MSIの「WindPad 110W」で、タブレットPCで使うZ-01とWindows 7の可能性を考えたようやくまともに楽しめそう(2/2 ページ)

» 2011年08月17日 12時08分 公開
[林.佑樹,ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

独自に用意したインタフェースで操作環境を向上

 MSIは、タブレットPCのための独自デバイスとして「スマートトラッカー」を用意した。これは、ポインティングデバイスに相当するもので、本体を正面から見て右側に配置されている。指の腹でマウスカーソルを操作する感覚になる。ボタンのように押し込むと「左クリック」として認識されるので、両手で本体を持ったままでもタブレットPCの操作が行える。スマートトラッカーがないタブレットデバイスでは、左手で本体を持って右手でタッチ操作となるが、約850グラムという本体の重さを片手で持って作業をするのは負担が大きい。そういうタブレットデバイスで両手持ちができるのは、作業効率という意味でも効果がある。

 液晶ディスプレイ回りにあるフチの幅は、22〜25ミリで、持って操作するときに指を置くスペースが十分に確保できている。そのため、親指で本体をホールドしてもタッチパネルに触れることはなく、操作もしやすい。また、末端部に傾斜を持たせて、本体の角を持ったときに刺さる感じがしないなど、使い勝手を考慮した工夫が施されている。

 スマートトラッカーの下には「ホットキー」が3つ用意されている。上から「O-key」と2つの「ホームキー」だ。O-keyを押すと、「O-Easy」というMSIが用意した独自のアプリケーションやユーザーが導入したアプリケーションなどを配置できるランチャーが表示される。本体搭載カメラの起動だけでなく、輝度の変更や無線LANのオンオフなど、スマートフォンでよくある機能がタブレットPCでも利用できるようになる。

 ホームキーは、デスクトップ画面ではO-Easyへのアクセス、全画面時にはデスクトップ表示という役割になる。評価機材にはアプリケーションがごくわずかしかインストールされていなかったため、実際の利用を想定した評価はできなかったが、WindPad 110Wの操作感はスマートフォンに近いと思っていい。なお、一番下にあるホットキーには「Crtl+Shift+Delete」が割り当てられている。意外と押してしまいそうになるので、いろんな意味で注意したい。

液晶ディスプレイを囲むフチの幅は22〜25ミリ。親指を置いてもタッチパネルに触れないため、誤操作の原因になりにくい(写真=左)。MSIが独自に用意したユーザーインタフェース。上から「スマートトラッカー」、「O-key」、「ホームキー」、「ホットキー」。スマートトラッカーはトラックポイントに近い感覚で扱える(写真=右)

“スマートトラッカー”でマウスがなくても操作は快適

 Windows搭載タブレットで気になるのはタッチパネルの反応だ。Windows 7は比較的タッチ操作を考慮しているが、それでも、いままで登場したタブレット“PC”のイメージから“もっさりじゃないの?”という印象が先行してしまう。評価作業においても、タッチ操作だけの操作では使いやすいとはいえない。使い勝手では、iOSやAndroidのタブレットデバイスに及ばない。

 ただ、スマートトラッカーを使うことで快適になる。WindPad 110Wはスマートトラッカーとタッチ操作の併用でWindows 7をマウスなしでも実用に耐えうる操作感を実現できたといえる。マウスカーソルの移動と左クイックはスマートトラッカーを使い、Webブラウズやフォルダ間の移動はタッチ操作と使い分けすると、思った以上に扱いやすくなる。なお、タッチパネルの反応はよく、位置ズレも遅延もあまり感じない。スマートフォンのユーザーもストレスなく操作できるだろう。

Z-01は日常用途で十分なパワーを実現

 ベンチマークテストの結果を見るに、やはり、グラフィックスの結果が優れている。Radeon HD 6250の性能を考えると、1.0GHz動作のデュアルコアCPUが足を引っ張っているようにも感じたが、GPU支援機能の恩恵が得られるアプリケーションを使う場合は、ビジネスシーンでも不足はない。また、動画の再生支援もハードウェアでできるため、720pのHD動画でも再生画像はスムーズだ(1080pの動画はややもたつくこともあったが)。さらにいうと、ベンチマークテストの結果以上にWindows 7がキビキビと動いたのには驚いた。

