エプソンのA3ノビ対応インクジェットプリンタといえば、コンピュータグラフィックスや写真のプロ/セミプロが利用する「プロセレクション」ラインを思い浮かべる人も少なくないだろう。このラインは8色や10色の多色インクを用いて、非常に高精細で広色域の画像を印刷できる。
一方、昨今ではA3カラーのビジネス文書(設計図や工程表、台割など)を印刷することが主目的のモデルも増えつつある。インクジェット方式ならば、A3カラー対応のページプリンタより、かなり低コストで導入できる点に注目したい。
「PX-1200」はビジネス用途に特化したモデルだ。給紙容量は上下の給紙カセット合わせて500枚を確保し、自動両面印刷や有線/無線LANにも標準対応している。インクカートリッジは黒インクに大容量カートリッジが用意されており、ビジネスシーンである程度の印刷ボリュームがあっても対応できる作りだ。
「PX-1004」は3万円を切る低価格がポイント。給紙枚数が100枚と少ないのは残念だが、CD/DVD/BDレーベル印刷まで可能なので活用の幅は広い。
キヤノンもエプソンと同様、デジタルフォト向けのA3ノビ対応インクジェットプリンタ「PIXUS Pro」シリーズをラインアップしているが、ビジネス向けのA3対応モデルも用意している。
「PIXUS iX6530」はA3クラスとしてはコンパクトなボディを採用し、本体サイズは549(幅)×299(奥行き)×159(高さ)ミリ、重量は約7.6キロに抑えた。PC用インタフェースはUSBのみ。給紙は後トレイのみで150枚セット可能だ。インクは顔料ブラックと染料4色の5色独立タイプを採用する。
A3ノビの写真印刷やフルHD動画プリントに対応するほか、専用Webサイトからテンプレート(POPやポスター、チラシ、ビジネス文書など)のダウンロードが行えるなど、主にSOHO環境でさまざまな用途に活用できるよう工夫している。
一般に顔料インクは乾く速度が染料インクに比べて遅い。そのため、印刷速度を上げていくと、インクが乾かないうちに次の文書が排出されてしまい。乾いていないインクが別の用紙に移ってしまう可能性がある。そこでインクの乾く時間を考慮して排紙速度を調整したり、インクがある程度乾くまで待ってから、次の印刷を開始するなどの対応を行っている。
しかし、2003年に投入されたリコーのジェルジェットプリンタは顔料インクベースのGELJETビスカスインクに染料インク並みの速乾性を持たせており、インクジェット系のプリンタながらビジネスユース向けの高速印刷をいち早く実現した。
その流れをくむA3単機能モデルの「IPSiO GX e7700」は、有線LAN対応やファーストプリントの高速化、消費電力の低減などを図ったモデル。S/M/Lサイズの3種類のインクインクカートリッジを用意し、Lサイズカートリッジでは約2300ページの印刷が可能だ。給紙容量はオプション利用時で最大600枚と十分。インク節約機能「新レベルカラー印刷機能」では、自動的に原稿を判別し、インクの消費量を抑えた印刷が行える。
今回紹介したA3ノビ対応インクジェットプリンタ | ||||
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メーカー名 | エプソン | エプソン | キヤノン | リコー |
製品名 | PX-1200 | PX-1004 | PIXUS iX6530 | IPSiO GX e7700 |
最大印刷解像度 | 5760×1440dpi | 5760×1440dpi | 9600×2400dpi | 3600×1200dpip相当 |
インクの種類と色数 | 顔料4色 | 顔料4色 | 顔料Bk、染料4色 | 顔料4色 |
プリント速度(モノクロ/カラー) | 約15ipm/約8.0ipm | 約15ipm/約5.5ipm | 約11.3ipm/約8.8ipm | ipm非公開(独自チャートで29ppm) |
自動両面印刷 | 標準対応 | − | − | オプション |
ネットワーク対応 | 標準対応(有線LAN/無線LAN) | オプション | − | 標準対応(有線LAN) |
給紙枚数(標準) | 500枚 | 100枚 | 150枚 | 250枚 |
最大給紙枚数 | 500枚 | 100枚 | 150枚 | 600枚 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 558×414×264ミリ | 616×322×214ミリ | 549×299×159ミリ | 540×485×259ミリ |
重量 | 約12.3キロ(消耗品含まず) | 約12キロ(消耗品含まず) | 約7.6キロ(消耗品含む) | 17.5キロ以下(消耗品含まず) |
消費電力 | 約20ワット、スリープモード時約4.4ワット | 約26ワット、スリープモード時約1.3ワット | 約20ワット、待機時約1.3ワット | 35ワット、省エネモード時約2.2ワット |
実売価格 | 3万円前後〜3万円台半ば | 2万円台半ば〜3万円前後 | 2万円台後半〜2万円前後 | 6万円前後〜7万円台前半 |
今回はインクジェット方式のビジネス向けプリンタ(単機能機)をチェックした。次回はインクジェット方式のビジネス向け複合機を取り上げる。
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