「CEATEC JAPAN 2012」の東芝 セミコンダクター&ストレージ社ブースで、今後PCへの採用例が増えると見込まれる「ハイブリッドドライブ」および日本未発売の同社ブランドNASを含む外付けストレージ製品「CANVIO」シリーズの展示が行われていた。
CANVIOシリーズは、東芝製HDDを内蔵した同社の外付けストレージ機器ブランド。3.5インチドライブを内蔵し、テレビ録画用にも訴求するUSB接続型「CANVIO DESK」、薄型仕様のポータブルタイプ「CANVIO SLIM」などをラインアップし、PCでの汎用的な使い方以外に同社AV機器“レグザ”シリーズとの高い適合性を強みに展開する。
特にモバイルPC/Ultrabook用に適するCANVIO SLIMシリーズは、7ミリ厚/1プラッタタイプ、さらにUSB 3.0直接出し(Serial ATA→USB 3.0変換基板を別途必要としない仕様)の薄型・短奥行き2.5インチHDDを採用し、厚さ約9ミリ/重量約115グラムとUSB 3.0対応ポータブルHDDで世界最小・最軽量(2012年9月24日現在、同社調べ)をうたう。ヘアライン加工を施したアルミケースもデザイン性に優れ、軽さ/薄さとともにミニマルな実直さが心地よく感じられる仕上げとなっている。
このほか、国内では未発売の自社ブランドNAS(ネットワーク接続対応ストレージ)「CANVIO PERSONAL CLOUD」の近日投入も計画する。USB接続タイプよりやや厚めのボディに3.5インチHDD(2Tバイト/3Tバイトドライブ)を1基内蔵し、ファンレスで動作。有線LANポート経由でLAN接続し、家庭内でのデータ共有はもちろん、PERSONAL CLOUDという名称のとおり、外出先でも本機の保存ファイルにアクセス/保存できる機能を持つ。海外では発売済みのため、NASアクセスのためのiOS/Androidアプリもすでに無償公開されている。発売時期は近日想定といえどひとまず未定だが、海外市場価格は2Tバイトモデルで220USドル前後とのこと。1万5000〜7000円あたりで購入できるなら日本ユーザーも喜ばしいのではと思われる。
東芝製ストレージにおける個人向け機器関連で今後推進が期待されるのが「ハイブリッドドライブ」だ。PC用ストレージには、容量単価にメリットがあるHDDか、速度と重量にメリットがあるSSDのどちらかを実装するのが一般的であるが、最近はHDDと小容量のキャッシュ用SSDを両方実装し、容量と速度を両立する「ISRT」といった手段も登場している。
ハイブリッドドライブも、ISRTのようなメリットを両立する手段として選択できるストレージだ。キャッシュ用SSDの完成品を別途実装するのではなく、SSDの中身であるNAND型フラッシュメモリ(8Gバイト)を直接HDDに内蔵したワンインタフェース仕様となる。このため、単一のストレージとして認識され、特別なドライバソフトウェアも不要、システムの実装スペース削減にも貢献できる点を強みとする。
説明員によると、Ultrabookと呼べる(ロゴ取得)要件を満たす性能の1つに「PCMarkVantageのOverall Scoreが1万6000以上」でなければならない─とのこと。これまでの5400rpm型同社製HDDでは同スコアは5000弱にとどまるが、ハイブリッドドライブを用いれば1万6000を超えるスコアを普通に記録できるようになる。
なお、高速化はNANDによく使うデータをキャッシュとして利用することで機能するが、同社のハイブリッドドライブは利用者のアクセスパターンを動的に学習する「自己学習型キャッシングアルゴリズム」により、よりかしこく、より効果的にキャッシュ効果が得られるよう工夫。ここも長年フラッシュメモリやSSD開発で培った技術の強みという。
SSDのメリットは分かるが、まだ容量単価が高価。そうと言ってHDDは低速──。ラインアップが増え、コストパフォーマンスのよさ(ひいては絶対価格の低さ)が購買ポイントの1つになるUltrabookやスタンダードノートPCなど、ハイスペック、モバイル性、軽量性を徹底するほどは望まない層向けのモデルに今後採用例が増えそうなストレージといえそうだ。
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