当のすごさ (2/3)

[林信行,ITmedia]

ユニボディは、なぜそれほどすごいことなのか

 ノートPCで求められているのは、できるだけ高い性能とできるだけ大きな画面をできるだけ軽く持ち運び(つまり大きく薄くがいい)、できるだけバッテリーを長持ちさせること(できるだけ内部に空間があったほうがいい)、それでいて落としたりつぶされても大丈夫なようにしっかりとした頑丈さを持たせる(つまり内部の空間をしっかりガード)することだろう。

 一般には余計なパーツが1つ増えれば、その分だけ壊れやすくなるし重みも増すから、できるだけパーツを減らすのが理想だ。そこでアップルがたどり着いた究極の答えが、1枚のアルミパーツにほとんどすべての機能を持たせてしまうというユニボディのアプローチである。

 基盤をホールドするシェルとしての役割、本体内部の熱を拡散する役割、キーボードがタイプしやすいようにしっかり支える役割など、これまでは別々の部品で成り立っていた各機能が、1つの考え抜かれたパーツに集約されている(「Objectified」というドキュメンタリー映画の中で、ジョナサン・アイブ氏は初めてユニボディを採用したMacBook Airのパーツを手に、6つもの機能を集約したと語っている。MacBook Proでは、もっと多そうだ)。

 製品の強度を増すため、あるいは温度を下げるために、そうした機能を満たすパーツを追加していくというのは、どこの会社でも普通に行っている正攻法のデザイン・プロセスだろう。これに対して、同じ機能をより少ないパーツで実現する方法を模索するというのは、はるかに難しく、深いデザインプロセスといえる。

 しかも、それだけの機能を持ったパーツを1枚のアルミの板から削り出し、月産約100万台規模で量産をする体制まで整えてしまうのだから、まさにすごいとしかいいようがない(直近四半期の3カ月間にアップルは290万台のノート型Macを売っているので、これはそこから予想した数字)。

 しかもそのデザインが、本体内部の技術革新のために1から作り直しや修正を加えなければならないものでなく、今回のMacBook Proのように、中のチップや基板や接続技術がまったく違う世代の新技術に変わっても、同じボディを使い続けられるというのだ。もちろん、先にユニボディの既成ボディありきで、ハードウェアの設計の側で、それにあわせた部分はあるのだろうが、それにしてもすごいことではないか。

 これができたのは、アップルが“超垂直統合型企業”で、今回はインテルと交渉して新世代の周辺機器接続ポートのデザインにまで関わったからこそ実現できたことだ。ちなみに“超垂直統合型企業”というのは筆者が勝手に作った言葉だが、既成の基板に本体のガワだけくっつけて売るような、もはやマニアックなニュースサイトでさえ分解記事を載せようとしないPCが多い中、基板やいくつかのカスタムチップまでを自ら設計し、「一体中がどんな風になっているのか、どんな作りなのか」が気になってしょうがない、本体の中身もカタチにも、そこに必要な部材の調達の仕方や加工の仕方にまで信じられないほどのこだわりを見せるメーカーのことだ。

 これだけでも驚くべきことだが、さらに今となっては、唯一ハードウェアだけでなく、OSもアプリケーションも自ら開発している会社のことである。さらには、顧客に直接接して商品を売り、ジーニアスバーを通して顧客の相談に乗り、そのおかげで製品のどこが顧客にとって問題となっているかに1番耳を傾けている会社でもあり、それを新しい製品に最も効果的に反映している会社でもある。

 そして、十数年前のFireWire(IEEE1394)やMini DisplayPort、今回のThunderboltのように、ユーザーのニーズが分かっているからこそ、製品への搭載が必要な次世代の標準規格の開発にまで関わり、世界展開している製品を通して、そうした新規格を一気に世界に広めていくメーカーのことだ(無線LANにしても、USBにしても、世界に広めたのはアップルだということに異論をはさむ人は少ないだろう)。

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