2012年のPC業界を占う本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/2 ページ)

» 2012年01月01日 00時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

Ivy BridgeはモバイルPCを変革する

 2012年のPC業界、私はコンシューマー市場におけるPC市場「再構築」の年になると予想している。しかし、“予想”という表現は正しくないかもしれない。2012年、PC業界の大きなイベントは、すでにスケジュールが大まかではあるが決まっているからだ。

22ナノメートルプロセスルールを採用するIvy Bridge。内蔵グラフィックス性能の強化に加えて、3D-Tri Gateの採用で処理能力と省電力性能の向上も期待される

 1つはIntelが現行の主力プロセッサを新しい製造プロセスに合わせて再設計したIvy Bridge(開発コード名)を4月に、そのモバイル版を5月に投入する見込みだ。Ivy Bridgeに関しては、すでに多くのリポートが掲載されているように、パフォーマンス面ではGPUの強化が主となる。

 ハイエンドデスクトップPCにおいては内蔵GPUの強化は、(ディスクリートグラフィックスを好むユーザーが大多数であるため)あまり意味がないと考えるかもしれない。

 しかし、22ナノメートルプロセスルールへの移行に伴う3Dトランジスタの採用などにより、消費電力面での優位性はあると考えられる。消費電力が下がれば、発熱履歴を考えたときにフルパワーで動ける時間も長くなると考えられるから、実際にはクロック周波数の上限が上がる期待とともに、実パフォーマンス面での優位性も少なくないだろう。

 Ivy Bridgeで最も大きな期待が寄せられているのは“モバイルPCの変革”だ。モバイル向けのIvy Bridgeでは、通常電圧版と低電圧版、超低電圧版といった区分が廃止され、使用目的ごとに熱設計電力(TDP)枠を区切って製品を提供するラインアップになる。

 従来の枠組みでいう通常電圧版の動作電圧や消費電力が下がり、超低電圧版との差が小さくなるため、低電圧版の存在意義がなくなってきていることが大きな理由としてあるが、もう1つ、プロセッサそのもののアーキテクチャの変化も理由になっていると思う。

 現在のPC向けプロセッサには、CPU回路だけでなくGPU回路や各種のインタフェースなど複数の要素が組み込まれており、それぞれの動作速度などの組み合わせによって消費電力は変化するし、動作電圧に関してもしかりだ。

 “電力枠の中で、いかに最適化された動作を行うか”をテーマとするならば、動作電圧でグループ分けする意味はないとも言える。そんなモバイルプロセッサのパフォーマンスを推し量る枠組みに対する(少しばかりの)変化はあるが、実質的な変化はこの段階ではあまりない。

2012年はUltrabookの実質的なスタートか

TDPが17ワットの第2世代Coreプロセッサ(開発コード名:Sandy Bridge)を搭載したUltrabookは2011年に登場(写真は東芝のdynabook R631)。同じTDPのIvy BridgeでUltrabookはさらに進化していく

 モバイル向けIvy Bridgeの中でも注目したいのが、Ultrabook向けの17ワットTDP版だ。これは従来の超低電圧版に相当する枠組みで、5月に登場するとみられる。このプロセッサ向けに各社は第2世代Ultrabookを開発しており、Appleもこのタイミングで「MacBook Pro」や「MacBook Air」の新モデルを発売することになる。ここが1つの“山”になることは間違いない。

 第2世代Ultrabookは、第1世代に比べて大きくプラットフォーム全体のコンセプトが進むことはないと思われるが、アイドル時の消費電力低減とピークパフォーマンス向上の両面によって、より薄く軽量、あるいはより長いバッテリー駆動時間のいずれかを手にすることができる(どちらに向かうかはメーカー次第だ)。

 高速起動に高速レジューム、薄型ボディといった特徴だけが目的ならば、第2世代のUltrabookを待つ必要はないが、モバイルコンピュータとしての完成度を考えると、Ivy Bridgeベースの製品に切り替わる意味は大きいと予想される。これはMacBook Airでも同じだ。

 なお、MacBook Airに関しては15インチ版開発のリーク情報が出回っているが、これは“Air”ではなく“Pro”であり、次期MacBook Proからは光学ドライブがなくなるのでは? との予想もあるが、その真偽は定かではない。

 いずれにしろ、2011年末に登場した第1世代の場合、UltrabookというコンセプトはPCベンダーに対して周知徹底はされていなかったが、Ultrabookをテーマに商品コンセプトを練ってくる第2世代では、各PCベンダーがさまざまなアイディアを凝らしてくるだろう。そうした意味では、Ultrabookの実質上のスタートは2012年5月ごろとも言える。

 例えば、ソニーの「VAIO Z」。製品としてのコンセプトはすべてUltrabookに合致し、さらにプラスαの要素を盛り込んでいたが、通常電圧版プロセッサを使ったがゆえにUltrabookという名称を掲げることはできなかった。また、日本メーカー初のUltrabookとされた「dynabook R631」も「もともと開発していた薄型・軽量モバイルPCのコンセプトがUltrabookのコンセプトにピッタリ当てはまっていた」と、試作機が登場した直後はメーカー自身が話していた。

 Ultrabookという枠組みの中で業界全体がコンポーネントの開発を始めると、さらに前へと進んでいく。ということで、Ultrabookの新展開に大いに期待したい。

タッチ以外も気になるWindows 8

Windows 8が採用した「Metro」スタイルの新しいスタートスクリーンはタッチ操作に最適化したもの。従来型PCでの使い勝手はどうなるのだろうか?

 そして“もう1つの山”は、年末に見込まれるWindows 8搭載PCの登場である(もちろん、その前には1〜2月にあるプライベートβ版のリリースと、2月末に提供予定のパブリックβ版というトピックもある)。

 Windows 8の一般的な話題としてはユーザーインタフェースの変更、Windows Liveとの統合・一体化などだ。前者に関してはタッチパネル操作を重視した開発者向けプレビュー版のイメージが強いものの、従来からのクラムシェル型ノートPCでの使い勝手に関してはむしろ後退しているのでは? との意見もある。

 マイクロソフトの上席副社長でWindows開発部門のトップであるスティーブン・シノフスキー氏は「キーボード操作+タッチパネルである。キーボード操作はPCの美点の1つであり、キーボード操作にも配慮している」と話しているが、こればかりは2月になって最終β版に近いところまで進んでみないと、実際のところは見えてこないと思う。

 ユーザーインタフェースに関しては、明らかになっている範囲だとタッチパネルにばかりご執心で、従来型PCの操作性に関して進歩があるのかどうか、周辺機器のデバイス進化などとの整合性も含め、あまり情報はない。少なくとも2011年9月に開催された開発者向け会議の「BUILD」では、タッチパネルまわり以外の話題は出てこなかった。

 Windows Liveとの統合に関しては、Windows 8の開発者向けプレビュー版では、全画面ユーザーインタフェースを活用したタッチパネル向けのWindows Live対応アプリケーションが披露され、SkyDriveとの機能統合なども進められていた。しかし、Windows Live自身が大きな機能変更を予定しているため、実際にどのような実装になるかは、こちらも流動的だ。Windows Live側の予定によって、パブリックβ版の配布後も大きく変わる可能性がある。

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