まずは出力を“TUBE”(真空管)に設定し、PC内音源を再生する。
いわゆる“真空管ならではのサウンド”をイメージしている人は驚くかもしれない。骨格のしっかりした、それでいてソリッドなフォーカス感の高い音を聴かせてくれた。真空管ならではの柔らかさや付帯音はあまり感じず、それながらも倍音成分のそろいが美しいので女性ヴォーカルに声が明瞭でよく通り、歌に込められた感情もよく伝わってくる。
なんというか情緒性の高いサウンドといえ、さらに声質が肉声的で親しみもある。女性ヴォーカルの楽曲をよく聴く人は、さらにそのアーティストに惚れてしまうかもと思える魅力的な音である。
続いて“トランジスタ”に切り替えてみる。音色の傾向はほぼ同じだが、S/N感がかなり向上し、よりメリハリのある音となった。よりピュアになった効果か、アコースティックギターのカッティングに一段とキレが増し、ピアノの響きも雑味が減った。こちらは、音楽ジャンルやヘッドフォンの種類、音の好みによって使い分けながら楽しむとよいだろう。
TRX-HD82は、一般的な真空管のイメージとは異なるフォーカス感の高さと、真空管ならではの響きの美しさをあわせ持つ、魅力的なサウンドが楽しめる。この音を聴けば、これまでの真空管に対するイメージが一新され、同時にオーディオ部品としての真空管のメリットも十分に感じられるだろう。
音質評価 | TRX-HD82 |
---|---|
解像度感 | (粗い−−−○−きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−−○−ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−−○−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−−○−質感重視) |
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