“21:9”の超横長をどう使う?――3万円台で2560×1080表示の29型ディスプレイ「U2913WM」検証高コスパなIPSシネスコ液晶(3/3 ページ)

» 2012年11月30日 11時30分 公開
[池田憲弘(撮影:矢野渉),ITmedia]
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U2913WMの発色を測定

photo U2913WMのガンマカーブ。青が上方向に、緑と赤が下方向に補正がかかっている

 発色については、エックスライトのカラーマネジメントツール「i1Pro」を使って計測した(画質モードは標準)。輝度を120カンデラ/平方メートル、色温度は6500Kを目標に、U2913WMをソフトウェアキャリブレーションし、ガンマカーブを調べた。結果を見ると、青が上方向に、緑と赤が下方向に補正がかかっており、明るくなるにつれて補正の割合が大きくなっている。よって、初期状態では中間階調域から明部にかけて、グレーバランスが崩れる傾向にある。

 色域はどうか。U2913WMのICCプロファイル(輝度は120カンデラ/平方メートルに固定した状態)をi1Proで作成し、Mac OS XのColorSyncユーティリティで表示した。色が付いた部分がU2913WMで再現できる色の範囲、グレーで重ねて表示しているのが比較対象で再現できる色の範囲となる。sRGBの色域をグレーで重ねて比較したところ、sRGBのほぼ全域をカバーしているものの、若干のズレが見られる。紫から青にかけての寒色についてはsRGBが広い一方で、赤や黄色などの暖色から緑にかけての領域はsRGBよりもU2913WMが広かった。

photophotophoto i1Proで作成したU2913WMのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。色が付いている範囲がU2913WMで再現できる色の範囲で、グレーの範囲がsRGBで再現できる色の範囲を示す。U2913WMの色域はsRGBをほぼカバーしているが、暖色が広く、寒色が若干狭い

 輝度のカタログ値は300カンデラ/平方メートルとなっているが、色温度を6500Kに合わせ、輝度を最大に設定して計測した結果、280カンデラ/平方メートルだった。カタログ値よりは低いものの、多数の蛍光灯を備える、オフィスの執務室内といった明るい場所でも、抑えめの輝度設定で快適に利用できるので、実用では問題ない。もちろん映像を見る場合も、明るい画面で視聴できる。

photophoto U2913WMのカラー/モノクログラデーション表示。色域はsRGBカバー率で99%と、Adobe RGBクラスの広色域ではないが、発色はよい。若干暗部での黒つぶれが見られる

意外と使える高コスパな「シネスコディスプレイ」

 U2913WMは、デルの直販サイトで販売を受け付けており、価格は3万9980円だ。21:9というアスペクト比は一見キワモノ……というかユーザーを限定しそうな仕様ではあるが、映画視聴はもちろん、一般的な用途でも意外と“使える”というのが正直な印象だ。

 作業効率を確保しつつ、デュアルディスプレイよりは省スペースに収まり、Windows 8用のディスプレイにも向く。シネスコという特殊なサイズを抜きにして考えれば、U2913WMはフルHDディスプレイのワンランク上といえる快適な表示環境を実現する製品だ。作業環境をフルHDより広くしたい、でもデュアルディスプレイはオーバースペックと考える人には、ちょうどいい選択肢ではないだろうか。

 また、省電力タイプの大画面IPSパネル、豊富な入力系統、sRGB色域のサポートなど、充実したスペックながら4万円を切る価格を実現しており、コストパフォーマンスは高いレベルにある。多目的に使える高解像度のワイド液晶ディスプレイとして、幅広いユーザーの購入候補に加えられる実力を備えた1台だ。

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