「Exploring Windows 8」では、基本機能からよりディープダイブな仕様、さらには、エンタープライズ向け機能までといった、Windows 8に導入する一通りの機能についてレビューを行った。ただ、Windows 8 Consumer Previewや、最新のWindows 8 Release Previewなどをチェックしているユーザーや、この連載で紹介してきた情報をしているユーザーには、ここで紹介した機能に目新しいものはすでにない。Windows 8の開発において、機能改良や追加のフェイズはすでに終わり、製品の正式リリースに向けてラストランの状態に入ったことがうかがえる。
実際のところ、機能的なブラッシュアップはWindows 8 Consumer Preview(W8CP)で、すでに完成しており、未実装だった最後の機能もRC版に相当するWindows 8 Release Preview(W8RP)で実現している。W8RPのタイミングでは、長らく秘密のベールに包まれていたARM版Windowsこと「Windows RT」のプレビュー版も正式にリリースしている。
Exploring Windows 8では、先日発表したばかりの「Surface」は登場しなかったが、Windows 8ソフトウェアそのものの最終形を確認できた。イベントのハイライトを紹介しつつ、Windows 8の基本部分を、もう一度“おさらい”していく。
MicrosoftのWindows Web Services担当コーポレートバイスプレジデントのアントニー・レブランド氏は、Windows 8の基本的な思想について説明した。Microsoftは、Windows 8について、たびたび「No Compromise」「Without Comromise」(妥協のない)というキーワードを使って説明しているが、端的にいえば「全部入り」が基本思想といえる。
Apple CEOのトム・クック氏は、iPadを「妥協の結果」と評しているが、その根底には「シンプル化と利用体験の最適化のために、わざとPC(Mac)とは別のプラットフォームを導入した」という考えがある。一方でMicrosoftは、Windows 8の世代でタブレットのフォームファクタをプッシュするにあたり、「既存のPCでできる機能はすべて実現しつつ、タブレットならではの体験も可能にする」という「二兎を追う」戦略を選択している。既存資産を多数持つ同社の選択といえるが、これがWindows 8の最大の特徴だともいえる。
具体的にはタッチ操作中心のタブレット体験を実現しつつも、いざ、キーボードやマウスを接続すれば、そのまま既存のアプリケーション体験がそのまま利用できる。また、OSそのものは、タブレットデバイスだけでなく、既存のデスクトップPCやノートPCでもそのまま利用できる。
一方で「Metroスタイルアプリ」と呼ばれる新しい概念を導入し、ここでは、アプリのライフサイクルを高度に管理している。例えば、アプリには「終了」の概念が基本的にはなく、サスペンドされた状態でそのままメモリに常駐し続ける。ユーザーがアプリを切り替えるときに見ることができるタスクの一覧表示は、単に「過去に開いたことのあるアプリの履歴」に過ぎない。これは従来のWindowsにはない概念で、どちらかといえばスマートフォンなどで採用されている仕組みに近い。主にプロセッサや通信に使うパフォーマンスを抑制して、バッテリー駆動時間を延ばす意味が強い。既存のWindowsアプリケーション実行が可能なプラットフォームに、こうした新しい概念が導入されているのがWindows 8だ。またこれを端的に実現したのがARM版Windowsの「Windows RT」で、既存のx86対応アプリケーション資産は使えないものの、タブレットデバイスでの新概念を体験できる。
フォームファクタでの変化が注目されがちなWindows 8だが、内部も大きく変化している。特に、OSレベルでのSNS連携や複数アカウント管理など、これまで“素”に近い状態で提供されてきたWindows OSに、標準で多くの付加機能を包含するようになっている。その中の1つが、「Contracts」(コントラクト)と「Extentions」(エクステンション)で、これはOSを介して複数のMetroスタイルアプリが連携する仕組みとなっている。例えば、Newsアプリで表示したコンテンツをメールで送信した場合、2つのアプリ間でデータ移動が発生する。これをCharmメニューの「Share」(共有)や「Devices」(デバイス)を介して仲介するのがWindows 8の役割だ。
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