 一般用途からすれば、動画再生支援機能のおかげで、動画を視聴しながらWebブラウズといったことも実用可能だ。ゲームでは、重い3D描画処理が求められるタイトルは無理だが、マルチアカウントプレイ時のチェックモニターとしては使える。グラフィックスの性能的にはWebブラウザゲームやオンラインゲームに十分対応できる。ただ、ゲームタイトルを使うベンチマークテストでは、タッチ操作非対応ということも多々あった。ゲームプレイでは、キーボードを接続するのが望ましいだろう。

 バッテリー駆動時間の検証は、BBenchでチェックした。Windows 7の電源プランは「バランス」で実行し、液晶ディスプレイの輝度は40%、無線LANとBluetoothを有効にして、BBench側はデフォルトの設定(10秒ごとにキー入力、60秒ごとにWebページアクセス)とした。結果は、バッテリー残量5%の強制サスペンドまで5時間5分だった。

 タブレットPCでは、ノートPC以上に「熱」が気になりやすい。それはもちろん、本体を手持ちをするからだが、WindPad 110Wではあまり気にしなくてもいい。ベンチマークテスト中に、温度が上昇したのは本体正面から見て左上、排気スロットがある周辺に限られた。温度上昇といっても40度程度で極端に熱いと感じるほどではない。長時間使用していると、背面全体がやんわりと熱を持つが、不快に感じるレベルではなかった。

高負荷時に熱くなるのは排気ファン周辺に限られる。直接触らなくても本体は持てるので、実用上はあまりに気にならない

ベンチマークテスト項目 WindPad 110W
PCMark7 PCMarks 1021
lightweight 753
productivity 550
PCMarkVantage PCMarks 1596
CrystalDiskMark3.0 1000M Seq 151
512K 131.8
4K 7.258
4K QD32 7.551
Seq 87.89
512K 6.815
4K 2.474
4K QD32 1.642
3DMark 11 Entry 291
3DMark Vantage Entry 2250
Performance 441
ストリートファイターIV ベンチマーク 1280×720ドット Score 6605
Averege FPS 19.69
FINAL FANTASY XI ベンチマーク 3 High 1676
Low 2436

運用を熟考してから導入すべし

 まだ数の少ないWindows 7搭載タブレット“PC”のWindPad 110Wは、ハードウェア面での仕上がりはいい感じだ。Z-01は予想以上にパワーがあり、オフィスワークなら問題なくこなせてしまう。家庭用途でも写真閲覧だけでなく、Webページのチェックや動画再生を楽しむ用途に使える。AMDの低電圧CPUはこれまでも数多く登場してきたが、バッテリー駆動時間が短いことが多かった。しかし、WindPad 110Wは5時間5分と実用的なバッテリー駆動が可能だ。

 ハードウェア面の仕上がりに対して、厳しいのがWindows 7のタッチユーザーインタフェースだ。スタイラスペンで操作する分には問題ないが、指先で操作するとストレスを感じる。ただ、そこを補うスマートトラッカーがあるので、文字入力以外なら、出先でのプレゼンテーション、Webページやドキュメントファイルを見る程度ならば、マウスと近い感覚で操作できる。

 評価作業では、屋内でUSBキーボードを接続し、屋外ではWindows 7標準のソフトウェアキーボードを使ったが、このソフトウェアキーボードによる文字入力でも軽くストレスをためていた。文字入力をするなら、屋外でも小型のBluetooth接続キーボードを用意しておきたい。

 WindPad 110Wをクレードルとセットで購入すれば超省スペースPCにもなるし、そのままカバンに入れて持ち歩ける。重さが約850グラム程度なので、吸盤式ディスプレイアームに取り付けて使うのも可能だ。iOSやAndroidが急速に普及しているが、Windowsじゃないと使えないアプリケーションはまだまだ多い。Office系アプリは、iOSやAndroidでも閲覧可能だが、細かい修正となると、Windowsが楽だ。「仕事でも家でもWindows用アプリケーションが必須」というユーザーに勧めやすいタブレット“PC”となるだろう。

関連キーワード

Wind Pad | MSI | WindPad | タブレットPC | AMD Fusion | APU | IPS方式


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー