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» 2012年10月16日 17時00分 公開

iPhone 5からDockコネクタがなくなってボクたちは泣いた牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

[牧ノブユキ,ITmedia]
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余剰部材をまとめて処分する「新製品」

 部材メーカーは、最終的に残った部材をどう処分するかで頭を悩ませる。こうした場合、稀に、余っている部材を組み合わせることで1つの完成品ができてしまうケースがある。これをそのままサードパーティに売りつけてしまえば、部材のデッドストックは一気に解消できる。「御社で組み立てなくても完成品の状態でOEMできます。最小ロット1000個でどうすか」といった具合にサードパーティに売り込めば相手にも喜んでもらえる。通常であれば。

 しかし、製品に使っている規格がすでに終息間近ということが予測できるような状況では、どのサードパーティも売れ残り必至の製品を買い付けるようなことはしたくない。今回の例でいえば、Dockケーブルであれ、Dockコネクタ接続のスピーカーであれ、Dock接続の充電台であれ、とにかく、Dockコネクタという終息間近の規格を使った製品を仕入れる愚は犯したくない。

 こうなると、部材メーカーは、在庫ごと破棄して大赤字になるよりマシと考える。引き取り価格は相手の要求どおりで、売れ残ったら返品あり、とにかく店頭に並べてもらうことをサードパーティにお願いする。販路を広げれば広げるほど在庫を減らせる可能性も高いので、場合によっては付き合いの浅いサードパーティにもOEMでの取引を持ちかける。

 こうして、新規格を採用する本体新製品の投入直前に、サードパーティ各社が旧規格を搭載する新製品を発表することになる。売れなければ部材メーカーが引き取ってくれるか、店頭での特価処分で発生する利益損失を補填をしてくれるので、サードパーティのリスクは限りなく低い。明らかにOEMと分かってしまうボディであっても、まったく構わないわけだ。

純正品のモデルチェンジで部材が価値を失う恐怖

 iPhone 5のコネクタ変更において、Dock関連製品がこの事例に直接あてはまるかは明らかでない。以前から予定していた新製品の製造が遅れただけの可能性もあるし、Dockコネクタを備えた本体の累積出荷量も踏まえて、当分は併売できると決断したのかもしれない。しかしながら、保護ケースやフィルム類と違って、複数の部材で構成する製品は、サードパーティの意向だけでなく、部材メーカーの都合も考慮した上で新製品を投入するケースがあることを知れば、「なぜこの時期にこの製品?」という事情も理解できるはずだ。

 最終的に、こうした「旧規格を採用した新製品」の売れ残りは、部材メーカーへ返品するのではなく、店頭で特価処分となることが多い。部材メーカーが、サードパーティの帳簿上における在庫に対して値引きを入れ、サードパーティが店頭の在庫に対して値引きを入れ、それでようやく量販店が処分価格をつける。しかし、その実態は、量販店が勝手につけた処分価格に合わせてサードパーティが値引き伝票を切り、その補填を部材メーカーに要求することが多いわけ。どちらにしても、部材メーカーがお金を出すことに変わらない。

 純正品と同等以上の品を安く売ることで利益を得ている部材メーカーにとって、Dockコネクタは長期にわたって安定した需要が見込める部材だった。しかし、本体メーカーの規格変更によって一瞬にして価値を失うことになる。今回のモデルチェンジは、リスクヘッジをしようにもできない、非純正品を扱うメーカーならではの“宿命”なのだ。

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